ひとりぼっちおおかみ
ミカ
ひとりぼっちおおかみ
『おおかみが来たぞ!』
やる山奥に心の優しいおおかみがいました。
(何だろう?僕に用事でもあるのかな?もしかしてパーティーのお誘いとか!?)
しかし、そんな楽しい気持ちはすぐに消し去られました。
『大変だ!おおかみが来たらみんな殺されちゃう!食べられちゃうんだ!』
そうすると女の人の悲鳴が聞こえてきます。
(なんで…僕はそんなことしないよ…)
悲鳴の合唱は段々大きくなって彼の心を刺していきます。
(嫌だ、なんでみんな僕のことを嫌うの…)
🍎🍎🍎
ある街に少し町で噂になっている羊飼いがいました。
しかしその少年の噂は決して良い物ではありませんでした。彼は『嘘つき』で有名でした。
毎日毎日大きな声で『おおかみが来た!』と言い回りました。
その度町は大混乱。
悲鳴の大合唱です。それは山奥のおおかみの元まで届き毎回おおかみは部屋の隅で縮こまり耳を塞いで大粒の涙を流しました。
(なんで僕はなんにも悪いことをしていないのにみんなに嫌われているんだろう。ぼくだってみんなと仲良くなりたいんだ…)
しかし、その悲鳴の合唱が何故かある日突然聞こえなくなりました。
おおかみにはそれが一瞬希望の光に見えました。
(遂にみんな僕のことを分かってくれたんだ!きっとこれからは仲良く出来るはずだ!!)
けど、それはおおかみの勘違いでした。
悲鳴の合唱が聞こえなくなったのは、嘘つきの少年が街の人に相手にされなくなっただけなのでした。
おおかみは心に希望を乗せ走りました。
しかし町に着き1人の女性にあった瞬間女性はヒステリックに叫びました。
「大変よ!!今回は本当におおかみが!嫌!死にたくない!誰か助けて!!」
その声は一瞬で街中に広がりました。
町は大混乱。
今まで聞いたことのない程大きな悲鳴の合唱が聞こえてきます。
(なんで、僕は何もしていないじゃないか…)
1人の少女が逃げようと走り出すと転んでしまいました。
(大丈夫?)
おおかみは手を差し伸べます。
「やだ!近づかないで!食べないで!」
(僕は君のことなんて食べないよ。僕はお肉より野菜とか果物の方が好きなんだ。)
バアアンと発砲の音
(えっ…)
「おおかみなんて殺してしまえ!」
おおかみにはもう逃げることしか出来ませんでした。
こうしておおかみは住処を追い出され、心には大きな傷が出来てしまいました。
🍎🍎🍎🍎🍎🍎🍎
新しい住処を探す途中、何やら可愛らしい声が聞こえてきます。声のする方へと進んでいくと7匹の羊の兄弟が目に移りました。
(なんてかわいいんだろう…!)
一瞬おおかみの心がキラリと光りました。
そしておおかみはその近くに住むことを決め、いつも羊の兄弟を見守っていました。
「いいですか、おおかみには気をつけてくださいね。見つかったら大きなお口で食べられてしまいます。」
羊のお母さんはよくそう言って伝えていました。
だから、おおかみは静かに遠くから子ヤギを見守っていたのです。
しかしある日のこと。
「見て!あそこに誰かいるよ!!」
誰だろう、誰だろう。子ヤギ達はおおかみに近づいてきます。
「ねぇ、一緒に遊ぼ!」
1匹の子ヤギはおおかみを見た瞬間悲鳴を上げました。
「助けて!!食べられちゃう!」
その場でおおかみは何も出来ませんでした。
🍎🍎🍎🍎🍎🍎🍎🍎🍎🍎
どこかに行こう。
どこか遠く誰も知らない遠い場所。
僕がいたら、必ず誰かを怖がらせてしまうから。
そんなことを思いながらひたすら目的もなく足を進めました。
「ねぇ、あなたは誰?」
女の子の声で後ろを振り向くと小さな赤い頭巾をかぶった女の子が立っていました。
おおかみは黙って歩き続けます。
「ねぇ、なんであなたは私のことを無視するの?ねぇ、あなたは誰?どこへ行くの?」
おおかみは少女の方を向きました。
「誰も知らない場所へ行く。」
「なんで?」
「僕がここにいると、誰かを怖がらせてしまうからだ。」
おおかみは今まであったことを全て話しました。
もう二度と会うことのない人だと思ったから。
けど、もしかしたら自分のことを少しでも誰かに知ってもらいたかったのかも知れません。
「僕にはひとりぼっちがお似合いなんだよ。」
そうしてまた歩き始めようとすると手を握られました。人間に触られたのは初めてのことでした。
「あなたは素敵だわ。あなたのおはなしを聞いて思ったの。すごい優しい人何だって。人ではなくておおかみだけれど。あなたは本当は怖くなんてない。とっても優しいおおかみだわ。」
この言葉がおおかみにはとても嬉しくて幸せでした。
「ねぇ、友達になりましょう。もうあなたはひとりぼっちじゃないわ。」
こうしておおかみには友達が出来ました。
もうおおかみはひとりぼっちじゃなくなり、人に怖がられることもなくなりました。
ひとりぼっちおおかみ ミカ @mikazuki_ai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ひとりぼっちおおかみの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます