第184話 現代アートとその周辺文化を考える

 現代アートが成立するバックグラウンドとその周辺は、不可解だが、分かりやすい世界かも知れない。

それは、現代アートの価値を論じる為には、*現代の「メディチ家」(Casa de' Medici:ルネッサンス期にイタリア・ファレンツェに於いて、その財力で芸術家を支援した)という存在のバックグラウンドで成立するという事だ。

そのバックグランドは、狭義の*アートワールド(現代アートの価値と価格)は、なんで決まるのだろうか?

影響力のある現代アートの祭典は、ヴェネツィア・ビエンナーレ(イタリア)、ドクメンタ(ドイツ、カッセル)、アート・バーゼル(スイス)等が、大きな評価をもたらすイベントだろう。そこには、そのバックグラウンドが存在する。それは、良き意味でもそうだろう。

それがないと、巨大なアート・プトジェクトなどは、存在もできないのだ。


そして、その評価に関わるのは、*Power100(ArtReview-London 1948-)、それは、現代アートに影響力のもつ人々のランキングだ。名門の現代ミュージアム(MoMA/TATE/ポンピドゥセンター等)のスタッフは、当然のように入るのだ。その賞を取る、そして、収蔵される、それは、作家にも、ミュージアムにも、閲覧者にも、そのアート作品が、お墨付きとなるのだろう・・


そして、現代アートの要素は、以下だと言われる。

1)インパクト

2)概念

3)多重レイヤー(見る者への感情・知性への再認識)

それは、確かに、現代アートの不可避なキーワードだろう。


そして、そこにあるものは、20世紀型のアートの周辺の理論の終焉なのかも知れない。

アートの価値の多様性は、理解できるが、ただ、現代のメディチ家(パトロンの財力)等による現代アートの価値と価格(狭義のアートワールド)以外に、大きな表象の要因を忘れてはいないだろうか。

「それは、表象されたものの感性の同一性」(時間軸や地域性を超えて)という、芸術における基本的な事項だ。


ただ、アート・イベントの採点(評価)は、否定はできない。それは、現在の、例えば、ヴェネツィア・ビエンナーレでも、リベラルな政治的な概念が入りこむことが、当然の如くであり、その状況でも、アートワールド(バックグラウンド=パトロン)は機能しているのだ。


「ある天才がアフリカのどまんなかに住んでいるとして、どんなに毎日、すごい絵を描いていようとも、誰もその絵を見ないとすれば、そんな天才はいないことになるでしょう。芸術は2つの極によって生み出されるのです。作品をつくる者という極があり、それを見るものという極があります。芸術家が重要と思われますが、実は作品を作る者と同じだけの重要性を作品を見るものにも与えるのです。」-マルセル・デュシャン


確かに、そうだろう、それは、他の表象についてもそうだろう。例えば、以前に、このnoteコラムに連載した、ロンドンのトラファルガー広場の第四の台座(Fourth plinth, Trafalgar Square)の作家たちについても、現代アートへの認識を考えたいところだ。その作家達の評価は多様だろう。それは、多様という言葉の上で、曖昧化してまとめる訳ではない、見るもの側の極として、個人の多重レイヤー(見る者への感情・知性への再認識)にどう訴えかけて来るかは、十人十色という事を申し上げたい。現代アートとは、そう言うものだろう・・・

それぞれの個の解釈に議論の余地はない・・・



参考文献:「現代アートとは何か」河出書房新社、「メディアアート原論」フィルムアート社 他


(註)*アートレヴュー誌(ArtReview-London 1948-)からの「Power100」:それは、現代アートに影響力のもつ人々のランキングだ。

その中には、現代のメディチ家たち(よく言えば、財力での支援)や、名門の現代ミュージアム(MoMA/TATE/ポンピドゥセンター等)のスタッフは、当然のように入るのだ。その賞を取る、そして、収蔵される、それは、作家にも、ミュージアムにも、閲覧者にも、そのアート作品が、お墨付きとなるのだろう・・

*メディチ家(Casa de' Medici):ルネッサンス期にイタリア・ファレンツェに於いて、その財力で芸術家を支援した。

*アートワールド(Art World):世界標準の美術業界、アートワールドとは、美術家、画商、コレクター、批評家、ジャーナリスト、キュレーターなど、様々な職業の人たちのゆるいネットワークで動いており、独特な価値観を共有している。

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