10.転移物チートの落とし穴

 何だか書きたいことばかりつらつらと書いているこの創作論ですが、ちらほらと星を頂いていて大変ありがたく思います。


 さて、引き続き転移チートのお話です。前回、設定によって転移物であってもチートはできる、とお伝えしました。

 しかし、それには落とし穴があります。


 例として、数式の魔法を取り上げましょう。

 数式が存在しない世界で、魔方陣は数式を使って書かれている世界です。

 例えば、街の娘が計算をしていたら、どうでしょうか。

 勿論簡単な加減法ぐらいはあっても良いでしょう。物の売買が成立し、貨幣制度が整っていれば、それは生活に密着している必需品ですから。

 でも、領主が農地の面積を計算していたり、それを把握して「納税は収穫の1割だ」なんて言ってしまうと、途端に設定が破綻してしまいませんか。

 実際、家の平米数とか目安にはなりますが、「実家と同じぐらいだな」とか「一人では広いけど二人だとちょっと狭いな」とか、その程度で良くないですか?

 徴税にしても、変動税である必要はありません。固定税にして、目安となる重さなり何なりがあれば、加減法以外の計算は不要です。

 ましてや、この世界は数式が存在しないはずの世界です。こういった矛盾点を極力減らし、どうしても残ってしまうケース(この場合は加減法)についてももっともらしい理由をつけて「存在を許す」必要があります。


 この存在を許すと言う行為ですが、これはかなり難しいと思います。

 存在が許されていないはずの現象というものは作者がしらみ潰しに調べていかなければなりませんが、どうしても見落としはあります。その見落としがないように、何度も推考を重ねて初めて世間に公表できるものではないかと思うのです。


 さて、転移物チートの難しさが少しでも伝わったでしょうか。

 でも安心してください。転移物であっても、1つだけ抜け道があります。

 それは「転移した理由」をチートキャラにつければいいのです。

 例えば元々は親が異世界の住人だったとか、転生して現代社会に生まれたとか。

 召喚にも近いですが、何らかの理由で死にかけて三途の川を渡ったら異世界だった、とか。

 暴論ですが、ようはその物語にあった理由付けがなされていれば、チートキャラであっても読者は納得する場合もあるのではないでしょうか。


 次回は異世界から少し離れて現代ファンタジーについて言及しようかと思います。

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