予選三日目②
三日目開始直後
アシスは早速対戦を申し込まれた。
上位の面子を自身が倒すという定石にのっとってアシスに勝ちに来たらしい。(先述した通りアシスは顔や名前を知らないため定石をとれない)
逆にこうして対戦を申し込まれるのならば心配無いなと思い早速その試合を承諾する。
対戦相手の名前はヤルロというらしい。
「試合開始!」
審判の宣言を聞いた両者は
動かなかった
「「!?」」
どちらもスタイルが「受手」の時におこる現象だ。
これは試合が長引くかもしれないがスタイルを崩すことは相手に二重の有利を与えることになる。
特に今は先を急がなくてはならない。
アシスは先手に転ずることにした。
「ハアッ!」
相手の武器は槍、対するアシスは剣
武器、得意スタイルで敵に有利を与えることになったが気にしない。
これで勝てなくては予選突破など出来るわけがない。
アシスは渡り火を使った。
…が
「!?」
渡り火は問題なく発動した。
だがアシスはヤルロにカウンターを喰らいかける。
どうやら数多くの試合を渡り火でこなしすぎたため見極められてしまったようだ。
辛うじてカウンターを対処し次の手を考える。
だがそれにかけた時間は一瞬だった。
ヤルロはカウンターを機にアシスに猛チャージを仕掛ける。
アシスは再び渡り火を使った。
ヤルロはアシスが消えたと同時に勝利を確信し現れる筈の背後へと槍を突く。
しかしその槍は空を突き。
同時に敗北へと繋がった。
「勝者、アシス!」
審判の宣言を聞きアシスは勝ったことに安堵する。
アシスが行ったことは至極簡単。
渡り火の転移先を背後ではなく正面にしただけだ。
アシスは予選中、背後への渡り火しか使っていない。
そして今回の渡り火を「見極められた」のならば思考プロセスを読むことは簡単。
「アシスは背後への渡り火しか使えない」と考えてしまっていたのだ。
それにより正面への転移という選択肢が無いと思い込み正面への警戒を欠いてしまった。
確かに応用だが応用するために練習していたのだ。
ヤルロの考えが甘かったとしか言いようが無い。
これでおそらくヤルロの予選突破も絶望的になっただろう。
恐ろしいがこれが予選である。
アシスは切り替えて次の対戦相手を探すことにした。
その後更に3勝して49個となったアシスは再びラインと出会う。
ラインも49個だった。
試合をしようかとアシスが切り出す前に
「「しょーぶだー!!」」
「「!?」」
突然の割り込みの声に驚く二人。
二人の視線の先には
二日目の最後にアシスが目撃した二人組が立っていた。
「「勝負だ!灼剣とライン!」」
「ペアでの試合はルール違反では?」
ラインの疑問はもっともだ。
だがこれに関してはアシスの方が詳しい。(勝王杯でルールは全て頭に入っている)
「いや、二人組での試合が元から無い。だから禁止すらされていないよ…ルールの穴をついている。それに…」
「二人同時に予選突破が狙えるな」
アシスの言葉に割り込む様にしてラインが告げる。
確かにこの場合ならば同時突破が見える。
アシスがそれでもやるべきかと考えようとしたその時に
「受けてたとう」
ラインが答えてしまった。
構わないがこの二人相手は何か不安がよぎる。
アシスとラインのタッグバトルが始まる。
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