傘と雪

雪が降る。この街にも降り積もる。雪は嫌いだ。冷たい。そしてなぜか悲しくなる。降らなくていい。

「雪は嫌い?」

彼女が言う。

「嫌いだ」

僕は答える。

一緒の部活に所属する彼女はどうなんだろうか?その質問はくだらないので聞くのをやめた。12月の寒さは一向に増して行く。そして彼女は同じ傘の下、僕に近づく。彼女は僕のことが彼女は好きなのだろうか?僕にはわからない。ただ、一緒にいる時間が長いのは確かだ。彼女は雪降る夜空を眺めている。左手で持つ傘の下、なぜか感じた。彼女には雪が似合う。その肌は雪に似ている。

「なあ、クリスマスって予定あるの?」

ふいに聞いた。

「バイトかな?」

「俺も」

嘘をついた。

「クリぼっち寂し!」

「うるさい」

しばらくの沈黙が続く。雪の音が周りの音と自分の鼓動を消してくれる気がする。

「雪は嫌い?」

僕は聞く。

「好きだよ?」

彼女は答える。

「でも二番目」

「じゃあ一番は?」

彼女は口を開く。

「一番好きなのと一番嫌いなのは一緒」

なんだそれ。聴きたかったけれど、彼女が話そうとしたので飲み込んだ。

「それは私の好きな雪に当たらないようにこの傘を持ってくれている人」

彼女は僕の左手を見た。

この日、僕は雪ともう一つのものに感謝した。

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