6.王道とは

ヒロイックファンタジー。勇者や英雄が絶対悪を打ち倒す物語です。

時に裏切り、時に助けられ、時にヒロインと恋愛もあったりなかったりしながら冒険をしていき、主人公は成長し悪を倒す――昔からある王道的手法の物語です。

今ってこれはやらないんですかね。


チート主人公っているじゃないですか。

秘めたる力、みたいなのはあっても、「まだ目覚めていない」から弱い。でも、成長に従って誰も寄せ付けるものがいないほどの強さを持つ勇者となる、みたいな。

そうじゃなくて、元々最強の力を持っていて、しかもそれを使いこなせる。あとは自分の頭と力の使いようで何とかする、って、またちょっと違いますよね。


勿論昔だってチート主人公はいましたよね。でも、他者をまったく寄せ付けないほどの強者って訳じゃなかった。

めちゃめちゃ強くても、同じぐらいハチャメチャなやつばっか出てくるから主人公がチートっぽく見えなくて。

でも、たまーに一般人の視点から見ると「あーやっぱりこいつら規格外なんだ」と再認識するような、そんな感じでしたね。

今って、もちろんそんな小説もあるけれど、一般人に囲まれた主人公一人超最強! みたいな小説も増えてきてますよね。


規格外ばっかり集まったら、その集団の中では「規格外=平均値」になるから、その中で対等だったり裏切りがあったり勝敗が決したり、一歩間違うと主人公が負けたり色々予想がつかないんですけど。

一般人が集まってると「規格外=超強い」になるから、負けるわけないですよね。

チート系でも楽しく読めるのって、それ以上に強大な絶対的な敵がいるとか、むしろ規格外しかいないパーティメンバーだからこそ起こる事件だとか、そんなのがなければ序破急もなにもないですよね。


昔のチート系で言えば「スレイヤーズ」「ゴクドーくん」あたりかな。これだって、周りみんな結構規格外。敵もさらに規格外。

デルフィニア戦記なんかもチートだけど、一人で一万の重装備兵相手にはさすがに危険ですし。


っていうか、別にチート系でも否定しないんですよ。

昔から勇者(主人公)は秘めたる力を持っていて唯一魔王を倒せるとか言うチート持ってるんですから。それをはじめっからフルに使うか、成長に従って徐々に能力開花していくかの違いなんですから。


最初からフルに能力つかっても面白い物語が作れるのならいいんです。

ただ、能力を開花させたり、強い敵に一度負けてそいつに「強くなったな」なんて認められたり、そんなシーンが極端に少なくてさびしいな、ってことなんです。

むしろ王道ってそういったシーンありきじゃないのか、と思うのです。

修行パートは書いててつまらないよね、確かに。

さくっと活躍してくれる方が書いてて楽しいよね。うん。

それでも、能力開花した後「これが俺の真の力…?」なんてシーンあったり、開花したばっかりの能力に翻弄されるシーンがあったり、それも一興じゃないかと思うのです。


王道がヒロイックファンタジーである理由としては、そんな努力の末に一騎当千の力を手に入れた勇者が仲間と共に(少数精鋭で)世界を平和にする、という中で、信頼や裏切り、恋愛等のヒューマンドラマもあり得るからこその王道なんだと思います。

主人公一人強いチートだと、信頼を描くのは中々難しいと思いますし。

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