キラキラネーム幼稚園📛

はりねずみ

第1話

【第1話】名前


可愛らしい動物たちと折り紙の桜が壁面を飾り、新入生を待ちわびる新品の名札や連絡帳たちに名前が記される...


ここは私立 清蘭セイラン幼稚園の職員室。私はこの春からここで働き始めることになった、宮野 沙也加サヤカ。現在名前書きの真っ最中。


小さい頃から夢だった保育士として働けることは凄く嬉しいが、同時に思うことがある。

それは....


キラキラネームが多い!


フリガナがなければ読めない名前がゴロゴロと転がっている。時代のせいかもしれないが、名前を覚えるのが苦手な私にとっては迷惑以外のなんでもないじゃないか...とまぁモヤモヤと作業を進めていたら、園長先生が声をかけてくださった。


この幼稚園の園長先生、滝坂タキザカ華蓮カレン先生。幼児教育の第一人者と呼ばれ、また後で説明するが「個別スペース制度」の産みの母でもある。


「宮野さん、なにか困ってること、ない?」


『園長先生!...実は園児の名前が

覚えられないんでふ...こんなにキラキラネームがたくさんだなんて...』


「たしかに最近は増えてるわね...宮野さんはキラキラネームについて、どう思う?」


『私は名前を覚えるのが苦手ですし...まぁちょっと子供がかわいそうかなって思います。』


「それはどうして?」


『この先、一生使う名前じゃないですか、それがキラキラって...ちょっと可哀想ですし、そんな名前をつける親もどうかと(笑)』


「...宮野さん、私の名前を聞いてどう思う?」


『え...華蓮さん、ですか?すごく綺麗で知的だと思います!』


「...私が小さい時、この名前はキラキラネームと同じ扱いだったわ。今じゃたくさんいる名前だけど当時はよくいろんなことを言われたわ。」


『は、はぁ...。』


「...時間なのよ、何事も。今おかしいと思えることでも、昔のことが今普通の扱いを受けているのと同じ様にいつか“当たり前”になる。だから今どれだけ理解出来なくても、キラキラネームの子供や、その親に偏見を持つようなことはしないで欲しいわ。」


『なるほど...。』


園長先生はこくりと頷き、自席に戻って行った。


私はこの時、返事をしたが本当の意味を完全に理解しきれていなかったのかもしれない。


おっと、こんなことをしている暇はない。

まだまだ名前書きだってあるし、教室整備もしなくっちゃ。


こうして私の保育士生活がスタートした。

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