暗躍

予選が終わって予選通過者が発表された。

アシスの所属するD組からはレイナ、マルトネ、ライン、アシスが本選に参加する。

4クラスある一年部で4人が予選通過というのは多い方だ。

クラスの好成績に浮わつき、予選の感想戦をする人が目立つ校舎にアシスはいなかった。



アシスがいるのは医務室。

ラインのお見舞いに来ている。

予選の最後にアシスが頼んだ時間稼ぎを自身がボロボロになりながらも果たしてくれたのだ。

感謝してもしきれない位だ。

とアシスは誇張抜きに思った。


まだ目を覚ましていないらしく会話をすることは出来なかったため医務室を後にする。


次に向かうのは図書室だ。

ソフィに結果を報告しに行く。


いつものように入室すると


そこには何かを準備しているソフィがいた。


「何をしているんですか?」

「ああアシスか。見ての通り明日の荷物を準備しておる」

「明日って何かありましたっけ?」

「ん?知らんのか?」


本気で知らないアシスを見てしかたないとばかりにソフィが説明をしてくれる。


「明日から王都へ警備に出るんじゃよ」

「ああ、建国記念宣言ですか」

「そうじゃ、それに学園から教授格と二年生以上の上級生が警備員として派遣されるのじゃ」


建国記念日に普段民衆の前に立たない国王が記念宣言をするという最大級のイベントだ。

警戒レベルを上げ学園から人員を集めることも理解できる。


「まあ、何も無いじゃろうが…」

「そうですね」

「面倒じゃが無視する訳にもいかん。諦めていってくるよ」

「じゃあ明日から数日、課外は無いですね」

「そうなるの。そういえばマレイヤから聞いたぞ。予選突破、おめでとう」

「ありがとうございます」


そういえばと本来の目的を忘れていたアシスだった。



────

「いよいよか」

「我らが王が甦るときは刻一刻と近づく。確定された未来だが警戒を怠るな」

「了解」

黒ローブの男たちが計画の再確認を行う。

「南園に眠る“アレ”さえ手に入れば早々に退いても構わん」

「ですが中隊長…」

「なんだ」

部下に対して容赦の無い視線を浴びせ問う。

「進言致します!龍が目覚めつつあるという報告が有りました。計画に支障があるかどうか不明とのことです」

「ほう?あの龍が、か?」

「はい。その通りです」

「それならば支障は無いと伝えろ。そして動向の観察と報告に命令を更新する」

「了解」

部下が退室するとその場に居た重役であろう黒ローブの男たちは笑い始めた。


「「「ハハハハハハ」」」

「風向きは我らにあり!」

「そのとおりですな!」


建国記念日に国を揺るがす事件が起ころうとしていた。


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灼剣の神器 炭の使い魔 @ashharu

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