第4話
それが近づいてくるのがわかった。
みゆきは動かなかった。
私も動かなかった。
その音がさらに近づいて来た時、その音の主が姿を現した。
それはシルエットしか見えなかったが、間違いなく人間だ。
その体は小さかった。
体つきといい、どうやら子供のようだ。
張り詰めていた身の硬直が、一気に溶けた。
影は私たちの前に立ち、言った。
「みゆきちゃんとひとみちゃんじゃないか」
まだシルエットのままでその姿はよく見えなかったが、その声は同じクラスのけんや君のものだった。
みゆきが言った。
「けんや君、こんな所でなにしてるの?」
「僕はただぶらぶらしてるだけだよ。ついでにあの男を見つけてやろうとも思っているけどね」
「けんや君は、あの男がいると思ってるの?」
「それはわからないよ。探してみていなかったら、いない。いたら、いる。それだけだと思って、朝からこのあたりをうろうろしてるんだ」
「そう」
「そっちは何してんの?」
「ただ歩いているだけよ。暇つぶしにね」
「そうなんだ……。それじゃあもう行くよ。またね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます