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照準を定め、煙が晴れたところを見計らい――蒼斗は銃の引き金を引いた。
副島の銃を狙った銃弾は――奇妙なことに彼の腕ごと吹き飛ばした。
衝撃で後ろにひっくり返った蒼斗は、身を起こし仰天した。そして銃口から煙を上げる銃を凝視して目を見張った――この銃、改造されている!!
「て、めぇ……やりやがったなあああああ!!」
「副島君!」
獣のような悲鳴を上げた副島。
いくら死にたくなかったからとはいえ、身内の部下の腕を落としてしまうなんて、と蒼斗は血の気が引いた。
すぐに止血をしなければ。駆け寄ろうと一歩踏み出したところで――足は強くその場にとどまった。
「――っ!?」
開いた口が塞がらなかった。
白目を剥き、口から涎を垂らして呻き声をあげる彼の失われたはずの腕からは人ならぬ赤黒い塊が出現していた。
厳密には生えてきたというのが正しいだろうか。
「殺してやる……っ、殺してやる、殺してや……ル!」
夢でも見ているのだろうか?
それとも精神的な疲労で目が疲れてしまって幻覚を見ているのだろうか。
目をいくら擦っても景色は何一つ変わらず、禍々しいそれは人間の手ではなく巨大な鎌状と姿を変えた。
腕の落ち方からして不自然さもあったが、普通ではありえないものが腕から生えてきたことへの驚愕と困惑が蒼斗の思考を支配した。
「なんだよ、これ……これじゃあ、まるで……」
――バケモノみたいじゃないか。
目にもとまらぬ速さで腕が振りかぶり、銃身が真二つに斬り落とされた。
蒼斗は頭の中が真っ白になった。副島が近づく度にゆっくりと後ろに下がり、瓦礫に踵が引っ掛かって倒れこんだ。
影が差し、瞳孔が開き、殺意を含んだ瞳が冷たく見下ろしていた。
もう、逃げられない――このままあのおぞましい物体に切り刻まれて、殺されてしまう。
死んで、しまうんだ。
瞬時に思い描かれる己の末路。ガタガタと身体が震え、大粒の涙が泣きたくもないのに溢れ出る。
「ようやく見つけたぞ」
夢なら早く覚めて欲しい。こんな悪夢はたくさんだ!
少しでも現実から逃れようと目を伏せたところで、何処からともなく首に感じた違和感と鼓膜に届く声。
「!?」
振り向きざまにチャリ、と金属が擦れる音。
間髪入れず蒼斗の身体は後ろに強い力で引き寄せられ、副島から数メートル離れたところで地面に投げ出された。
――何事だ?
咳き込み首に触れれば、冷たい鉄の感触。
それは茜色に光を発しており、確かめるように触れればいとも簡単にガラス細工のように砕け散った。
ハッと振り返り、先ほどの爆発で燃え盛る建物を背景に立つ人影に瞠目した。
髪やコート、ブーツ……上から下まで真っ黒に身を包んだその人は、冷たい瞳で蒼斗を見据える。黒の革手袋がはめられた左手に持つ煙管が妙に不釣合いだった。
「長いこと探していたが……まさか記憶をなくしていたとは思わなんだ」
「だ、れ……?」
男はその場で一服すると、不敵に笑って言った。
「
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