予選へ向け④

「まずは<渡り火>の原理についてじゃの」

アシスは渡り火を会得するためソフィの授業を受けていた。

「渡り火とはさっきも見せた通り火が消えるように存在を消し転移するという魔法じゃ。

転移魔法に近いのじゃがコンセプトの原型が火なんじゃ。

故に火の適正があれば使うことが出来る。」

「本当に俺が転移魔法に似た魔法が使えるんですか?」

「然り。

魔法は不思議な物じゃから『どうしてか?』と問われても分からぬ。

簡易的じゃが理論は説明したぞ?」

「…適当過ぎません?」

「適当では無い。

共有魔法ではなく個人魔法なのじゃ。

魔法式は自分で探せ」

「はあ!?」

無理もない反応である。

「チッ…ならスタートとゴールをイメージしろ」

指示通りにイメージする。

「次にスタートに火のついたろうそく、ゴールに新品のろうそくをイメージするんじゃ。

そして火のついたろうそくがゴールのろうそくに火が移るのをイメージしてみい」

アシスは渡り火という意味そのものをイメージする。

これが起点だった。

フッと一瞬だけ消えることが出来た。

「よし、初めてにしては及第点じゃの」

「…出来た?」

「あとは距離を伸ばす練習じゃ」

「どうして…」

「『魔法式を唱えていないのに』か?」

図星だった。

「簡単なことじゃ。

さっき、魔法は世の理をねじ曲げるものと説明した。

イメージにより『○○が出来るはず』という確信に似た何かを持つと理をねじ曲げる対象として具現するということじゃ」

「さっぱり分からない…」

「要するにイメージが重要なのじゃ」


この人、凄い人だと今更ながらに気付きアシスの秘密?特訓は始まった。


予選まであと三日

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