第4話

それが近づいてくるのがわかった。


みゆきは動かなかった。


私も動かなかった。


その音がさらに近づいて来た時、その音の主が姿を現した。


それはシルエットしか見えなかったが、間違いなく人間だ。


その体は小さかった。


体つきといい、どうやら子供のようだ。


張り詰めていた身の硬直が、一気に溶けた。


影は私たちの前に立ち、言った。


「みゆきちゃんとひとみちゃんじゃないか」


まだシルエットのままでその姿はよく見えなかったが、その声は同じクラスのけんや君のものだった。


みゆきが言った。


「けんや君、こんな所でなにしてるの?」


「僕はただぶらぶらしてるだけだよ。ついでにあの男を見つけてやろうとも思っているけどね」


「けんや君は、あの男がいると思ってるの?」


「それはわからないよ。探してみていなかったら、いない。いたら、いる。それだけだと思って、朝からこのあたりをうろうろしてるんだ」


「そう」


「そっちは何してんの?」


「ただ歩いているだけよ。暇つぶしにね」


「そうなんだ……。それじゃあもう行くよ。またね」

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