なんで金髪なのかな

 薄暗い監禁部屋のなか、望月もちづきわたるは洗面所の明かりをつけて利用し、開け放った扉の前で雑誌を見ていた。

 茉結華まゆかに監禁されてから何日過ぎたのか。記憶上、少なくとも一週間以上は経過しているはずである。

 自分が発見されるのも時間の問題か、それとも、死ぬのが先か――


 数日前に雑誌を寄越してきた茉結華は現在、部屋の真ん中であぐらをかいている。

 夕方、折り畳み式テーブルと勉強道具を持って部屋にやってきた茉結華は、『来週期末テストだから今のうちに出さなきゃやばい』と言って課題に向かいはじめた。はや一時間が過ぎた今もなお、必死にペンを走らせている。


(自分の部屋でやればいいのに)


 何度目かの感想を抱いて渉がそちらを見ると、視線か気配でも察知したのか、茉結華は机を見たまま間延びした。


「ねえー、読み終わったのならこっち来てよ。もう何度も読んだんでしょお」


 渉が持っているのは『オカルト雑誌ムイチ』――こんな状況でなければ無縁の類の雑誌であった。表紙には、呪い人復活、などと胡散臭い見出しが書かれている。

 だが掲載されている内容は事細かく、ほとんど事実に近いことばかりだった。

 少女Aの失踪、行方を晦ました少年B、学校に送られてきた謎の腕――少年Bというのは渉のことで、少女Aというのは、ちーちゃんこと松葉まつば千里ちさと。そして腕というのは、以前茉結華が自慢気に話していた、朝霧の……。


 加工がされているとはいえ、自宅の写真が載っているのはショックだった。もちろん憤りも覚えたが、自分の身が外で話題になっていることに安堵したのもまた事実。

 世間は今、藤ヶ咲ふじがさき北高校にまつわるオカルト――呪い人のことで持ちきりのようである。


 記者の名前は載っていないが、内容が茉結華の話とほぼ一致しているため、渉はそいつもグルではないかと考えている。直接関わっているのか、それとも間接的な情報源か、答えによってはまた別の問題が発生してしまうが。

 茉結華とその父親、そしてこの雑誌記者と、PCオタクのルイス、トワという女。すでに五人以上が茉結華側の人間。憶測ではあるが、知れば知るほど敵の数は増えていく一方だ。こんな雑誌をわざわざ寄越してきたのも、茉結華の挑発か――


(負けてたまるかよ。絶対に逃げ出してやる)


 渉はオカルト雑誌をバサリと閉じた。その音に茉結華は顔を上げて「お、肩揉んでくれるの?」と、呑気なことを言う。


「この手で揉めるかよ」

「痛み止めは効いてるんでしょ? もうちょっと寄ってくれてもいいじゃん」


 先日受けた刺し傷は順調に癒えていた。身体のあちこちが軋むのは相変わらずだが、大人しくしていれば茉結華が暴力を振るうことはないし、食事だって与えられる。

 今までは渉が表立ったアクションを起こして、茉結華がそれに応じてきた。お仕置きという名の暴力、首絞め、食事の制限。しかしこちらが何もしなければ、茉結華のほうもノーリアクションなのだ。治療に励む現在、拍子抜けするほど平穏な時が流れている。

 だが渉は水面下で動いている。チャンスというものは、いついかなるときに舞い降りるかわからない。環境に支配されるのは不本意だが、能ある鷹は爪を隠すもの。茉結華がと言うのであれば、今はそれを甘んじて受け入れよう。


 渉は茉結華の隣に雑誌を滑らせて、足を引きずって移動する。片付けているのは現代文のようだ。


「……暗くて見づらい」

「私はよく見えるよ」

「本当に?」

「うん」


 言うまでもなく、この窓のない和室の照明は常にオフ。開け放った洗面所の明かりで、多少なりとも改善されているとは言え、渉は目を凝らしてようやく読み取れる程度だというのに。


(こいつ、コンタクトだよな……目悪いんじゃないのか?)


