第3話 ブルボン ~小さいおじさんシリーズ1

奴らは今日もまた、どうでもいいことで言い争っている。

俺の四畳半で。



「分からん奴だな貴様も」

「何を。先日は譲ったではないか。今回こそは譲れん」

「では今回も折衷案で、どうでしょうかねぇ」

白い頭巾を被った奴がのったりと羽扇を動かすと、他の2人が片膝立てて食いついてきた。

「この間はよくも騙したな!あれは断じて、折衷案ではない!!」

色白の、背の低い男が怒鳴ると、呼応するように端正な顔をした男が呟く。

「応、貴様の策略でまんまとホワイトロリータを食わされたわ」

怒りを押し殺すような低音の呟きは、更に続く。

「俺もどうかしていた。ホワイトロリータごときがバウムロールの代わりになるものか」

「何と、お口に合いませんでした、か」

白頭巾の男が、そわそわと他の2人を見比べた。

 …あれだ、一見反省しているように見えるが、その実、大して気にしていない。あわよくば今日もホワイトロリータ食わせてやろうって勢いはある。そんな強かさを感じる。


こいつらはいつも、突如現れる。


 水墨画に出てくる中国人のような格好をしたおじさんの3人組は、部屋の片隅にちんまりと車座を作り、いつも何か言い合いをしている。大きさは一寸…とまではいかないが、30センチに満たない。一時期、多くの芸能人が目撃して一斉を風靡した『小さいおじさん』、否、『小さいおじさん達』というべきか。

 プログラミングの仕事が繁忙期を迎え、殆ど寝ていなかった時期に現れたので、最初は俺がおかしくなったのかと思った。心療内科にも通った。

 しかし『小さいおじさんが見える』以外の幻覚が起きていないし、繁忙期を過ぎて充分寝ているのに現れる。なので心療内科は一旦ストップした。そして本当に、本っ当に信用できる、ていうかもう目の前でちんこぶらぶらさせても「ちんこしまえ」で済ますレベルの親友を呼び、こっそり確認してもらった。


「うわ、いるわ」


 奴の呟きを聞いた瞬間、堪らないほど『しんどさ』がどっと腹にきた。次の繁忙期はもう目の前だというのに、新種知的生命体発見クラスの大事件が明らかになれば、取材だの調査だのが殺到するのだ、この四畳半に。


うっわしんどい、たまらんほど面倒くさい。


 幸い、友人も見なかった振りをしてくれるというので、小さいおじさん達の処遇は現れるのと消えるのに任せることにした。今日も持ち帰った残業をこなしつつ、横目でおじさん達の様子を伺う。

「とにかく、この間ホワイトロリータを食ったのだから、今回はホワイトロリータ却下だ。文句がある奴いるか!?」

小さくて目付きの悪いやつが吼える。…こいつは3人の中では一番豪勢な衣装を着ている。一番身分は高いのだろう。白頭巾は軽く頭を垂れ、端正なやつは大きく頷き、白頭巾を睨めつける。豪勢が、厳かに呟いた。

「では余と貴様の一騎打ちといこうか」

「お待ちください、私も参加いたしますよ」

白頭巾が居住まいを正す。端正が片膝を立てて乗り出した。

「まだ云うか!ホワイトロリータはこの間」「ルマンドで、参加いたします」

ゆるり、と微笑む白頭巾。刹那、呆然とする2人。3秒後、思い出したように声を荒げた。

「おのれ、貴様は『あの頃』からちっとも変わっとらんな!!」

「全くだ…ポリシーを曲げてでも、損をおしてでもやりたい嫌がらせかソレが。卿は子供か」

端正は声に出したせいで色々思い出したらしく、指先でイライラと床机を叩き始めた。

「先ほど菓子棚を覗いたら、ルマンドが入荷されていましてね。ホワイトロリータはそろそろ品薄だし、宗旨替えもアリかな、と。なにか問題でも?…あぁ」

白頭巾はあくまでも、今思いついたかのように斜め上に視線を泳がせて目を見開く。

「私が参加すると、またお2人のお目当ての菓子を頂けない、ですものねぇ」


―――うわなにこいつ、嫌なやつ。


豪勢と端正が顔を真っ赤にして肩を震わせている。豪勢が食いしばった歯の端から押し出すように呟いた。

「…勝手に参加しろ。今日はコテンパンにしてやるからな」


 つまり奴らが何をしているのかというと、俺が戸棚に溜め込んでいるブルボン菓子の、どれを茶のアテにするかで揉めているのだ。実家から段ボールで大量に届くので、勝手に食ってくれても一向に構わないのだが、奴らはいちいち一つの菓子を三等分するのである。その度に揉めるのが面倒くさい。


