執事が眠れないお嬢様を適当に寝かしつける話

あにと

第1夜「杞憂」

コンコン

「セバスチャンです…失礼致します」

ガチャリッ


「お嬢様、まだ起きてらしたのですか?

そろそろお休みになりませんと…。お若くもなく、高級化粧品を試し尽くして顔面偏差値がその程度ではもう、お肌のゴールデンタイムにすがるくらいしかできませんのに…

え? ぬいぐるみを? この歳で抱いて寝ているのが恥ずかしくて、考えはじめたら眠れなくなった?

…お気になさいますな。誰しも癒しを求めもの。酒であれ人形であれ形は人それぞれ。夜中に盗んだバイクで走りまわられるより治安の良い分、万々歳にございます。

え? 彼氏にバレたら恥ずかしい?

…おお、お嬢様! イマジナリー ボーイフレンドとはおいたわしや! 失礼ながら「杞憂」という言葉をご存知で? 良い機会にございます。その平たいクマに読み聞かせるつもりで故事成語でもお調べなさい。貴方様なら前書きで入眠可能ですよ。…いえいえ、スマホで検索はなりません。ブルーライトでいっそう眠れなくなりますからね。お調べになりたいなら紙の本がおすすめでございます。

え? 面倒臭いからお休みになる? 

……結構でございます。さすが私の自慢のお嬢様。その単純さ、売りに出してもおかしくないほどでございます。さあ、枕元のランプを消しますよ。

それでは、お嬢様。お休みなさいませ。ーーよい夢を。」



カチリッ

コツコツコツ…



〜就寝〜

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