予選に向け③
見た目は小さな女の子(いわゆる幼女)口調はおばあちゃん。
ソフィアと名乗る司書はアシスをじっと観察していた。
「ほうほう、お主が噂の灼剣か」
「はい、アシス・レヴァストと言います」
「それで小僧は我に魔法理論を学びに来たと」
名前で呼んでくれないんだ…と内心苦笑いしつつも肯定の意を示す。
「お主は何の為に魔法を学ぶ?」
真剣な眼差しで値踏みするように問われる。試されてるのかと怪訝に思いながらアシスは
「守りたい物を守るために必要な力だと判断しました」
と学園に来た理由の一つを魔法を学ぶということに転換して答える。
決して嘘ではない。
───…で人を殺めたくない!だから…
───学びたいのか?覚悟は出来てるのか?
───覚悟なんてとっくの昔に出来てる!
「その言葉、嘘ではないな…なら良いじゃろう」
ああ、忘れてたと言わんばかりにソフィアがアシスに最後の問いをかける。
「覚悟は出来てるのか?」
「覚悟はこの学園に来る前に出来てます」
なんだか昔を思い出す。
師匠に弟子入りしたあの時を。
「では授業を始めるかの」
「はい、先生」
「先生なんて堅苦しいのは止めてくれ、愛称のソフィで良い」
「…はい」
それを指摘されるとは思っていなかった(勿論普通はあり得ない)ために少し返事が遅れる。
「授業を始める前に問いたいことがある」
「何でしょう?」
「お前が身に付けたいと思う魔法は?」
「は?」
アシスはゴールを決めていなかった。
理論を学んで理解してからだと考えていた。
「何をゴールとするか分からんからな」
「…まだ決めていません」
「そうか…なら、こんなのはどうかの?」
フッと火が消えるようにしてソフィの気配が消える。
「!?」
「火の適正があるお主にぴったりじゃとおもうのじゃが…」
「火の適正?」
「何じゃ?そんなことも知らんのか?」
「…はい」
ソフィが再び姿を現す。
「まあいい、基本からいくぞ?
まず魔法はこの世の理をねじ曲げるものじゃ。
こうして我が浮いているのも魔法の一つ。
各々に大なり小なり存在する魔力を用いて魔法を使うことができる。
ここまでは流石にしっておるじゃろ?」
「はい」
「そして魔法には八つの属性に分けられる。
火、水、風、雷、力、白、黒、命じゃ。
こと細かく説明すると時間が足りないのでのここは省かせてもらう。
ここで勘違いしている者が多いのだが魔力があれば誰でも魔法を使うことが出来るわけでは無いんじゃ。」
「それが…適正ですか?」
「然り。
まあ適正判断が出来るのは数少ないがの。
殆どはどれだけ練習しても使えないから才能が無いと判断して諦めるのう」
「それで俺には火の適正があると」
「そうじゃ、ついでに雷も適正があるのう」
「…他には?」
「無さそうじゃの」
内心ショックである。
火だけではなかったのが救いだった。
「ってことは授業で上手く魔法が使えなかったのは?」
「適正のせいかもしれんな。
じゃが理論の理解は出来るはずじゃぞ?」
「うっ…」
図星である。
「…話を戻すぞ。
そして今回、予選迄に身に付けて欲しいのがさっき実演した<渡り火>という魔法じゃ」
「…予選迄にぃ!?」
「大丈夫じゃ、なんとかなる」
にっこり笑顔で告げられたアシスはソフィの言葉を信じてみることにした。
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