予選三日目③
ラインとのタッグ戦。
変に知らない人と組まなくて良かったと心底思いながら眼前の二人を見据える。
「試合開始!」
火蓋が切って落とされる。
タッグ戦は勿論初めてだ。
それに対しあの双子(試合開始前に素性が分かった)はタッグ戦のスペシャリストと言っても過言ではない。
アシスはラインと距離を取ることを提案しようとするが
「行くぞ!サヒル!」
「おうともさ!ソヒル!」
サヒルとソヒルの連携で距離を取ることを許さない布陣とする。
対戦相手の選択肢をことごとく奪おうとする良い手段だ。
先手を取られながらもアシスは感心していた。
だが少し甘い。
アシスは渡り火、ラインは<
これが赤の他人ならば出来ないこと。
アシスは距離を取る提案をすることが出来なかったがラインはアシスが提案しようとした内容を察していた。
そして短いながらも同じクラスで交流があったために互いの得意魔法も知っている。
今のところこの一点にかけては双子の計算外だった。
「あの二人は知り合いか!」
「そうだな!失敗したな!」
考えがだだ漏れだがこの双子に関しては余裕の裏返しであった。
それが分かったアシスとラインは分割に成功したそれぞれの試合に集中する。
手の内を知っていない油断は確実に命取り、そこに勝機を掴むしか方法が無いように思えた。
アシスは昨日の観察がある。
この双子がタッグでなくても十分強い
個人としても予選突破は狙えるのではないか。
そう思えてくる。
アシスはソヒルと対峙していた。
「<暴風の障壁>!」
ソヒルは風魔法を放っていた。
障壁とあるが風を引き起こす範囲領域だと考えていい。
<暴風の障壁>を貼ったソヒルは次の魔法へとシフトする。
「<
鎌鼬の銃弾バージョンである風銃乱射を放つ。
本来の風銃乱射は一発に風を溜める必要が有るのだがソヒルは暴風の障壁を利用し連射していた。
魔法の複合による応用。
この時点で一年生としてはかなりの実力であると分かる。
一方、ラインとサヒルは
「おお、速い速い」
「…くっ!」
「さっきので転移魔法じゃないのは分かってるんだ!速いだけならどうってことないさ!」
ラインはサヒルにあしらわれていた。
あしらわれるラインは次の手を考えるがそんな時間を与えるほど甘くはなかった。
「行くぞ!<暴雷の障壁>!」
暴風の障壁のように今度は雷の領域が形成される。
そしてソヒルと同じように
「<
雷の連射がラインを襲う。
アシスとラインの二人はそれぞれに襲いかかる銃撃を辛うじて捌ききっていた。
だがこれだけで終わる相手では無かった。
「らちが空かねえ!アレをやるぞサヒル!」
「あいさ!ソヒル!」
双子は互いの距離を詰める。
アシスとラインは嫌な予感がした。
この双子を合流させてはいけない。
アシスにとってその直感は最近感じたことがあるものだった。
そう転入直後のあの試合。
<
しかし弾幕への対処が精一杯。
サヒルとソヒルは合流し
あの時と同じように予感が的中する。
「「─現世に招かれし我らが双神よ
─原初より唯一無二と存在せし二性は
─祖と終を知る大いなる力とならん」」
「「顕れよ!<風神><雷神>!」」
『ゴアァァァァァァァァァァ!!!』
召喚に呼応し顕れる二神にアシスとラインは絶望的になる。
アシスは正直勝てる気は一切無かった。
友人はどうだろうかとラインをちらりとうかがう。
アシスは自身を恥じた。
ラインの眼はまだ諦めていなかった。
勝てる手を必死に探している。
友人が諦めていないのに俺が諦める訳にはいかない。
「ライン…30秒稼いでくれ」
自然と言葉が紡がれていた。
「…分かった」
言葉に詰まりながらもアシスに任せたと告げる。
溢れんばかりの血潮がアシスの体内を駆け巡る。
ドクン
ドクン ドクン
ドクン ドクン ドクン
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