 渉は、何の支障もなく問題を解く茉結華の横顔を覗いた。しかしレンズの有無は目視できず、茉結華の口元がニヤリと弧を描くだけであった。


「あんまり見ないでよ、恥ずかしい」

「……もしかして、視力悪いのも嘘?」

「いいや、悪いよ? いつもコンタクトレンズだし。渉くんは目いいよね、羨ましい」


 そう口では言うが、特に羨ましがっているふうには見えない。

 渉は机に目を落とした。外から持ち込まれた物には、できるだけ目を通しておきたい。


(課題の山と……ペンケースか。何か盗めれば武器になるかもしれない)


 何か、というのは文房具のこと。かなり物騒な発想だが、シャーペンでもボールペンでも、使い道によっては凶器となる。


(さすがにハサミは入ってないか……)


 茉結華の使っているペンケースは小さめで、必要最低限の物しか入らなそうである。女子なら持っていそうな小型のハサミもなさそうだ。あれば手足に巻かれた結束バンドともおさらばできるのだが。


(まあ、あったところで、盗れる自信はないんだけど…………)


 渉は眼球を動かし、視界の内の茉結華の手を二度見した。

 ……止まっている。茉結華の手が、いつの間にやらぴたりと静止している。

 渉は落ち着いて瞬きをし、眼球を潤わせてから茉結華の顔を見た。


「…………」


 茉結華は、コンタクトレンズを探っていた渉に等しく、その顔をガン見していた。笑みもなく無表情で、大きな瞳をカッと見開いて。ただ静かに、渉の顔を射抜いていた。

 渉はゴクリと生唾を飲み込む手前、「お前、左利きだったっけ」と、咄嗟の思いつきでお茶を濁す。茉結華はその顔にゆっくりと笑みを戻しながら「ううん」と緩やかに否定した。


「縦書きだから左で書いてる」


 そう言ってペンを弾いて右手に移し、指を使ってグルングルンと回転させる。再度左手に跳ね戻ったペンを見て、渉は「ああ、そう……」と力なく呟いた。

 今まで意識していなかったが、茉結華は両手共に器用である。ナイフの扱いにしろ格闘技にしろ、首を絞める際にしても、利き手に頼ることはない。むしろどちらが利き手なのだろう、その概念が破綻しているような気さえする。


 響弥きょうやは右利きのはずだが、常に右手を使うようにしていたのかもしれない。中学の頃からほとんど癖で行なっていた特技のペン回しも、幼少期に仕込まれた産物なのだろうか――

 親友の偽りのひとつを噛みしめて、渉はせめて勉強だけは見てやるかと、すでに記入された解答に目を向けた。


「問三と四、間違ってないか?」

「うん、それわざと」

「……」


 渉は絶句した。赤点回避の達人であり、成績は中の中である神永かみなが響弥――それを演じて造り上げるために、偽りの答で塗り潰すというのか。

 泰然自若に空欄を埋めていくその素顔は、響弥でもなく茉結華でもなく、また新たに生まれた――自分の知らない人のようだった。


「……お前はお前だろ。抑える必要、何もないのに」

「何それ、説得? 自首させてやるって、まだ思ってるの?」

「……思ってるよ」

「ふーん。できるといいね、説得」


 小学生にも理解できるような空々しい言い方をして、渉が「馬鹿にすんなよ、馬鹿」と言うと、茉結華はまたクスクスと笑うのだった。


「私は今のままでも好きだよ。スリルがあって、悪くない」


 言いながら、茉結華はペンケースの口をすっと閉じる。その言動は数分前の渉の思考がバレバレであったことを物語っているのだが、当の本人は頭のなかで霞んでいく親友の姿に肩を落としていた。


