第1話 姉妹

姉妹仲が悪い訳ではない。むしろ良い方だ。自分でいうのもなんだけど、姉は私を溺愛している。昔からそうだ。何の取り柄もない私をとても愛してくれた。自分が誉められてご褒美をもらえるなら必ず私にも同じものをくれた。ただ、それを見て周りの大人達はまた姉を褒めた。私には見向きもしなかった。別に今となってはもう昔話でしかないのだけれども。


また1日が始まる。

「小町、おはよう。」

「おはよう、お姉ちゃん。」

「はぅぅ!小町が今日も可愛い...!!」

「そんなことないよ。お姉ちゃんの方が...」

「彩ちゃんの方が可愛いわよ。」

まただ。今日もか。

「そんなことない!!小町の方が絶対可愛い!!」

お姉ちゃんは私のことをよく可愛がってくれる。正直、お世辞を言われてるような気分だ。でもお姉ちゃんは嘘をつかない。本当に可愛いと思ってくれているらしい。だけど、

「彩ちゃんは昔から良い子ね。こんな子にも可愛いと言ってあげれるなんて。私は母親失格だと言われてもこの子を可愛いとは思えないわ。」

「お母さん!!小町の前でなんて事言うの!?」

「いいよ。お姉ちゃん。」

「でも...!!」

正直、私の母親は最低だと思う。自分の娘でも出来の悪い私は甘えさせてもらった記憶がない。きっと私の事は娘だとも思ってないんだろう。

「彩ちゃん、そろそろ学校じゃないのかい?いってきなさい。」

「あっ。ほんとだ...。小町、いこう。」

「うん。行ってきます。」

「...そろそろ彩から離れて頂戴。彩は今年受験生なんだし、勉強があるんだから。」

「そうだよ。彩ちゃんももういいだろう。その子は彩ちゃんが世話をやかなくても生きていけるだろう。彩ちゃんは自分のことだけしていれば良いんだ。」

「お母さん...!お父さん...!」

「いい、いいよ、お姉ちゃん。」

「...うん。行ってきます。」

「いってらっしゃい。彩」

「いってらっしゃい。彩ちゃん」

「...!!」

お父さんもそうだ。私はこの家ではいないも同然なんだ。こんな理不尽な世界、私はいる意味なんてないんじゃないかな。


「くやしい!今日もまた小町のこと、守れなかった!!」

「そんなことないよ。お姉ちゃんにはいつも助けてもらってるし、守ってもらえてるのがわかるもん。」

「...っ!ありがとう。ごめんね、小町。」

「ううん。」

「はぁ、小町可愛い///」

「...」

「おはよう!小町。」

「...おはよう。美佳ちゃん。」

「小町のお友達?」

「...うん。同じクラスの子で仲良くしてもらってるの。美佳ちゃんだよ。」

「初めまして。小町の姉の彩です。小町と仲良くしてくれてありがとう、美佳ちゃん。」

「いえ!こちらこそ!!彩さんは有名人なので知ってます!小町が彩さんの妹だってしったときはビックリしました!」

「...そう。」

悪気ない一言。悪意はないと分かっていてもやっぱりその言葉に傷付く。それは幼い頃から植え付けられてきた劣等感のせいだ。

完璧な姉がいる欠陥品の妹。それが私のポジションだ。

そして私の劣等感の元はもう1つある。それはあの男だ。

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