 「今日こそは卿らにバウムロールの優位性を分からせてくれるわ」

今日は端正が口火を切った。いつもどおり、複合機からコピー用紙を一枚引き出し壁に張り付け、即席のホワイトボードを作る。他の2人はホワイトボードの端っこを適当に使う。3人の中で、端正がなにげに一番真面目な奴だ。


・しっとり感

・場所を選ばぬ手軽感

・応用力

・お年寄り 子供に優しい


 大きな字でそれだけ書くと、端正は他の2人に向き直った。

「どうだ、ルーベラ・ルマンド両者に対し、バウムロールはこれだけの優越性を有している!場所を選ばず、万人に受ける、ブルボンの旗手たる要件揃い踏みであろう」

「…応用力?」

白頭巾が首を傾げた。端正が話を続ける。

「包丁で輪切りにすればミニバウムクーヘンに、チョコペンやアラザンで飾ればイベント時のちょっとしたオリジナル菓子に変化して、女子供が大喜びだ」

端正がにやりと笑った。

「ルーベラやルマンドに、そんな柔軟性があろうか?」

「ぐぬぬ…」

豪勢が軽くたじろぐ。白頭巾は首を傾げたまま様子を伺っている。

「更にだ。バウムロールは卿らの推し菓子のように散らからない!特にルマンド!」

端正があざけるように顎を上げた。白頭巾は表情は変えずに視線だけ動かす。

「あやつは散らかるなんてレベルじゃない。買い物袋に芋や玉ねぎと共に入れ、ちょっとでも衝撃を与えると途端に木っ端微塵だ…云わば!散らかる宿命の菓子!!」

何か嫌なことでも思い出したのか、端正は眉間の間を押さえて肩を震わせた。

「俺はあの菓子を食す際はいつも、敷き紙を欠かせぬ…許せんのだ、あのとっ散らかりっぷりが許せんのだ!!」

端正大爆発。こいつは結構、神経質だ。そして軽くキレキャラでもある。ていうか何だ推し菓子って。変な造語出てきたぞ。

「ルーベラとて例外ではない!ルマンドよりは衝撃耐性は高いようだがやはり散らかる…そして!1包に2本も入っている!」

「あぁ、3本入っていれば切らずに配分できるものをなぁ」

「ちがーう!!多いんだよ2本は!!あれが茶菓子で出てきた日は、俺は腹いっぱいで気分が悪くなるのだ!!」

…まぁ、30センチだからな。俺の感覚で云えばクッキー一缶食わされるようなもんだろうか。…てことはこいつは、エリーゼもアウトか。難儀なおじさんだ。…豪勢は可々と笑った。

「なにを!旨いものたらふく食えて幸せ一杯じゃないか」

「色々雑なのだ卿は!そんな食生活をしていたから変な死に方をするのだ!!」

「貴様にだけは言われたくない!!」

なに、死んでいるのか!?霊の類か!?でも茶菓子は食ってるしなぁ…。なんかもう仕事が手につかない。

「死に様で云えば貴様…そいつに散々茶化されて怒りの余り傷が破れて憤死とか、うちの国でも評判の怪死案件だったわ」

豪勢に『そいつ』の辺りで指差された白頭巾は、あれ心外な、とか呟きながら口元を羽扇で隠した。

「何を!一時的にとはいえそいつと同じ職場で働かされた俺の重圧が卿に分かるか!?」

「そいつの口車にまんまと乗せられてデカい戦に首突っ込んだ貴様の自業自得であろう?」


―――えらい嫌われようだな、白頭巾。なんでこいつら、つるんでるんだろう。


「け…卿があんな微妙な時期にあんな詩を吟じて公表するのが悪いだろう」

「またそれか…余は銅雀台賦の東西に連なる二橋、と詠ったのだ!貴様と貴様のボスの嫁をかっさらうなんて云った覚えは毛頭ないわ」

豪勢は半ばうんざりしたような顔で、腰に提げた璧を弄り始めた。このやりとりは初めてではないらしい。白頭巾は涼しい顔で我関せずを決め込んでいる。…どうやらこいつが全ての元凶っぽいのだが。