「俺は早く出たい。……早く外に出たいよ」


 渉は取り繕うこともなく本心を口にする。ふーん、と相槌を打った茉結華は、「最近いい子だから、渉くんも同じ気持ちかと思ってたのに」と。こちらもまるで本心のようだった。


「一緒なわけないだろ。毎日腹の底を探り合ってるくせに……」

「じゃあ好感度は? 私に対する好感度。ハート五つ中、いくつ?」


 そんなもの考えたことがない、と渉が突っぱねる前に、茉結華は右手でペンを握ってページの隅にハートマークを五つ書いた。


「いくつ?」

「いや、ゼロだけど」

「えっ、じゃあ十個なら?」

「……ゼロ」

「二十個なら!?」

「ゼロだよ……」

「じゃあ百個!」

「ゼロだよ。もう書くなよ、気持ち悪い」


 参考書のページが歪なハートマークで埋まる前に制した。教師に指摘されれば『寝ぼけてたんですかね?』なんて――響弥は言うのだろう。茉結華は消すこともなく、ぶーっと唇を尖らせている。


「また茉結華って呼んでほしいなー」

「調子に乗るな」


 ぴしゃりと言ってやると、再び茉結華の顔が憎たらしく綻んだ。元気を取り戻したみたいに姿勢を直して、『いつも自分の代わりに学校へ行っている彼』を想定して問題を解いていく――


(そもそも好感度って何だよ……そんなの聞いて何になるんだ。仮に百だと言えば、こいつは喜ぶのか……?)


 そんな馬鹿な思考をして、いいや、答は否だ、と茉結華の天の邪鬼を読み取る。


(俺が応えないと知ってて訊いてきたんだ。ゼロでも百でも、やっぱり意味のない回答だ)


 気持ちを十分割にしても百分割にしても、ひとつだって色が付くことはない。塗ってしまえばそれは確かな形となり、甘えとなる。それこそストックホルム症候群だ――


(俺の場合……最初から百なのかな)


 そこまで考えて、ぶるぶると頭を振って打ち止める。――最初からだなんて、何を馬鹿なことを。

 茉結華はそんな渉の心を読むように、口元に微笑を浮かべて試すように言った。


「もし出られたらさ、渉くんはどうするのかなーって、少し気になる」

「どうするって、そんなの――」


 未来のことを考えて、渉は言葉を切った。ここを出られたら、『神永響弥は人殺しです』と言うのだろうか。この監禁期間中、一度も会っていない彼のことを指して、口にできるのだろうか。

 外で会ったとき、『響弥』はどんな反応をするのだろう。何ひとつ変わらぬ様子で、会いたかったと抱き締めるのだろうか。そんなことをされたら、自分は――、いや。

 渉は静かに目を伏せた。


「洗いざらい、言うに決まってるだろ」


 それ以外に答えはない。

『親友が殺人犯なんて思いたくないよね。それとももう親友じゃないかな』

 そう言っていた茉結華の言葉が蘇る。茉結華は自分は親友ではないと言っているのだ、つまりこれは、響弥を指して言ったこと。

 自分でもわかっているはずなのだ。『彼ら』は異常に見えて正常なのだから、響弥は自覚を持っている。しかし、外の神永響弥は何も知らない――ふりをし続けるのだろう。それでもいい。


