夏休み~002

 夏休みも半ば。

 毎日毎日コンビニ袋が玄関先に置いてあり、毎日毎日非通知着信がアホみたいにあるが、至って平和に過ごした。

 毎日毎日学校に勉強に通い、毎日毎日春日さんに教えて貰い、毎日毎日槙原さんと電話でたわいもない話をし、毎日毎日ジムに通うと言う、特に記述する事も無い毎日だった。

 だが、この日は違った。

 朝、ロードワークから帰って来た時、玄関先に人影が見えた。

 槙原さんかと思ったが、そいつは爆乳では無く、ぶっとい三つ編みじゃない。長めのポニーテール。

 門に背中を預けて、心無しかしょんぼりしていた。

「朝っぱらから何やってんだよ朋美」

 少し前に訳解んなくキレて、疎遠になっていた幼なじみだ。

 朋美はゆっくりと俺に顔を向け、乾いた笑顔を作った。

「おはよう隆」

「オス。だから何やってんだよ」

 少し躊躇して俯くが、意を決したように、ポケットからチケットを取り出した。

「……私の友達が大沢と仲良くなりたいって…で、大沢に相談したら、一人じゃ嫌だとか言われて…だから…あの…」

 チケットは映画のチケットか。

 以前と違うが、内容はほぼ一緒だ。

 映画なら雨は関係無いから、ファミレスイベントがあるか解らないが…

 麻美に相談したいが、何故か出て来ない。

 どれどれ、と、チケットを見ると…

「今日最終日じゃねぇか!!」

「あ、うん。何度か電話したんだけど、繋がらなくて…んで、早朝なら家に居るよなぁとか思っていたんだけど…何かギクシャクしてたじゃん、私達?」

「んで当日まで引っ張ったって訳かよ。つか、電話なんか来なかったぞ?来たのは非通知だけだ」

「あ…掛け違いしちゃったかな…で、どう?」

 どう?とか言われても、あれは朋美のでっち上げだって知ってるしな…

 何故でっち上げたのか意味不明だが。

 じゃ、映画の内容は…

「恋愛物か…」

「あ、うん。でも厳密には恋愛じゃないって。馬鹿な男が勘違いしてイケメンの友達狙いのビッチを車の中で…」

「それ未成年が観ても大丈夫なやつか!?」

 モザイクとか掛かって無いだろうな?

 大体タイトルの『鹿島雄大の苦悩』って何だよ?本当に恋愛物かよ?

「駄目かな?」

 半ば諦めている感じの朋美。んな顔されちゃ、嫌って言えないだろが。

「午後ならいいけど…」

 午前中は春日さんとお勉強なので、それは譲れない。

 春日さんは午後からバイトなので、お勉強は常に午前中なのだ。

 バイトしているのを知らない振りしているけどさ。

「そ、そっか!!うん!!それで大丈夫だよ!!えっと…じゃ、どうしようか…」

「映画館の前で待ち合わせでいいだろ?午前中は用事があるし、俺もその方がいい」

「そ、そっか!!うん!!解った!!じゃ、一時とかは?」

「一時でいいよ。ヒロにもそう伝えてくれ」

 汗だくな俺はシャワーを浴びたい。

 終わったら朝飯。

 終わったら学校。

 俺からヒロに連絡する暇なんか無い。寧ろ皆無と言って良い。

「解った!!じゃ、一時ね!!ばいばい!!」

 手を振って笑いながら駆け出す朋美に、俺も手を振って返す。

 ヒステリーが無ければ可愛い儘なんだけどなぁ…

 惜しいなぁ…

 今は終わった初恋を思い出し、俺は家の中に入る。

 好きだったが、それは過去の思い出で、今後誰にも口に出して言う事も無い思い出だ。

 

 学校。いつもの勉強。春日さんと二人きりの個人授業。

 と言っても、問題集を解き、解らん所を一方的に教えて貰っているだけだが。

「……緒方君、段々と学力上がってきているね…問題集、もう一段レベル上げる?」

「え?これが普通の問題集じゃないの?」

 コックリと頷き、自分の持っている問題集を俺に渡す。

「………まず、ページ数が俺の問題集の三冊分あるんだけど…」

「……緒方君のは基礎だから…」

 基礎?基礎で夏休み補習で潰れるかどうかの瀬戸際だったのか!?

