第5話

「うん」


「うん」


けんや君はそのまま山を降りて行った。


けんや君の背中を見送った後、みゆきは何事もなかったかのように再び歩き始めた。


私は言った。


「待って、ちょっと休まない」


「いいけど。できたらさっさと探したいんだけど」


「いいじゃないの。あの男がいたとしたら、どこかにいなくなったりしないわよ。慌てる必要なんてないんだから。いいでしょ。休みましょうよ」


「まあ、それもそうね」


みゆきはその場に腰を下ろし、バックから紙パックのジュースを取り出して飲み始めた。


私もそれに習う。


私は空を見上げた。


とは言っても、高い木々に覆い尽くされて、空はほとんど見えなかった。


時間の感覚がおかしくなるほどに、周りは薄暗かった。


それに冬までまだまだだと言うのに、寒い。


真冬のような寒さだ。それも急に寒くなった。


それまでも平地に比べて涼しいとは思っていたのだが、そんなものではない。


明らかに急激に温度が下がっているのだ。


「なにこれ。急に寒くなったわ」


私が思っていたことを、みゆきが口にした。

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