第2話

「ひとみちゃん、行きましょう」


日曜日の朝、みゆきが私を誘いに来た。


こうなったら、もう行くしかない。


私はおとなしく従った。



山に入ること自体は初めてではない。


この山は男の子が中心ではあるが、みんなの遊び場となっている。


そうだとしたら不思議なことがある。


スーツの男を見たと言う子は、みんな女の子なのだ。


女の子で山に入る子はそれほど多くはないと言うのに。


私も三年以上この小学校に通っているが、山に分け入るのはたしか今回で三度目だ。


だからこの山は、それほど詳しくはない。


目の前をみゆきが歩いている。


歩きにくい山の中を、まるで自分の庭のようにすたすたと。


周りは木々が生い茂り、昼前だというのに薄暗いこの森を。


私はついて行くのがやっとだ。


――どこに行くのかしら?


なにかあてでも、あるのだろうか。


みゆきは黒いスーツの人なんていないと言った。


いる、と言うのなら何処かにあてがある可能性もある。

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