第6話

私は空からみゆきに視線を移した。


――!


私は凍りついた。


みゆきの背後に背の高い黒いスーツの男が立っていたからだ。


顔もはっきりと見た。日本人離れした彫りの深い顔。


想像をはるかに超えるほどの、不自然に青白い顔。


そして大きく見開き血走った赤い目が、みゆきを捕らえていた。


「えっ、どうしたの?」


私の変化に気付いたみゆきが、私の視線を追って振り返った。


「きゃっ!」


みゆきが小さく鋭い悲鳴を上げた。


私はそれを聞くと、立ち上がり走り出した。



走った。


走って走って走った。


みゆきがどうなったのか、心配ではあった。


しかし私は立ち止まることも振り返ることもなく、ただ走り続けた。



どのくらい走ったのだろう。


私の身体は、足は、とっくに悲鳴を上げていた。


普段なら何の躊躇もなく、その場にへたり込んでいたことだろう。

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