「……大丈夫だよ…参考書読みながらでも…基礎しっかりできたとは言えないけど、応用は利く筈だよ…?」

「え?それって、俺はまだ基本から抜け出して無いの?」

 ちょっと考えてコックリ頷く春日さん。

「……もうちょっと基本頑張ってから次に行くよ…」

「……そう。それもいいかもね。それに、今日はもう時間も無いし…」

 言われてスマホを開くと、既に11時を回っていた。

 あと小一時間…

 俺は基礎にヒーヒー言いながら、問題集を解いた。


 待ち合わせは一時。学校へ行っていたので、一応制服だ。

 着替えに戻っている暇も無いし、この儘電車に乗って映画館へ向かう事にした。

 映画館は駅五つ先。あの春日さんのバイト先のファミレスや、図書館などがある町だ。

 目的駅に到着すると同時に飛び降り、走った。マジギリギリだからだ。

 と、その時、急いでいる俺に声を掛けてくる、空気を読まない奴がいた。

「緒方じゃねぇか」

 焦りながら振り向く。

「なんだ、木村かよ」

 そいつは私服の木村だった。見るからにヤンキーみたいな派手なワイシャツだ。ボタンなんか全然閉めてねーし。

「急いでいるようだが、どっか行くのか?」

「どっか行かなきゃ来ねーだろ。映画館だよ」

 あー、時間無ぇってのに、もう!!

 焦っている俺だが、その前に麻美が姿を現した。

――隆、木村君に頼んでおいたら?

 何をだ?この状況で嫌いな糞に何を頼むっつーんだ?

 首を捻っていると―

――映画の後、ファミレスに行くかも知れないよ?そうしたら、安田と出会うかも

 ……そう言えば、過去に安田見て理性が吹っ飛んだ事があったな…しかし、何を頼めば…

「映画か。どうでもいいが、西高の奴に手ぇ出すなよ。まぁ、俺の仲間にはお前と出会ったら俺の連れだっつっとけば、少なくとも出会い頭にぶっ飛ばされる事は無いとは言っといたが」

「仮に、仮にだが、西高生とやり合いそうになったらどうすりゃいいんだよ?」

「そうだな…今日はこの町に居るから、電話くれりゃ、収めに行ってやってもいいぜ。それまでお前が耐えられんならな」

 おお!!何か棚ぼた的展開!!

 要するに安田と出会ったら木村に電話すりゃ…

 意味あるのかそれ?安田見かけたらぶち砕くだろ俺は。

「何を考えてんだか知らねぇが、お前急いでんじゃねぇのかよ?」

 言われて我に返る。

 う!時間がヤバい!!

「やべぇ、間に合うか微妙だ!じゃな木村!!」

 取り敢えず安田の事は置いといて、今は間に合うかどうかが心配だ。

 一応挨拶をして木村に背を向け、駆け出す。

 木村は「おう」とか言ってた…ような気がした。

 映画館前に正に滑り込み状態で到着。

「お、やっと来たー!!」と朋美の声が聞こえ、そこに最後の力を振り絞って駆ける。

 顔を上げる体力も失い、肩で息をしながら手を上げた。

「わ、悪ぃ…間に合ったか?」

「まだ余裕あったけど、タイミング的にはギリかな?」

 良かった、間に合ったか。

 漸く顔を上げる事ができて前を向くと、朋美がご機嫌な顔でニコニコし、その隣でヒロがコーヒー牛乳をストローで吸っていて、更にその横に里中さん事さとちゃんが何やら不安そうにもじもじしていた。

 つか、さとちゃん、そんなキャラじゃない事は知ってんだから。

 まぁ、相手は知らないから仕方無いが。

「おー末期頭。制服って事はまた図書室か?」

「お前は塾通いなのにクラス平均だけどな」

 馬鹿が馬鹿を馬鹿にし合っている、やるせない状態だった。

「んで、こっちが私の友達の里中さん。通称さとちゃん。可愛いだろー?」

「ん、宜しくさとちゃん」

 軽く挨拶をした。にも関わらず、ヒロも朋美も里中さんも硬直していた。

「え?何何?どうしたみんな?」

「隆…お前…」

「さとちゃんって…」

「え?さとちゃん、通称里中さんだろ?」

 暫しの沈黙の後、どっと湧き上がる笑い声。

 俺は何が何だか解らずじまいで、ただキョドっていた。

「はははははは!!隆!!逆!!逆だから!!」

 朋美が逆逆と笑う。

「は?何が逆だよ?」

「はははははは!!通称と名字!!はははは!!」

「はははは!!いやー!!どんなボケかましてんだお前!!いやー!!はははは!!」

「ぷっ…!!くくっ…!!み、みんな、悪いよ…くくくっ!!緒方君意外性あるね!!」

 何か知らんがウケた。身体を張ったボケが報われたと言っていい。

「まぁいーじゃねぇかよ。ほら朋美、チケットくれ」

「ははははははー!!いやー笑った!!うん!!じゃ、入ろ?」

 ご機嫌MAXな朋美は、さとちゃんと一緒に先に入った。

「天然ってすげぇな隆」

「……お前、俺のポップコーン代払えこの野郎!!」

「笑わせて貰った礼に、ポップコーンくらい奢ってやりたいわ」

 ふざけやがってヒロ。ポップコーンだけじゃなく、コーラも奢って貰うからな!!