「…茶菓子選びに関係のない御話が始まったことですし、茶を淹れますね、茶菓子はルマンドで」

「黙れ元凶!!!」「やかましいわ諸悪の根源!!!」

やっぱりか。

「諸悪の根源、ねぇ…うふふふ、本当に、本当に、あてこすりは無かった、と断言できるので?二橋、と二喬。出来すぎな気がしてしまうのは、私の心が穢れているから、ですかねぇ…うふふふ」

「こ、こらなぜ貴様はいちいち話をややこしく」

「おのれやはり妻を!!」

端正が腰に佩いた剣に手を伸ばす。白頭巾は羽扇の陰でにやりと口を歪めた。

「あ、コイツ今笑った」

豪勢が呟くと、端正が白頭巾をぎろりと睨んだ。…いちいち振り回されがちな気質というか、余裕がないというか。

「いちいち挑発に乗るな馬鹿馬鹿しい。それより湯が冷める、茶菓子の話に戻るぞ」

さすが豪勢、この中では一番大将の器だ。頑張れ豪勢、とっとと茶菓子を決めろ。

「先ほど貴様は…なんだ、デコレーションしてパーティだとか老人子供に優しいとか言っていたが」

一拍置いて、豪勢が声を張り上げた。


「貴様はこれから老人や女や子供を呼んでちょっとしたパーティをしたいのか!?」


「!?」

「今この菓子を食うのは我々だ。女でも子供でも老人でもない」

「うふふふ…それとも貴方はこの面子で『バウムロールを輪切りにしてアラザンでデコレーション☆』とかそういう乙女な展開を望んでいるのですか?」

白頭巾は羽扇の陰でくすりと笑った。

「……きも」

「貴っ様――!!」

またもや剣に手を伸ばす端正を、豪勢が羽交い絞めにする

「いちいち挑発に乗るなというのに!貴様も下らん挑発するな!!…つまり、我々は今『菓子としての優秀さ』ではなく『どの菓子を食いたい気分か』で話し合いをしているのだ。女子供への配慮やら応用力は蛇足だな」

「ぐぬぬ…しかし!俺はいつも床が散らかるのが不快で不快で!!」

「いいではないですか。次の日には何故か綺麗に片付いてますし…」

俺が毎回掃除してんだよ陰険白頭巾め。ちなみに毎回、豪勢の座っていた辺りがむかつく位豪快に散らかっている。

「扱い易さでバウムロールに一歩及ばぬのは認める。だが余はあくまで『旨さ』の点でルーベラを推す」

豪勢は胸を反らし、部屋の隅に放置してある菓子の缶を指差した。あれは確か、年末俺がビンゴで当てた…

「あれに入っていた菓子を覚えているか。…ヨックモック、というそうだ。素晴らしく旨かったな」

お前らか、妙に減りが早いと思ったら。

「ああ、旨かった。あれがあった頃は満場一致で茶菓子が決まったものよ」

端正も懐かしげに目を細めた。お前らどんだけ食ったんだよ。

「ルーベラは、あれに勝るとも劣らぬ食感と味とは思わんか!?旨い菓子ってのはな、こう、適度に油っぽく、いい香りがして、さっくさくしているものなのだ、バウムロールとかルマンドにはこの油っぽさが足りん!」

