短編

田中南瓜

花束を君に

「ありがとう。」


君はまた困ったように笑いながら僕からの花束を受け取る。

この行為が君を苦しめていることを僕が知ったのは最近だったけど、君のその困ったように眉を下げる笑顔が好きで、どうしてもやめられない。


「どういたしまして。」


いつも通り、僕は微笑む。

ごめん、と今すぐにでも謝ってやめるべきなのか、このまま気づかないフリで続けるべきなのか、そんなことは僕にはわからないが、君がそんな風に笑ううちはやめられそうにないよ。


「…じゃあ、行くね。」

「うん。さようなら。」


君はにこりとしてから僕に背を向けた。


「…お前が花言葉に詳しいだなんて知らなかった」


僕は小さくなった背中にそう吐き捨てては、手の中にあった金盞花の花弁を握りしめた。

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短編 田中南瓜 @Tanaka_o_no

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