 俺は憤りながらヒロの背中を押して映画館に入った。

 当然のように、ポップコーンとコーラのお金を、ヒロに支払わせた。

 最後まで抵抗していたが、無理やり押し切って(要するに注文してお金はこいつがと指差したのだ)とっとと館内に入る。

「くそっ!!ラージサイズ頼みやがって!!」

「安心しろ。お前にも半分やるから」

 とか言ったが、席順が俺、朋美、里中さん、ヒロだったので、ヒロに半分やる事は不可能になった。

 代わりに朋美が半分食いやがった。

 そしてこの映画は恋愛物の筈だが、99パーセントコメディだった。

 はっきり言って恋愛要素がまるで無かった。

 何この鹿島って主人公は?

 ナンパ失敗して友達に責任なすりつけるわ、売春してお金踏み倒されるわ、格好付けてダダ滑りするわ…

 彼女欲しいんじゃなくて性欲の捌け口が欲しいんじゃ…

 つか、未成年観ていい代物じゃねーよコレ。かなり爆笑したけど。


 映画終了。終わって館内から出る。

「凄かったな鹿島雄大!!」

 腹筋を完全破壊されたヒロが、思い出し笑いをしてしゃがみ込む。

「凄かった…どこが恋愛物かさっぱり解らないけど…」

「何か半分以上実話みたいよ?」

「あれが本当にあった出来事とか…色々終わっているだろ…」

 とか、感想を言い合った。

 少しして、朋美が意を決したように、コホンと咳払いをする。

「えーっと…笑いすぎで喉渇いちゃった…なぁ?」

 何故かピーンと反応するヒロと里中さん。

「そうだな。どこか寄って行こうぜ隆」

「俺は構わないけど…」

「この町にコスプレ喫茶みたいなお店、あるらしいんだけど、少し興味あるかな?」

 里中さんならあのメイド服は似合いそうだ。

 しかし、興味あるのか。前回来た時に引いていたような気がしたが。

「んじゃそこでお茶しよっか。いいよね隆?」

 朋美がじりっと顔を近付ける。おっぱい当たりそうで当たらない。

 なかなかいい物を持っているとは思うが、槙原さんの爆乳にはやはり及ばないか。

「いいよ。じゃ、行くか」

 春日さんのコスも見れるし、俺としては断る理由は無い。

 そんな訳で、俺達はあの味が普通なファミレスに向かった。


「うわぁ~………」

 店に入っての朋美の開口一番がこれだった。

「な、何か凄いねぇ…」

 里中さんも若干怖じ気づいていた。

「別に制服だけだよ。接客は普通、味も普通」

 言った俺に朋美が怖い目を向ける。

「隆、ここに来た時あるの?」

「ああ。俺がドリンクチたまたまゲットして隆を誘ったんだ」

 まぁ、概ねその通り。故に普通に頷く。

「そっか…隆が一人でこんな店来れる訳無いしね…」

 納得した様子の朋美だが、一人で何度も来た事あるっつーの。まぁ、『今』じゃないけどな。

「と、とにかく座ろうよ朋美ちゃん」

「うん。そうだね」

 里中さんが朋美を引っ張って窓際の席に着く。それに俺達も続いた。

「ちっと腹減ったな…軽くつまめるモンでも…」

 ヒロがメニューをパラパラ捲り、隣の里中さんが覗き込む。

 そう。何故かこのテーブルでも俺の隣は朋美だった。

 確かに『里中さんがヒロに気がある』と言うコンセプトから席順はこうなるだろうが、そもそもこのコンセプト自体が意味不明なのだ。

「隆は何にする?」

 必要以上にくっついてメニューを広げる朋美。

 いや、まぁ、うん。こいつ可愛いから満更でも無い。

「そうだな…ヒロ、つまめるモンて何頼むんだ?」

「フライドポテトくらいしか無い」

 そりゃそうだ。ならばだ。

「それ進化させて、フィッシュアンドチップスといこうぜ」

 そう言って白身魚のフライを指差した。

 意外だったが、それに里中さんが食い付く。

「緒方君、イギリス料理知っているの!?」

「知っているってか…イギリス料理はコレとローストビーフしか知らない…」

「なんだ…でも普通はそうだよね。イギリス料理はマズいとよく言われるけど、それは味が薄いからなんだよね」

 ……聞いていないが、何故かベラベラ語り出す里中さん。

「でもね、味が薄いのはね、自分で調味料やソースをお好みで付け足して、自分好みの味にできるからって配慮なんだよね」

「は、はぁ……」

 困惑している俺に、朋美がそっと耳打ちをする。

「…さとちゃんは料理が趣味でさ…でも、作るのが趣味って事じゃなく、調べるのが趣味でさ…」

 ああ…それも『料理が趣味』と言える…のか?

