第8話

母の声だ。


「どうしたの? 大丈夫? 一体何があったの?」


私は泣き出した。


「よしよし、もう大丈夫よ。それで、一体何があったの?」


「みゆきちゃんが、みゆきちゃんが」


「みゆきちゃんがどうかしたの?」


「みゆきちゃんが男の人に襲われて」


母の顔色が変わった。


何も言わずに病室を出て行った。


私は一人残された。


何も考えられなかった。


そのままぼうとしていた。


時間の感覚もおかしくなっている。


私は窓の外を見た。


見ているうちに赤かった空が、黒くなってゆく。


すると誰かが病室に入って来た。


警察官だった。


その後ろに母がいた。警察官が言った。


「おじょうちゃん。みゆきちゃんが、どうしたの?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る