第9話 私のヒーロー
「彩!!」
お母さんが血相をかえて走ってくる。
「先生!彩は!?」
「殴られたショックで倒れただけですね。大丈夫でしょう。ただ、頬の腫れはあと、1ヶ月くらいは様子を見ていくしか...」
私のせいでお姉ちゃんの顔に傷がついたこと、今でも後悔してる。
「あぁ、なんてこと!可愛い彩の顔に傷が!!」
「あの...」
女の人がお母さんのもとにやってきて...
「うちの息子が大変申し訳ありませんでした!!」
「あなたの息子さんが彩を殴ったの?」
「...はい。本当にすみませんでした。...ほら、あなたも謝りなさい。」
「ごめんなさい。」
「いえ、もう取り返しのつかないことなので、大丈夫です。でも、一つだけ聞かせて欲しいことがあるんですが....」
「なんでしょう?」
お母さんはかがんで、男の子の目線にあわせ、
「ねぇ、君は、彩を殴ろうとしたの?」
等ときいた。
「ちがうっ!俺はあいつを殴ろうとしたんです!!」
そして、男の子は私を指差して叫んだ。
「女の子を殴っちゃダメでしょう!!」
男の子の母親はそういったがお母さんは安心したような顔だ。
「ところで、あの子はだれなの?」
「知らない。朝比奈と一緒にいたけど、俺が話しかけたら邪魔してきたんだ。だから、つい、カッとして...」
やっぱり、
「だからって小町のこと殴っていいわけないじゃない!」
そうそう、あのとき、お姉ちゃんが来てくれたんだよね。本当にヒーローみたいだった...
「...ち...こ...まち...こまち...小町!!」
「え?」
「もう、家着いたよ?」
「あ、ごめん。」
いつの間にか家の前にいた。
「ねぇ、昔のこと思い出してたの?」
ふふ、お姉ちゃんにはお見通しか。
「うん。ちょっとだけね。」
「あのときはごめんね。私のせいで怖い目にあわせて。」
「お姉ちゃんのせいじゃなかったでしょ?」
「ううん。私のせい。」
「違う。」
これじゃ、押し問答だ。
「じゃあ、今日のところは、私のせいじゃなかったってことにしておいてあげる。」
お姉ちゃんも同じことを思ったのか、負けてくれた。でも、
「今日だけじゃなくて一生お姉ちゃんのせいになることはないからね!」
お姉ちゃんと笑いあって家に入った私は、また地獄をみることになる。
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