第2夜「ベニクラゲ」
コンコン
「セバスチャンです…失礼致します」
ガチャリッ
「お嬢様、かように遅くまで… 今夜も眠れないのでございますか?
目の下の隈の存在感たるや、まるでパリコレみたいではありませんか。ランウェイをお歩きになられれば肉襦袢ドレスと相まっていっそ前衛的かもしれませんね。ブラボーでございます。
え? 夜が静かすぎていつか死ぬ事を考え始めてしまった? 永遠の命が欲しい?
…おお、お嬢様。そのビジュアルで永遠に生きたいなどというご強靭メンタル。大変ご立派でございます。
…永遠の命 …そうですね。お嬢様は「ベニクラゲ」なる生き物をご存知でしょうか? ええ、クラゲの一種です。中でもベニクラゲ、幼生から成体になると再び幼生に己を変化させるサイクルを繰り返し永遠の時を生きるのだそうですよ。自然界が生んだなんとも壮大な話ではございませんか。
え? どうせならヴァンパイアとか? ロマンティックな話を聞きたかった?
…ヴァンパイアは作り話ではございませんか。そんなものより、貴方様の枕元にたたれているご婦人の方がよっぽど長く…… 失礼。なんでもございません。
え? 怖くていっそう眠れなくなった?
…わがまななお嬢様だ。そのように死を恐れずとも。寝ている時は仮死状態というではありませんか。さあ、夢の中のエリュシオンで、咲き乱れる花々の中、金髪碧眼のグッドルッキングガイ達に囲まれてみてはいかがです? 神殿の柱から、ほらっ、お嬢様を呼んでいる声がしますよ。おーい、おーい… …
…おやおや。安らかに寝ておいでだ。やはりヴァンパイアよりクラゲの話で正解です。このセバスチャン、クラゲがご親族と告白されても決して驚きはいたしませんよ。それでは、お嬢様。お休みなさいませ。ーーよい夢を。」
カチリッ
コツコツコツ…
〜就寝〜
(むしろこんな賑やかな部屋でよく考え事ができるものだ)
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