 兎にも角にも、里中さんことさとちゃんは、朋美に止められるまで、うんちくを延々と語った…

「隆と俺が白身魚のフライとフライドポテトで、女子が…」

「抹茶ケーキと小倉アイスのセット」

「私は白玉あんみつ生クリーム添え」

 何故女子は体重を気にしながらも、ハイカロリーな物を欲するのだろうか。

 そこには俺達男子には永遠に解らない何かがあるのかも知れない。

 取り敢えず店員さんを呼び鈴で呼ぶ。

「お待たせしまし…た…」

 営業スマイルが一気に消えたコスプレ店員さん。それは黒いゴスロリチックなコスプレ店員さん。春日さんだった。

 目を丸くし、ぱちくりとしていたが、それも一瞬、営業スマイルに戻る。

 まぁ、ここら辺は接客業。当然だ。お金貰っている訳だし。

「白身魚のフライと…」

 ヒロがテキパキ注文し、春日さんが営業スマイルで復唱する。

「ご注文は以上ですか?」

 一瞬俺に視線を向けるが、営業スマイルは崩さない。プロだ。

「ドリンクバーはあちらになります。少々お待ち下さい」

 ぺこりと頭を下げ、顔を上げる時再び俺に視線を向けた。

 そして営業スマイルを崩さずに、厨房の方へ向かった。

「おい隆、今の子、すげー可愛くねぇ?」

「お前設定崩壊しているぞ…」

 小声で窘めるが、それは朋美や里中さんにも聞こえたようで、一瞬キョトンとしていたが、直ぐにギョッに変わる。

「え!?隆、もしかして気付いてた!?」

 朋美の問いに頷く俺。

「……そう言えば…私が大沢と仲良くなりたいって設定で呼び出したんだったよね…」

 里中さんの問いにも頷く。

「お前すげぇ自然に接していたから忘れてた!!迂闊だったわ!!」

「いや、まぁな」

 まさか最初から知っていたとは言えない。そこは言葉を濁して回避した。

「……はぁ…取り敢えず飲み物持ってくる…」

 落胆しながらも取り乱していない様子の朋美は、里中さんと共にドリンクバーに向かった。つまりテーブルには俺とヒロのみである。

「……いつから気付いていた?」

「いや、まぁな」

「……怒らねぇのか?」

「いや?何で?」

「騙して連れ出したからだ」

「丁度映画も観たい気分だったし、ポップコーンも奢って貰ったし、寧ろ感謝するけど」

 要するに、この意味の解らない茶番に付き合った俺の代償は無い。電車代くらいしかお金使って無いし。

 ドリンクを取りに行っている朋美と里中さんをしきりに気にしながら、小声でヒロが言った。

「お前、この猿芝居の意味、解ってねぇだろ?」

「全く意味不明だ」

「やっぱそうかよ。ところでお前、中学時代、結構人気あったの知ってた?」

 もう何度も聞いたが、『知っている』と答えたら俺が何か嫌味な奴っぽい感じがして、そうだったのか?と、大袈裟に驚いた振りをした。

「……何か嘘臭いリアクションだな…まぁいいか。しかしお前の周りには女っ気が無い」

「目つきが怖くて近付き難かったんじゃねーの?」

 この返答も何度も繰り返した。若干違いはあるが、ズレはそんなに無い筈だ。

「……何か余裕を感じるが、まぁいいか。しかしそんなお前に中学時代から近くに居る女子が存在する筈だ」

「居ねーよそんな女子。麻美は…」

 此処に居るとは言えない。流石に。

「……死んじゃったし…」

 改めて口に出すと、凄い重い言葉だ。

 直ぐ傍に居るのに、居ない。そして居てはいけない。

 俺の為に死んだ。俺の為に繰り返した。

 だから俺が麻美の為に、全て終わらせなければならない。

 解ってはいるが、少し寂しくなる。色々と。

「……その女子の事は又聞きてしか知らないけど…そうじゃなくて」

 失言したとばかりに、ヒロの口が重くなる。

 話題を変えて、ヒロの負担を軽減させなければ…

「つっても朋美とは中学時代、少し疎遠になっていたからなぁ。ほら、俺苛められていたじゃん」

「……悪かった…………」

 おおい、話題変えたら、ヒロが申し訳無さ全開になっちゃったんだけど!!

「いやいや、おかげで糞をぶち砕く力を得たから。つか、お前が謝る事無いだろ?」

「……いや、色々思い出させちまったから……」

「そんな事より、この猿芝居の意味教えろ」

「ん?ああ…須藤が仕組んだんだ。お前と出掛けたいから、って」

「あー。いつだったか、あいつと口論してギクシャクしていたからなぁ。あいつも修復したいとか思っていたんだ。別に俺は気にしてね-んだけど…」

「まぁ、概ねその通りで猿芝居仕掛けたんだけど…」

 なんか釈然としていないヒロ。

 俺の余裕が不思議なのだろう。

 しかし、そこで妙な事に気付いてしまった。

 過去に何度も朋美プロデュースの猿芝居を観て来たけど、その時は別にギクシャクしていなかった。

 つまり芝居を仕掛ける必要は無い。寧ろ、今回の口論の仲直り的で遊びに誘ったと言う理屈が一番しっくり来る。

 何だ?これ?

