姉が完璧過ぎたので私には何の取り柄もなかったはずなのになぜか学校一のイケメンが隣にいます。
薊
プロローグ
女の子がいる。その周りにはたくさんの大人達。
「彩ちゃんはかわいいわねー。」
「彩ちゃんは将来美人さんになるわね。」
「えへへ。ありがとう!」
「まぁ!礼儀もしっかりしてるし、良い子ね!!」
「あら?こっちの子は?」
「妹の小町!!」
女の子の後ろに隠れるようにして立っていた子がでてきた。
その子の顔を見たとたん、周りの大人達はだまってしまった。
「そ、そう。彩ちゃんの妹なの...。姉妹なのにあんまり似てないのね。」
「え、えぇそうね。彩ちゃんは美人さんで可愛らしいのに、小町ちゃんは...。」
「小町、可愛いでしょ??」
「...。えぇ、そうね。可愛らしいわね、彩ちゃん。」
「ふふふ、でしょ!?」
「あ、ありがとうございます...」
...随分と昔のことを思い出した。あれは私が五歳のときの話だ。「彩ちゃん」とは、私の姉である。成績優秀。運動神経抜群。おまけにそこらへんのモデルに負けない顔立ちだ。まさに才色兼備。それに比べて私の名前は、「小町」。完全に名前負けしている。成績は普通。運動は苦手。顔立ちも地味だ。姉妹でこんなにも違うものかと思うほどに似ていない。幼い頃から比べられ言われてきた言葉「姉妹でも似ていないのね。」これは、私が何をしても姉のように上手く行かなかったからである。幼い頃はまだ良かったのだ。大人になるにつれ、それは私を地獄へ落とす。
「小町ちゃんって、お姉ちゃんと全然似てないよね。」
「ほんとだよねー!小町ちゃんのお姉ちゃんは、可愛くて、お勉強ができて、運動もできるんでしょ!?」
「うん!この前見かけたけど、スッゴく可愛かった!!」
「それに比べて小町ちゃんって...」
小学生の頃はまだこの程度だった。
でもこれでは止まらなくて。
「朝比奈彩の妹って姉と違って全然可愛くないし、勉強もできないんだって!」
「え?マジで!?カワイソー、良いとこ全部姉にもってかれてんじゃん(笑)」
「ちょっと、そんなこといっちゃダメだよ(笑)」
「お前だって笑ってんじゃん?(笑)」
「だって、この前もテストボロボロだったらしいじゃん?(笑)それに比べて彩さんはさぁ学年一位だったし、ほんと出来の違いがすごいよね(笑)」
中学生になれば、私の名前で呼ばれることがなくなって、露骨にいじめる人が増えた。
「あの子名前何て言ったっけ?ほら、彩さんの妹。」
「あー、何だっけな。朝比奈...」
「ちょっと、失礼じゃん?(笑)」
「じゃあ、お前言えんのかよ(笑)」
「朝比奈小町でしょ?」
「あー!確かそんな名前だった!!お前すげぇな!!」
「いつも朝比奈彩の妹としか思ってないから(笑)」
「うわ、サイテーじゃん(笑)」
今では私の名前を知ってる人も少ない。
私の存在意義は無いに等しいかもしれないな。
ずっと姉のオマケだった。いや、オマケですらなかったのかも。今思えば、お姉ちゃんの金魚の糞だったのかも。誰も私のことなんて見てくれなかった。いなくなっても気付かれない。...本当は気づいてたけど気づいていないフリをしていただけかもしれないが。
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