○ UFO

 ふおんふおんふおんふおん。

 落ちてきたというより降りてきたといった方が正しい。

「アダムスキー型ね」と、歴史研究家が言った。この人は本当に何でもよく知っている。

「あれに追われているんですか?」と蓮太郎がキドさんに尋ねた。名前がわかったのは無論、手配書の為である。

「いや、あれは関係ないと思うんだが……とにかく、上がらせてもらっていいかい?」

「どうぞ」

「すまない」

 キドさんは家に駆け込み、ばたんとドアを閉めた。

 UFO下部のハッチが開いて、中から世界中の土産物がごろごろと転がり出てきた。それから、黄色い小柄な宇宙人が何人か出てきて、激しく罵り合いながら土産物を回収し始めた。

 宇宙語だが恐らく、

「だから詰め込み過ぎだって言っただろ!」

「だってここでしか買えないんだもん!」

 などと言っているのだろう。

 それから、一人の宇宙人が蓮太郎たちに向かって言った。「#$%&?」

 これはわからない。

「わかりますか?」と、蓮太郎は歴史研究家に訊いてみた。

「知りたいわ」と歴史研究家は答えた。

 凄い。この人にとって、わからないことは全て知りたいことなのである。

「#$%&?」と言いながら、宇宙人はブランド物のバッグからブランド物の財布を取り出した。

 歴史研究家が言った。「何かお土産を売ってくれないか、と言っているんじゃないかしら」

 蓮太郎もそう思っていたところだった。

「えっと、こんなものでよければ」と、蓮太郎はいつしか拾った変な仏像を取って差し出した。

 宇宙人は仏像を受け取ると、興味深そうに眺めた。子供たちと思われる宇宙人が集まってきた。仏像はその中の一人の手に渡った。子供たちはそれを奪い合いながらUFOの中に引っ込んでいった。

「+*¥?」

「いくら? と言っているようね」

 蓮太郎は身振りで「いらない」と言った。

 しかし宇宙人は紙幣を一枚、強引に押し付けてきた。

 見たこともない紙幣だった。これでもかというぐらい透けている。まるでフグ刺しである。

 宇宙人は手(に相当すると思われる触手)を振りながらハッチを閉めた。

 彼らは今までずっとこの宇宙ドル札(仮称)で買い物をしてきたのだろうか。大したものだ……と思いながら、蓮太郎はUFOが動き出すのを眺めた。

 ふおんふおんふおん。

「重量オーバーじゃないかしら」と歴史研究家が言った。

 UFOは水面すれすれを飛んでいる。

「でも、きっとワープとかできるんでしょうね」と歴史研究家が言った。

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