 真夏なのに、空調の効いた室内を差し引いても、背筋が薄ら寒くなった。

「お前鳥肌立ってんじゃねぇか?エアコン効き過ぎか?」

 ヒロの肉眼でもはっきり解る程粟立った腕…

 その腕を擦りながら、作り笑いをした。

「水の氷が冷たかったからかな?」

「そういや水しか飲んでねぇな。俺達も飲み物取って来ようぜ」

 そう言って席を立つヒロ。丁度朋美と里中さんが飲み物を持って帰って来たタイミングとぶつかる。

「アンタら、まだテーブルで喋ってたの?男同士のお喋り、キモいわ…」

 朋美が嫌そうに俺達、特に俺を見て言った。

「俺としては、俺達の分も持って来てくれる事に期待してたんだが」

 軽口で返す。

 だが、ぶっちゃけると、朋美にそんな気遣いを期待していなかったりする。

 飲み物を持って席に着く。俺は無難にアイスコーヒー。ヒロは冷たい烏龍茶だ。

「なんだ隆、揚げ物頼んだのにコーヒーかよ?」

「コーヒーが好きなんだよ」

 確かにコーヒーは好きだが、飲み放題のアイスコーヒーに其処までの期待はしていない。

 飲めればいいのだ。揚げ物のお供だろうと何だろうと。

「つか、遅くない?」

 朋美が軽く苛立ってテーブルを指でコンコン叩き出した。

「他のお客さん多いからじゃない?何と言うか、その手の方々が…」

 里中さんのフォローは的確だった。この店はコスプレ店員目当ての方々が多いのだ。

「別にそんなに待ってねーだろ」

 いちいち短気なんだよなぁ、とか思いながら厨房付近に目を向けると、春日さんがガラの悪い連中に囲まれているのが目に入った。

 安田か。今回もか。

 ゆっくり立ち上がり、そちらの方に歩く俺。

 呆気に取られていたヒロが我に返って俺の腕を取った。

「隆、やめろ!!」

 ヒロのアクションで朋美も立ち上がる。

「隆、落ち着いて!!ここはお店の中じゃん!!」

 落ち着いている。今回は。

 今までは頭に血が上り、理性を保てなかったが、流石に何回も経験していると、ちゃんと思考が回るものだ。

  春日さんの後ろに着く。

 手には俺達が注文した、白身魚のフライと、フライドポテトがお盆に乗せてある。

 料理をひっくり返さないように庇いながら、安田達糞共に言っていた。

「他のお客様のご迷惑になるので…お止め下さい…」

 しかし糞は春日さんの腕を取り、行かせないようにして口説いている。

「だからぁ、バイト終わったらつき合えって言っているだけだろ?アンタが頷いてくれりゃ、それで済む話だよ!!」

「何ならお友達も一緒にどうだ?」

 助けに入った他の店員さんにまでちょっかいをかける始末だ。

 俺は春日さんの腰を抱く。

 かなり驚き、振り向いた春日さん。

「……緒方君…」

 つい素が出て口が滑ったようで、慌てて顔を伏せる。

 俺は構わずに春日さんを自分の懐に寄せた。

 その拍子で糞が取った腕が外れた。

 ザワめく糞共を無視し、春日さんが大事に守っていたお盆を取る。そして慌てて 駆け付けたヒロにお盆を渡した。

「おっっとおお!?いきなり渡すな!!つか隆!!ちょっと待てって!!」

 ヒロの言葉を無視し、財布からお金を…

 細かいのが無い!!五千円札しか!!

 それを名残惜しくも引き抜き、助けに入った店員さんに渡した。


 呆気に取られる店員さんを余所に、糞共、特に安田に向かって睨み付ける。

 安田は最初、俺を睨み付けていたが、俺だと解ると蒼白になった。

「お!!緒方!?」

 安田が発した俺の苗字に、糞共が一斉にざわめく。

「緒方って…あの緒方?」

「そういやこいつの制服白浜のだ…」

「ち、ちょ…やべぇぞオイ…」

 流石に逃げ出す奴は居なかったが、あからさまに俺から距離を取った。

「あ、あの…お客様…」

 不安な表情の春日さんの頭をポムポム叩き、軽く笑う。

 そして春日さんを解放してから、ゆっくりと安田に近寄った。

 汗をダラダラと流しながら下がる安田。

「あ、お会計お願いします。後ろのウニみたいな頭にレシート渡しといて下さい」

 店員さんに一言告げて、安田の腕を掴んだ。

「久し振りだな安田先輩…ここじゃ何だから、外に出ようか…勿論お仲間も一緒にな…」

 返事を待たずにそのまま引っ張って外に出た。

「おい隆!!」

 おっと、忘れてたぜ。

 ドアが閉じるその間、一度振り返ってヒロに言う。

「悪いけどお釣り貰っておいて」

 五千円は大金だ。ヒロと朋美と里中さんにご馳走した形となったが、多分食わないで出てくるんだろうなぁ。

 扉が閉じたと同時に、俺は向き直して安田を引っ張って路地裏に向かった。

 

