第3話 変わりたい。【彼】

結局、カフェから出たあと、彼女とは別れた。でも、「待ち合わせ」ってのはよかった。白紙の時間の中、区切りのようなものができる。いつもはなんとなくどちらかの家でただ、時間を潰すだけだし。始まったばかりの夏は夕方になっても元気で、少し歩いただけで、服と肌の距離を0にした。


太陽は自分を燃やして輝くらしい。


何のためにそれをするのだろうか。何も意味ないじゃないか。遠く離れたこの星の夏が作りたいわけでもないだろうに。


母は幼い頃に死んだ。父は俺が高校の頃に、新しい家庭の元へ行った。その頃から始まった月20万の仕送りは20歳を超えた今もずっと続いている。働いてはいない。だって、暮らせる。これ以上稼いだところでパチンコの時間が増えるだけだ。交差点は夏休みに入ったであろう子供達の間に、暑さに体力を奪われた大人が湯気のようにまばらに立っていた。


この人たちは何のために生きているのだろうか。何を原動力に時間という「生」を燃やせるのだろうか。子供の頃は俺も違っただろうか。何も思い出せないけれど。「暑いっ!!」そう言って隣の子供が喚いた。眩しいな、と思った。暑い!とか、美味しい!とか、眠い!とか、もっと思えたら何か変わるのだろうか。いや、変わりたいだろうか。首筋を通った汗の不快感も、瞬き一つで消える俺の中に、いったい何があるのだろうか。

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