「それでお前を止められるのなら、俺は正直に話す」

「逮捕されたら二度と会えないかもしれないのに」


 それでも話すの? と茉結華は問う。


「……ああ、話すよ。朝霧とちーちゃんのことも……ルイスたちのことも全部話す」


 本当はこんなタラレバ論はしたくないのだけれど、この際だからはっきり言っておいた。口にすることで確かなものとなる、決意表明だ。


「じゃあ絶対逃さないようにしないとね」


 茉結華はペンを置き、参考書をパタリと閉じた。いつの間にか課題をすべて終わらせたようである。

 閉じた参考書を別の山に乗せて、茉結華は渉のほうに身体を向けた。獲物を狙う肉食動物のように目を爛々とさせて。


「渉くんを吸いたい」

「――は?」

「だーかーらー、吸いたいのぉーっ!」


 うわっ、と声を上げる間もなく飛び掛かり、渉は茉結華に抱き着かれる。包み込むように両手を広げて背中に回し、首元に顔をうずめる。


「すーっ……はあ……、すーっはあっ……」

「キッ……、は、離れろ」


 渉は首の可動範囲の限界まで顔を背けた。うなじから全身にかけて鳥肌が総立ちする。


「んぅ、好感度上がったぁ?」

「……マイナス五百加算された」

「上がってないじゃん!」


 茉結華は肩口で喚き散らす。


「あの、どうでもいいから、そのスハスハするのやめて……」

「抵抗してくれないの?」

「そうさせたくて、お前がそういうことをしてくるのはもうわかったから、逆にしてやらない」


 冷静な返しをしてやると、茉結華は「じゃあ私も」と同意を示して肩に顎を乗せた。顔は鬱陶しいほど近いが、目に見えない何かを吸うのはやめたらしい。


「そういえばさー、りんちゃんがいじめられてるって話、したっけ?」


 離れてから話してくれるか? と思いながら、渉は「聞いてない」とだけ返した。


「昨日校舎裏で見たときは女子六人に土下座させられてて、一昨日は追いかけ回されてたし……今日なんてね、頭からずぶ濡れになってたんだよ。酷くない? 女の子ってこわーい」


 そう言って抱き締める力を強くする。冷房のおかげで暑くはないが、首や耳元にかかる生温い吐息だけが気になった。おそらくわざと当てている。


「お前の仕業じゃないのか」

「ちょっ、そんなわけないでしょ!」


 ちょっとばかり訝しんでやれば、ぐいと姿勢が反れたため、渉はその離れた顔に目を据えた。茉結華はムスッと膨れていたが、すぐにまたゆっくりと体重を掛ける。


「でもいじめなんてさー、許せないよねぇ。渉くんもそう思うでしょ?」

「……うーん」


 いじめと一口に言われても、聞いただけでは判断しきれない。同意を求められても困るというか、言ったところで渉がその場にいるわけじゃないのだ。駆けつけてやることもできない。


「酷いって言うのなら、お前が助けてやればいいだろ」

「え――いいの? 私が助けても?」


 渉の返事が意外だったのか、茉結華は素早く身体を起こして目を丸くする。


「だって……男とか女とか関係なく、傍観者だっていじめてる奴と変わらないだろ」


 こんなところで愚痴を言うくらいなら、まずは自分で行動して、その元凶を止めてやればいい。渉は自分だったらそうするであろうことを口にした。


「言質取ったからね」

「何のだよ」

!」


 茉結華は天真爛漫に笑みを咲かせた。


(まあ……そのとき間に入るのは、こいつではなく、響弥なんだろうけど)


 凛のためになるのなら、その助けになるのなら、任せてしまってもいいのかもしれない――と、渉は鈍りきった頭で思考した。茉結華は『どうすればいい?』ではなく、『どう思う?』と、ただ同意を求めていただけなのに――渉は、凛を守ることを勧めてしまった。


「渉くんだーいすき!」


 そう言ったが最後、茉結華は強く渉を引き寄せて、首筋にふにゃりと湿った感触を押し当てる。そのわざとらしく過剰な言動に、渉は胸の奥に釣り針が引っかかるのを感じた。

 茉結華は渉に嫌がられる前にさっさとその身体を離れる。


「思い立ったらすぐ行動しないとね。もう約束の時間だから行ってくるよ。――その前に」

「?」


 それからの茉結華の動きは機敏だった。渉を背後から引きずって、手錠のぶら下がった柱の前まで移動させると、左手首に輪っかを掛けて親指の結束バンドを切り取る。


「これでよし。すぐ戻るから、ちょっとだけ待っててね」


 そう言って茉結華は片付けた荷物を持って、慌ただしく部屋を出ていった。


(何なんだ……?)