 人気の無い路地裏。

 ブロック塀に安田を叩き付けながら押さえ込む俺。

 周りには安田の糞仲間が六人。そいつ等を一通り一瞥し、言った。

「仲間がやられそうだっつうのに、誰も助けに入らないんだな?」

 嫌味にも反応せず、糞仲間は口を真一文字にし、ただ遠巻きに睨み付けているだけだった。

 糞つまんねぇ。いっそ全員で襲って来たら、大義名分でぶち砕けるってもんだけど。

「お、緒方、あれはちょっとふざけていただけで…」

 塀に蹴りを叩き付け、続けようとした言葉を遮る。

「黙れよ安田…そうか、お前達はおふざけで一人の下級生を袋にして、女子を殺せる人種だったな?」

 俯いて黙る安田。ぶち砕きたい衝動に駆られたが、我慢だ。

「安田、単刀直入に聞く。中学時代、俺をいたぶる命令を出した奴は誰だ?」

 びくんと身体が硬直した安田。それに構わず、畳み掛けるように言う。

「教えてくれたら三発で終わらせてやる。黙るなら気を失わない程度にいたぶり続ける」

 泣きそうな顔を俺に向けた安田。どう転んでもぶち砕かれるのに不満があるようだ。

「早く口割れよ。ヒロがここを嗅ぎ付けて駆けつけるだろうが」

 ヒロならば俺のやり過ぎを止めるに決まっている。その前に引き出せる情報は引き出さないとな。

 途端に安田が周りをキョロキョロ見渡す。

「……大沢は追って来て無いのか?」

「あ?まさかお前、俺がお前等糞共をぶち砕く為にヒロを必要としてるとか思ってんのか?」

 俺はお前等と違って、徒党を組んで弱い者をいたぶりはしない。

 ムカついたので腹に軽く一発当てた。

「ぐ…!!」

「おい…簡単に膝曲げんなよ安田…あの時の俺は倒れる事も許されなかったぜ?お前等が倒れそうな俺を起こしていたぶってくれたからな?」

 再び振り上げた拳。慌てて安田が首を横に振った。

「違う!!ちょっと待て!!大沢にくっついていた女が一緒に来ていないか確かめたかっただけだ!!」

「それは…女子の前で無様に転がりたく無いって意味か?」

「違う!!取り敢えず落ち着け…お前の質問に答えるから…」

 お?なんかいい感じになってきたな?

 一歩引いて顎をしゃくり、安田を促した。

「……お前がどこまで知ったのか解らないが、お前を襲うよう指示を出したのは…」

「緒方、何をしてやがる?」

 言いかけた安田が口を噤む。

 振り返ると、木村が若干怒っている感じで俺を睨んでいた。

「木村かよ。邪魔すんな」

「そうもいかねぇよ。そいつは兎も角、俺の仲間が救援メールを寄越したからな」

 周りを見ると、一番チビな糞が嫌らしい笑みを浮かべていた。成程、あいつが木村を呼んだのか。

「あの糞チビは見逃してやる。とっとと連れて失せろ」

「馬鹿言うな。ここで退いたら格好つかねぇだろ。それに言っただろ?キレそうになったら止めてやるってな」

 それは…ウチのモンに手ぇ出すな、の件だったか?

