第7話 大切な人

登校中、お姉ちゃんと私の気まずい雰囲気を覆したのは真南斗先輩だった。


「......」

「......あ、あの、おねえ...」

「小町ちゃん!彩、おはよう!!」

「え?あ、真南斗先輩、おはようございます。」

「...おはよう、真南斗君。」

あれ?お姉ちゃんが、なんだか不機嫌になった??

「あの、お姉ちゃん?」

「ん?なぁに?」

気のせい?全然不機嫌な感じじゃない。

「ううん、なんでもないよ。」

「そぉ?じゃあ良いんだけどね。」

ギロリ。

お姉ちゃんが真南斗先輩を睨む。

「彩、なんか怒ってる?」

それに気づいた真南斗先輩がきく。(まぁ、あんなにあからさまに睨まれたら誰でも気づくんだろうけど...)

「んーん、別に。小町が話しかけようとしてくれてたのにいきなり邪魔してきたことなんて別に気にしてないから。」

うわ、絶対気にしてる...

「え、小町ちゃんが話してたの!?ごめんね、小町ちゃん!!」

「え...」

「許さない。」

いやいや、お姉ちゃん...。

「お姉ちゃん、私は全然良いから、ね?真南斗先輩も謝らなくて良いですから。」

「はぅぅぅ!!小町が良い子過ぎて可愛いぃぃぃ!!」

お姉ちゃ~ん、戻ってこーい!

「小町ちゃん...可愛すぎだよ...///」

うん、最近分かったけど、真南斗先輩もお姉ちゃんと同じ匂いがするよね。もう慣れてきたよ。

とりあえず、2人とも戻ってきて。

「ねぇ、お姉ちゃん、学校に遅れるよ。急ごう。」

「あ、そうだね!じゃあ、で急いで走ろう!!」

お姉ちゃん、今わざとってとこを強調したよね?

「え、おい、俺も小町ちゃんと一緒に行くつもりで話しかけたんだけど」

ほら、真南斗先輩も3人で行けば良いのにって思ってるよ。って、え?

「え?だって急がないと行けないし真南斗君足速いから追い付けないもん。一緒に行けないよ。」

お姉ちゃん...、気にするとこはそこなの?

「いや、スピードは合わせるし、だって持つから。」

ムッ

は?」

「「え?」」

はもってくれないんですか?」

「小町(ちゃん)??」

真南斗先輩、焦ってる。それもそのはず、私が真南斗先輩を睨んでるから。

「えっ、とごめんね?」

「......」

先輩、なんで私が怒ってるのか分かっていないみたい。

「小町、ヤバい、早く!」

ハッ!ヤバい、遅刻しそうなんだった!!

「うん!!」

私は走り出して、振り返った。真南斗先輩はまだ戸惑っているようで、微動だにしない。

...あぁ、もう!!

「真南斗先輩!急いでください!!」

「え、あ!うん!!」

私が叫んで呼んだからか、やっと状況を把握できたようで、走って追い付いてきた。



放課後、今日は四時間授業だったけど、お姉ちゃんと帰る約束をしていたので時間潰しのため図書室にいたが、お姉ちゃんの授業が終わる時間になったため図書室から移動し校門の近くで待っていた。

あ、ちなみに今朝、遅刻はしなかったから、安心してね。

「小町!」

「あ、お姉ちゃん!」

「ごめんね、待った?」

「ううん、大丈夫。」

なんか、この会話って...

「ふふ、なんか今の会話、カップルみたいだったね。」

「!やっぱり、お姉ちゃんもそう思ったよね。」

今の会話を聞いていた周りも、同じことを思っていたのか、ほとんどの人が此方を見ている。

...恥ずかしい。でも、

「...ふ、」

「...ふふ、」

「「あはははは!」」

なんだかそれが面白くて、2人で思いっきり笑いながら帰った。周りからの視線は、楽しかったのでさほど気にならなかった...はず。

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