第185話 ランド・アート (land art)の世界観

ランド・アート (land art)は、自然界の素材(岩、土、木、鉄など)を使い、自然界に作品を構築する、ただ、その範囲は膨大だ。

特には、砂漠や平原などに作品を構築する美術のジャンルが多いかも知れない。アース・アート (earth art)、アース・ワーク (earthworks)、また、広義で、環境アート(Environmental art)等とも呼ばれる事があるが、それの閾はないと言われる、蝶と蛾、また、岩と石のようなものかも知れない。解釈にもよるが、無限の時空に対しての存在論という視点では、古代遺跡である、ナスカの地上絵、エジプトにおけるピラミッドも、ある意味、そう言えるだろう。


現代のランド・アートは1960年代に、アメリカの彫刻家たちの潮流によって、美術ジャンルとしてショートスパンで確立された。1968年、ドゥワン・ギャラリー (Dwan Gallery-NY) で開かれたグループ展 "Earthworks”、また、コーネル大学の「アース・アート」展(1969)が、その流れをより加速させた重要なイベントだった。それは、アメリカの商業主義的な美術の動向に対抗するかたちで、アーティストたちが屋外、そして、広大な砂漠をキャンバスに大規模な作品を構築した。そして、その当初の作家たちは、反社会体制の視点を持ち、また、ミニマリズム(Minimalism/最小限の表現)を継承したアーティストたちだった。

この辺りをもう少し考察すると、その辺りを述べると、ランド・アートの発表では、自然界での作品を、写真によるドキュメンテーション(記録)が行われている。そこでは、作品そのものとその記録という複数の表象体系が示されると言う事だ。実際の作品がミュージアムの外側にあり、その記録は、ミュージアムに展示される、いわゆる倒錯的な鑑賞形態は、芸術をめぐる制度(定めた仕組み)と枠組みの問題も表面化したと言う事だ。



主な作家と概要

初期の作家と言うよりは、現在形のランド・アートの嚆矢(こうし/物事のはじめ)は、*イサム・ノグチの彫刻と造園かも知れない。

(註)*イサム・ノグチ:Isamu Noguchi,1904-1988/日系アメリカ人/ 彫刻家・画家・造園・作庭・舞台芸術等との枠は広い。


リチャード・ロング(Richard Long、1945- UK)は、英国を主体として、1960年代から、ミュージアムといった場所以外に、自然界で自然を対象にした作品制作ている。1967年、「歩行による線」(Walking line)-ヴェネツィア・ビエンナーレ出展(英国)が、まずは著名だ。

そして、同時期、アメリカ合衆国での作家たちが挙げられる。

ロバート・スミッソン (Robert Smithson,1938-1973/US)のそれも規模が大きく著名だ。そのロバート・スミッソンは、1970年、アメリカ・ユタ州の湖沼に岩石や土で「Spiral Jetty」螺旋系の突提を造った事で知られる。

また、その時期の作家には、マイケル・ハイザー(Michael Heizer,1944- US)も大規模な重機まで使った70年代の作品もあるが、近年の作品(2012)として「Levitated Mass」(浮遊する塊/LACMA | Los Angeles County Museum of Art)も著名だ。

ランド・アートは、広義には、実に解釈の広いアートの世界だ。関連作家には、アリス・エイコック(Aycock Alice,1946- /US)、デニス・オッペンハイム(Dennis Oppenheim,1938-2011/US)、ナンシー・ホルト(Nancy Holt,1938-2014/US)、マリア・ワシレスカ(Maria Wasilewska,ポーランド)等も存在するだろう。



ランド・アートの本来像は、大地に構築されるのだろうが、作品を屋内スペースにに設置することもある。それは、インスタレーションとの違いは、その作家がランド・アートとして認められているかどうかだろう。ただ、クリストは、その作品をランド・アートから否定している、そのあたりもランド・アートの解釈の閾は、作家の主張も大きい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る