「じゃあ安田は置いてけ。他の糞共は見逃してやる」

「それこそ馬鹿言うなだ。お前はやり過ぎる」

 此処で漸く木村の真意に気が付いた。

 俺のやり過ぎを心配して止めに来たのか。

 我慢出来なくなったら呼べとは、そういう意味も含まれていたのか。

 知り合って間もない、大っ嫌いな糞なれど、木村は若干違うカテゴリーに位置する。

 寧ろ信用している。

 楠木さんの件では色々世話にもなった。

 借りもある。

 だが…

「こいつは逃がせないんだよ。聞きたい事があるんだ」

 こっちも退けない。自分から関わりたく無いが、偶然出会ったなら話は別だ。

「大沢にも連絡しといた。直ぐに此処に駆けつけるぞ?」

 ヒロが来るんなら俺は完璧止められるなぁ…せっかくのチャンスが…

「お、大沢が来るのか!?」

 いきなり安田がビビり出した。

「頼む緒方!!ここは見逃してくれ!!もちろん、質問には後で答える!!俺を一刻も早く逃がしてくれ!!」

 懇願し、俺にしがみついて来た。

 この豹変振りに逆に怯んだ。

「ヒロはお前と関係無いだろう?何をそんなに怯えてんだ?」

「だから!!それも後で答えるから!!頼むよ緒方!!木村!!お前からも頼んでくれ!!」

 この怯えように木村も驚いていたが、好機と睨んだか、条件を提示した。

「安田、俺を通して緒方の質問に答えると誓えるか?約束を反古したら、お前西高の俺の仲間全員に狙われる羽目になるぜ?」

「勿論だ!!だから頼む!!」

 遂には土下座までした安田。

 木村と俺は顔を突き合わせ、首を捻り合ってから言った。

「そう言う訳だ。緒方、どうだ?」

「……まぁ、お前が窓口になるっつーなら…」

 怪訝に思いながらも、木村が間に入るなら信用はできる。

 俺は自分の気が変わらない内に、安田から離れて、あのファミレスの道なりに戻った。

 戻る途中、息を切らせたヒロと朋美にかち合う。

「た、隆、やっちまったのか?」

「いや、木村が出てきてさぁ、ぶち砕く前に何か治まった」

 途端に安堵するヒロ。

「お前やり過ぎて殺しそうだからよぉ…普通にぶん殴るならいいんだけど…」

「ヒロと二人でぶち砕いた時も結構あったような…」

 前にも言ったが、ヒロは相当強い。

 そして喧嘩っ早い。

 俺を止めようとして結果一緒に暴れる事もしばしば。いや、ほとんどだ。

「いや、俺が見ているなら、手遅れになる前に止められるからな」

「それについては否定しないけど…」

 ほとんど、いや、全てヒロが身体を張って俺のやり過ぎを止めてくれる。

 俺は殺す気で拳を振るっているんだけどな。

「た、隆、安田を目の前にして殴らなかったっての!?」

 朋美が正に吃驚仰天と目を見開く。

「あ、うん。まぁ、それも間に木村が入ってくれたおかげでもあるけど。つか里中さん帰っちゃったか。何か悪い事したなぁ…」

 意味不な芝居で、わざわざ呼び出された里中さんに申し訳無い気持ちでいっぱいだ。

 俺は芝居の役者じゃねーから関係無いけど、やっぱりそう思ってしまう。

「そんな事より、その木村って奴が何をした訳!?隆が安田を見て何もしないなんて有り得ないでしょ!?」

 俺の腕を掴んで振り回す朋美。

 ムッとして腕を振り解く。

「そんな事って、お前等が訳解んねぇ事情で里中さんを巻き込んだんだろ。何て言い草だ?」

「いいから答えなさい!!何故素直に退いた訳!?」

 鬼気迫ると言った表情が似合う。

 それ程の形相に、俺は怯んだ。

「俺が聞きたい事を木村を通して話すっつうから」

「聞きたい事?」

「中学時代、俺をいたぶるように命令した奴が居るらしい。そいつの名前とか動機とかを…おぉ…?」

 マジで怖くて二、三歩退く。

 朋美の瞳が血走って、正に憤怒の顔だったからだ。

 あまりの迫力に、咄嗟に話題を変える。

「そ、そういやヒロ、お前が追ってくるから逃がしてくれって言っていたが、お前安田に何かした?」

「俺が?別に何もしてねぇけど…つか、お前よか俺にビビるって、どんな理由だよ?」

 本当に心当たりが無いようで、しきりに首を捻っている。

「私ちょっと用事思い出した!!ごめん、先帰るね!!」

 いきなり朋美が走り出した。

 本当にいきなりだったので、驚きを超え、放心状態で、俺達は朋美の後ろ姿を、ただ見送った。

 訳が解らずも、取り敢えず道を戻る。

 前回は里中さんを帰してからヒロが追って来たが、今回は声も掛けずに飛び出したようだし。

 因みに朋美が一番焦っていたらしい。

「お、そうだ隆。お釣り」

 さっきの五千円で支払ったお釣りを俺に渡す。

「ああ、サンキュー。でも勿体無かったな」

「まぁな。仕方無ぇけど。お前の金だからどうでもいい感がかなりあるけど」

 俺の事情で飛び出した訳だから、それくらいはなぁ…

 そんな話をしながらファミレスに戻ると、店先に里中さんが立っていた。

 帰っていなかったんだ?あれを見ても?

 俺達に気付いて、駆け寄って来る里中さん。

「急にみんな飛び出して行ったから吃驚したよ!!」

 ヒロ達も何も言わずに焦って出て来たらしいから、里中さんへのフォローはしていない。それなのに待っていてくれたとか、何て優しいんだ!!

