第8話 それぞれの優先順位
帰り道、2人でクスクス笑いながら帰っていたら、突然、お姉ちゃんが真剣な顔をした。
「ねえ、小町。」
「...なに?お姉ちゃん。」
大体の内容はわかってるけど聞いてみる。
「大体の内容はわかってるでしょ?」
ありゃ、バレてたか。
「うん。今朝真南斗先輩を睨んだことでしょ?」
「うん。今朝のって、私の為に怒ってくれたんだよね?」
お姉ちゃんが申し訳なさそうな顔で聞いてきた。
そんな顔させたい訳じゃないんだけどな。
「お姉ちゃん。」
「うん?」
うっ、なにその上目遣い...流石お姉ちゃん、可愛すぎ///
「っ、///あのね、私が、嫌だったから怒ったんだよ?」
だって、真南斗先輩はお姉ちゃんは足が速いから大丈夫だしって意味で私の荷物って言ったんだろうけど、私はお姉ちゃんの荷物は持たないって言われたようで嫌だってんだもん。
こんなこと思うのはおかしなことなんだろうか?
もう、私に普通の感覚がないのは分かってる。だけど神様、もしいるなら、どうかお姉ちゃんだけは助けて...
「小町、あのことが原因でそんな風に怒ってるのなら、気にしないで?大丈夫だから、ね?」
「......」
お姉ちゃんのいうあのこと。
それは、6年前のことだ。
6年前、私が小学4年生で、お姉ちゃんが小学5年生のころのこと。
その日もお姉ちゃんと私は2人で帰っていたのだけれど、帰り道の途中、お姉ちゃんよりも上級生の男子3人組にからまれたことがある...
「おい!朝比奈彩!」
「なんですか?」
お姉ちゃんは私を庇うように前にでてくれた。
「お前、俺と付き合え!!」
今思えば、いきなりの公開告白だったな。6年生の男子3人組のリーダーっぽい人にお姉ちゃんが告白された。
「え、あの、だれですか?」
(お姉ちゃんが怯えてる、何とかしないと)
謎の使命感をだいた私は必死になってお姉ちゃんを助けようとした。
「お姉ちゃん、知らない人?」
まだまだ常識知らずだった私は、思わずそんなことを言ってしまって、それが相手の逆鱗に触れた。
「お前こそ誰だ!朝比奈彩に近付くな!!」
「関係ねぇやつは引っ込んでろ!!」
相手は私が妹だということを知らなかったのか殴ろうとしてきた。
歯を食い縛ってこらえようと次にくる衝撃を待っていたが、私にはバキッという痛々しい音が耳に入ってくるだけだった。
目を開けると、怯えきった顔の男の子と、お姉ちゃんの背中があった。
「お、お姉ちゃん...?」
こちらを向いたお姉ちゃんの頬が、
赤く腫れ、口元からは血が垂れていた。
「お姉ちゃん!!」
そう呼んだ直後、お姉ちゃんは倒れた。
「キャーー!!彩ちゃん、どうしたの!!!」
どこからか悲鳴があがり、お姉ちゃんはすぐさま救急車で運ばれた。
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