7.ファンタジー設定の説明

ハイファンタジー、ローファンタジー共に中々難しいのがその設定の説明です。

特に異世界ファンタジー作品はその世界観があるので、専門用語もわんさか出てきます。まだローファンタジーだと日常生活している現代が舞台になりますから、少しは説明も省かれる部分もあると思います(と言うか思いたい)。


設定考えてると楽しいんですよね。ついつい色々考えてしまって、物語に関係ない部分も設定して。

そして決めると伝えたくなるのが作家ゴコロ。全然関係ない国土の説明とかで一話使って、満足。学園ものなのに冒険者ギルドの話と政治の話だけで終わってしまうとか、それよりテストの話しようよ。今じゃないでしょその説明!

そんなことにならないために、ちょっと自制心を持ちましょう。主に自分。


実際、説明回を入れるのは大事だと思うのです。FF13じゃあるまいし、いきなり専門用語ばだかりでも読者置いてきぼりですよ。

ただね。読者に伝える設定はTPOを考えて取捨選択しないと駄目なんです。

金銭のやり取りがなければお金の単位なんかいらないんです。

重さや長さの単位だって必要なければ書かなくていいんです。

時間の概念だって、必要ない生活してる人は五万といます。

世界に深みを出すために設定するのはありだと思いますが、それを伝えることが主目的ではありません。

だからこそ説明って自然に入れ込むことが難しいのですけれど。


さて、前置きが長くなりました。

世界観の説明。これを自然に物語に入れるにはどうしたらいいのか。

いくつか手法がありますが、一番自然なのは「何も知らないキャラクターに説明する」と言う手です。

別に主人公じゃなくても構いません。箱入りで一歩も外に出たことがない護衛対象のお嬢様でも、生活記憶まで失った記憶喪失の旅人でも、人間について全く知らない獣人な子どもにだっていいんです。

ただし、それだと表面上のことしか伝えられない可能性があります。そのために「一人称の主人公」が使われます。

召喚物は、この点でとっても便利です。だって、召喚されてるからこっちの世界のことなんか何も知らない。そして、一人称だと主人公が考えただけのことも表現できるので、より疑問点を誘導しやすくなります。疑問点の誘導をすることで、読者に他の部分の疑問を持たせづらくし、結果として伝えたいことだけを伝えることができます。

もう1つ、三人称の物語では地の文で解説することもできます。

世界の一般常識を伝え、客観的に表現する三人称の文ですから、もちろんいつでも何の説明でも入れられます。ですが、TPOを考えないと今いらないよね、と言う情報だけを羅列するようになる、諸刃の剣でもあります。

主人公が冒険者ギルドにいる時には冒険者ギルドの説明は必要だけど、暦や他国の歴史なんて他の所でやってくれ、と言われてもしょうがないです。

地の文の説明はメンバー内全員が知っていることも自然に伝えられる点で非常に便利です。同じ村出身の仲間に、一人称では、村の名前や特産物、立地などは当たり前すぎて説明しようがないからです。

難易度が高い分、汎用性も高くなります。


ところで、召喚物は一人称の作品が多く見られるように思います。

読者と同じ一般常識を持ち、異世界についての常識や知識を持たない、いわば読者と同じ知識しか持たない主人公です。世界観の説明をするのに、これ以上なくやりやすいでしょう。

だって、この世には魔法すらないですから。魔物を見ても名前は何も知らないですから。

もちろんスライム状の魔物を「スライム」と呼ぶ、ということは知識としてあるかもしれません。でも、その知識がそのまま異世界に適応するかどうか主人公にもわかりません。

もしかしたら、「ゴルフェルム」なんて名前の魔物が私達の知っているスライムかもしれませんが、みんなが当たり前に知っている魔物の形状を改めて説明しませんから、ゴルフェルムという別種の魔物だと読者が受けとることもあるのです。

そういった齟齬ですらネタにできるのが一人称の召喚物で、書き手としても書きやすくありがたい手法だったりします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る