「いや、ごめん。俺のせいで…」

 素直に謝ると、里中さんが首を横に振った。

「ウェイトレスさんを西高のゲス達から守ったんでしょ?どんな理由か知らないけど、端から見ればそうなるよ。だから謝らなくていいよ」

 笑みまで浮かべて言ってくれた。

 いや、この子ホントにいい子だわ。

「しかし、話には聞いていたけど、緒方君凄いね。全く迷いが無かったよ。普通なら、あんな連中に関わりたく無いから、無視するのに」

 感心してくれたが、決して誉められた行為じゃないのは事実。逆に居心地が悪くなる。

「里中、それは?」

 ヒロが里中さんが持っていた紙袋を指差して訊ねた。

「あ、これ?白身魚のフライとフライドポテトだよ。勿体無いから包んで貰っちゃった」

 はにかむ里中さん。しっかりしているなぁ。

「へぇ、あの店、持ち帰り可能だったのか」

「可能かどうかは解らないけど、言ったら快く応じてくれたよ。黒いゴスロリの子とか、紫の子とか」

 春日さんと槙原さんの友達か。

 手渡されたヒロが何故か袋を開いて二度見した。

「どうしたヒロ?」

「いや…なんか量増えているんだけど…」

 ヒロの肩越しで覗き込むと、確かにフライドポテトが二倍増している。

 他にも、頼んだ覚えの無いサラダ的な奴も、一パック入っていた。

「ああ、西高のゲス達って、あの店で結構迷惑掛けているみたいで、追い払った緒方君をリスペクトしたみたい」

「え?オマケしてくれた訳?」

「益々ファンが増えたようですよ!!あ~あ、こりゃ朋美キッツキツになるなぁ~」

 悪戯な笑みを俺に向ける里中さん。

 益々ファン増えたとか、元々ファン居なかったんだが…何故朋美がキツくなるのかも意味不だし。

 

 その日はそこで解散した。

 何故か里中さんとケー番、アドレス交換して。

 彼氏居る筈だからメールとかは控えよう。

 そう思っていたが、夜寝そべっていた時に里中さんの方からメールが来た。

 芝居してごめんと、俺は人気あるから気をつけてって内容だった。

 人気なんか無いと返したら…

 Sub【いやいや】

   【そんな事は無いよ。絶対に。だけど、私も大沢君に乗るよ。緒方君がいいなら誰でもいいと思うよ。もう変な事しないから安心して(ハァト)】

 なんでハァト?

 いや、そんな事よりも、変な事とは、あの猿芝居の事だろう。

 それ以外にも色々気になる事があるが…

 さっきから麻美を呼んでいるが、出て来ない。

 相談したいんだが、今日は無理か。

 そう言えば、ちょくちょく出て来ないのもヒントだと言っていたな…

 何故今日は出て来ない?前に出て来なかった理由も関係あるのか?

 多分ある筈だ。

 全く脈略の無い場面でも出てくる麻美の何かしらのアクションだろう。

「だが解らん!!俺が馬鹿なのは知ってんだろ!!もっとヒントくれよ!!」

 言葉に出して聞いてみる。

 しかし麻美は現れない。

 代わりに…

――……まだ時間、あるから…

 麻美がそう、耳元で囁いた…


 それから三日。

 いつも通りにロードワークをして、いつも通りに飯を食い、いつも通りに勉強に励んで…

 そうこうしている内に、もう夜だった。

「もう夜じゃねーかよ畜生!!」

 俺はこの三日間待っていた連絡が来なくで少し苛ついていた。即ち木村からの連絡である。

 安田の窓口を木村に託したが、三日無視は酷いだろ!!

 その時丁度苛立ちを忘れるような呼び出し音。即ち木村からの電話だ。

「おい、少し遅いんじゃねーのか!!」

 もしもしも言わずにキレる俺。

『……逃げやがった…』

「は?」

『安田の野郎、引っ越ししたんだよ!!いきなりで安田の連れも驚いていたぜ!!』

 引っ越した?え?なにそれ?

 一応恐る恐る聞いてみる。

「安田の仲間も何も知らないっての?仲間に一言も告げずに消えたっての?」

『ああ。確認の為に家に行ったら空き家だった。ご丁寧に携帯も解約済みだ』

 それはつまり…もう連絡取れないって事?

 呆然としている俺に木村が言った。

『俺も野郎の転移先は調べてみるが…何か…きな臭ぇ…勘だがな。』

「きな臭い…」

『引っ越すなら事前に連れには言っとく筈だ。だが連れは知らなかった。つまり、いきなり意図的に家族ごと引っ越しせざるを得ない状況になった。もしくはだった』

「何そのミステリーな展開!?どこのサスペンス劇場!?」

『兎に角、お前は動くな。俺が調べてやるから。解ったな?』

「う、うん…」

 そこで電話は終わった。

 俺はいきなりの展開に、ただ頭が着いて行かなかった…

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