第2話-6

 もう二度と戻らない時間に生きるユキの後ろ姿を、美紀は追った。

 

 ちょっとした好奇心とでもいうのだろう。ユキの『死』を確認したかった。それと同時に、胸のずっと奥から深い暗闇のような掴み所のないもどかしさが溢れだしているのを感じていた。

 

 だが、どうしようもない気持ちは一瞬で消え去った。

 美紀のその脚は止まる。


 駅のホーム、誰も友人がいないと思っていたユキは、誰か見知らぬ男性と話していた。………それは、寝耳に水でも垂らすような――衝撃を抑えずことができずに、美紀は胸を抑えた。


 その痛みがなにかわからずに、美紀は悶えるしかない。

 ただ、胸騒ぎがした。嫌な予感と原因不明な痛みに耐えながら、あの自殺の真実を目の当たりにことになる。


 

 鉄塊がレールの上を走行する轟音―――ガラスを爪を立てて鳴らしたような低重音が致死量の破壊力を保持したまま、美紀の横を通り過ぎようとした瞬間だった。


 男は、簡単にユキの身体を路上へと突き出した。

 それと共に、一瞬ドアでも叩いた乾いた音―――同じく、美紀の神経は途絶えた。

 その途絶えの瞬間、男は美紀を眺めて………その時、美紀は知った。

 

 笑っていた男、紛れもない中学時代の美紀自身だった。


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