紅き追憶の欠片②

業火の罪を背負った少年は国に拘束された。

国王の自己保身のためだ。

少年は確かに呪われていた。

世界を滅ぼすことの出来る制御の出来ない力を持たされていた。

拘束されても火は消えなかった。

しかし火を消すことの出来る力が存在した。


それが魔法だった。


少年の消えなかった火は消えた。

業火の剣は少年の左腕に刻印としてきざまれた。

少年は喜んだ。

家族の元に帰れることを。

呪われた力が抑えられたことを。


しかし国王は少年を元の生活へと帰さなかった。

多大な力を手にした今、それを無駄にするのは惜しい。

故に国王は無茶なことに少年を戦場へと駆り出させた。


少年は恨んだ


戦場へと駆り出させた国王を


反対することの無かった国民を


そして人間を


呪われた力は戦場を飲み込んだ。

魔法でしか防げなかった焔を当時の魔法が未発達だった戦場で消す手段があったはずがない。

文字通りの連戦連勝。

一人の兵を死なせずに全滅させたこともあった。


国王は喜んだ。

世界最大の帝国へと近づいたことに。

国民は喜んだ。

戦利品によって栄える街に。


対照的に少年は悲しんだ。

自らの手で敵兵を殺めたことを。

もう自らの手でこの国を止めることが出来ないことを。


負ける筈がないと誰もが思った。

そして引いてはいけない最後の引き金に


指をかけた



誰もが止めなかった。


暴走する国を

横暴する国を

壊れた国を

間違った国を


そして必然か

当時、世界最強の帝国オスタレスは全世界に向けて宣戦布告をした。


少年は──剣を抜いた

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