 ――約束の時間?

 渉は、場所の移動ができなくなった代わりに自由となった右手首をぐるぐる回し、傍らのオカルト雑誌を指先でめくった。凛がいじめられていると茉結華は言っていたが、原因があるとすれば、この呪い人の噂のせいだろう。


 茉結華の手によって造られる『呪い』は、凛の周りの人間をターゲットにする。千里、朝霧、そして渉の失踪。ほかにも――共にクラス委員を務めている萩野はぎの拓哉たくやや、一緒に遊園地へ行った転校生のたちばな芽亜凛めあり、学校関係者に留まらないのであれば、百井ももい家に被害が行っている可能性もある。

 そして必然的に凛が責められる。『お前が呪い人なんだ。お前が原因なんだ』と。

 反吐が出るような話だ。いじめの根本的な原因は、間違いなく茉結華にあるだろうに。オカルトなんてない。すべてこいつが悪いんだと言ってやりたいけれど――


(凛……何もできなくてごめん。どうか負けないでくれ……)


 渉は茉結華の出ていった引き戸を一瞥して、人の気配がないことを確認すると、呼吸を整えて、手錠の掛かった左手を思い切り引いた。


「いっ――! てぇ……」


 あまりの激痛に、声が出た。決して細くない自分の手首を確認すると、分厚い金属の食い込みによって、じんわりと赤い痕を作っていた。

 今のうちにと、力づくにでも引き千切ろうとしたが、手錠は片側も含めてかなり頑丈である。柱から飛び出ている金具もびくともしない。


「くそっ……」


 右手は自由のため、足の結束バンドを処理するのは可能だろう。だがやったところで片腕は捕らえられたままである。まずは手錠を優先してどうにかするしかないが、その前に手首のほうが先にやられてしまいそうである。血流が止まるどころの騒ぎではない。


(鍵はあいつが持ってるだろうし、外されるときは両手を縛ってからだろうな……)


 ――それにしても。

 なぜ手錠を、片側だけに掛けたのだろう?

 部屋にぶら下がっていることは確認済みであったが、使用されたのはこれがはじめてである。茉結華の行動の不可解さは今にはじまったことではないが、この場合、両手や片手などという問題ではないのかもしれない。


 単純に、茉結華が制限したかったのは移動範囲――それが何に繋がるのかピンとこないが、このままじゃトイレにも行けない。


 考えている間にも引き戸が開く音がして、渉は自然と顔を向けた。茉結華が部屋を出てまだ十分も経っていない。いったい外で何をしていたのか、約束とは何だったのか、尋ねたいことは山ほどあるぞと待ち構える。


 しかし、現れたのは白い髪ではなかった。

 明るい金髪のボブヘア。

 響いた声も、茉結華のものではない。


「……修?」


 芯があって明瞭で、監禁状態ではじめて聞いた、女の声だった。

「だ、誰……?」と渉が蚊の鳴くような声で困惑した矢先のこと。少女の後ろから、今度は正真正銘白い髪の茉結華が現れた。


「お待たせお待たせ」


 その手には墨色の革手袋がされている。

 背後からした茉結華の声に、少女は驚き振り向いた。


「……修は? 修はどこ?」

「何のこと?」

「修に会わせてくれるって――」

「言ってないよ。居場所を知っている、とは書いたけど」

「だ、騙したの!?」

「まずはその変装を解いてからにしない?」


 茉結華は大きく一歩踏み込むと、少女が反応を示すよりも速く、その金髪を鷲掴みにした。彼女よりも渉のほうが先に声を上げそうになるが、次に映った驚くべき光景に息を呑む。


「目立たない格好で来てって言ったのに、なんで金髪なのかな。小坂こさかさん?」


 引き剥がされた金髪のボブヘアの下に現れたのは、それより遥かに長い――ピンク色の髪だった。

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