晩餐会

いいのかな…

そう思いながら私は引っ張られるままに騎士様についていく



私には汚勇者様を待つ使命があるのですが…


あの勇者様は約束の時間に来なかったし…


凄そうな騎士様に手を引かれてるし、きっと大丈夫



大丈夫だよね?



うん、大丈夫



大丈夫だと思いたい



装飾された大きな赤い扉の前に立つと騎士様は口を開けた




「さて…と

俺も初めてだが、この時間にこの場所の扉を開けるように王様に言われた

すまん、さっきは晩餐会なんていったけど、本当か嘘か俺も分からない

アリアにも申し訳ないが、契約上、俺の連れとして責任は持てない

王宮で勇者が殺される話なんて噂はよく聞くからな…

けどさ、夢にみた勇者に俺はなれたんだ

アリアや今まで一緒に戦った皆には申し訳ないが、俺は…

勇者として夢をみたい」


騎士様がニッコリ笑う


汚い世界でしか過ごしていなかった私は、それが凄く眩しかった



言葉の意味は理解できないし、初対面の騎士様だけど…



本当のアリアさんには申し訳ないけど



こんな純粋な笑顔を見て私は断れない




私の人生は、ここで終わっても良いかな…

って思った



「はい、理解しました。

私には約束もありましたが、ついて来てしまいましたし…

貴方様の笑顔には逆らえません

自由にしてください…」




そう言ってしまった



騎士様は、私の言葉を聞くと赤い扉の取手を手で握り、ゆっくりと扉を開けた



開いた先の正面に先程の王様がいた



王様までの距離にずらりとメイドと騎士が並ぶ



目を合わせると王様は口を開けた



「よぉ、カイン。久しぶりだな」



続けて騎士様が言う

「ちょっ、てめぇ…少し前に会ったばかりじゃないか!!」



「いやいや、あれだけ汚い姿していたら、いくらカインでもカインに見えないし」



「ちょっ…おま…

いやいや、王様!それは酷いですよ。

俺は『やはり、掲示板から募った者では無理っぽいから、お前倒せよ。

あ、適当に衛兵回すからさー頑張って』

っての言う王様の命令で討伐を手紙で伝えといて、それは酷すぎるだろっ」




「いやいや、カイン…

だってさぁ、汚かったし、臭いし、別人みたいやし…

あれをワシにカインと理解させるなよ、

あれは無理!!」




「ちょっ…てめ…」



「…って冗談や再開の会話はそこまでにしようぜ、王様

すまない…正直俺の実力不足だった

貴方に送って貰った衛兵を全て死なせてしまった…

本当にすまない…」 



「ふむ…

カインよ、全てを己のせいにするのは反省ではなく、罪でもなく己の傲慢ではないのか?

確かに、我が国の選りすぐりの衛兵を向かわせたが…彼達はその指名に喜び君の下に向かった。憧れの君に…ね

彼達は君と一緒に戦う事を望み、一緒に闘い、全ての力を持って次に繋げた…

私の知る彼達は、無駄死にするような衛兵ではなかったと思うのだが…」




「…あぁ!!彼達は…まさしく騎士だった。

俺から見て俺以上に勇者だったさ…


次の一撃を繋げるために

その命で…その一撃を繋げるために…一匹を倒す為に…ね

自分の命を懸けて次の一撃を目指す

それが王族や貴族の闘い方なのか? 

昨日の晩に一緒に呑み、英志を養い…親友となり、その親友…いや失礼、戦友が翌日に死ぬ

戦場において当たり前かもしれないが…



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汚勇者様と私 小岩井 @Koiwai01

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