「勝るわけあるか――!!」

「ヨックモックに謝りなさい!!」

白頭巾が珍しく羽扇を震わせてムキになっている。

「な、2人して急にどうした」

「卿は本当にいちいち雑なのだ、このバカ舌が!そんなんだからウッカリ一家皆殺しとかしでかして、ツレにドン引き逃亡されるんだろうが!」

「とんでもない外道ですね、貴方は一生ルーベラ食ってなさい」

「同じとは云ってないだろ、似たようなかんじと云ったのだ!いちいち細かい奴らめ、そんなだからいまいちパッとしないうちに死ぬんだぞ」

僅かにでも大声を出したことを恥じたのか、白頭巾は羽扇の陰で小さく咳払いをした。

「…少し声を張ったら、喉が渇きましたね。茶を頂きましょうか…」

そう呟いて静かに立ち上がると、水が流れるが如く、するりと台所に向かって歩き出した…瞬間、端正がぐいと白頭巾の外套の裾を踏みつけた。

「――待て!卿、またドサクサに紛れて茶とルマンド持って来る気だな!」

「そこな頭巾を取り押さえろ!!」

もがく白頭巾を2人がかりで取り押さえ、無理矢理座らせる。…初犯じゃないのかよ、もう…

「本っ当…貴様なぁ…そういう、ドサクサに紛れてちゃっかり利権を得るみたいなの、もう止めようや」

息を切らせて白頭巾の肩を押さえつける豪勢。こいつはこいつで意外と苦労性のようだ。生前(?)もさぞかし、濃い部下に囲まれて色々頭を悩ませたのだろう。

「私は手段を選びません」

居住まいを正した白頭巾が、やおら羽扇を振り上げた。

「それが正義の為ならば!!」

「言い切るなぁ貴様は!!」

「強引にルマンド持ってくることの何処が正義か!!」


――なにやってんだ、大の大人が――


「貴方達は、何も知らないのです」

また羽扇の陰でひっそりと笑う。他の2人が肩を押さえたまま白頭巾を睨んだ。

「今度は何の策か?」

「容易にたばかれると思うなよ?生前は散々煮え湯を飲まされたからな、貴様には」

「世の流れに、ついて」

今度は羽扇をぴしゃりと膝に叩きつけ、声を張る。

「バームロールやルーベラは、既に流行りの本流に非ず!!」

「!?」

「この間、そこら辺に放置してあったスマホで調べてみたのですよ、ブルボン菓子の人気について」

この頭巾野郎、変な検索履歴があると思ったらそういうことかよ。我が物顔だなおい。

「人気一位はアルフォートとかいう見たことない菓子。そして二位は…ルマンド!!」

「卿はそういう機械操作ばかり習得が早いな…」

「ていうかアルフォートって何!?名前からして旨そうだな!」

他の2人が、明らかに揺らぎ始めた。特に豪勢は意外にミーハーなところがある。

「バームロールは十位以内に入ってはいるがルマンドには及ばず、ルーベラに至っては遥か圏外…」

再び羽扇を持ち上げて口元を隠す。そしてひっそりと呟いた。

「…そして、昨日入荷したルマンドは何と…キャラメル味、なのですよ」

「キャラメル味!?」

「何と!!…そういや、ルマンドってそもそも何味なんだ?」


――駄目だこりゃ。なんか腹立つくらい白頭巾のペースだ。


だが意外な事に、豪勢が首を振ってため息をついた。

「…いや待て、そういうコトならやはり駄目だルマンドは」

「……なんですと」

白頭巾の目が険しくなる。どうも、豪勢も単に対抗意識や意地悪で云っている訳ではなさそうだ。

「昨日入荷されたということは、そのルマンドはその…未開封、ということだろう」

「!!」

羽扇がカラリと落ちる。端正の顔が嗜虐に歪んだ。…やっぱり相当嫌いなんだな。

「未・開・封!それでは仕方がない!貴様の案は不採用だ…ははは策士、策に溺れるとはこのことよ!!」

「ぐぬぬ…」

溜飲の下がる思いは分からんでもないけど、端正の露骨な喜びっぷりも微妙にカチンとくる。俺が今から台所に向かってルマンドを開封したら、こいつはどんな顔をするのだろうか。

「正直、キャラメル味とやらには少しぐっと来たが、やはり…なぁ」

豪勢がちらりとこちらを見る。目が合いそうになると、そっと目を逸らす。端正もちらっと見るが、やはりすぐに目を逸らした。

 俺が奴らを見ない振りをしているように、奴らも俺は居ないものとして振舞うのが決まりらしい。そして『未開封の菓子には手をつけない』という妙な不文律があるっぽいのだ。今更勝手に開封されるくらい、何とも思わないんだが。

「成る程、開封されていれば文句ないのですね。それならば私が話をつけて参りましょう、あの巨」「わー!!」「わわーわうわぁー!!」

何か言いかけた白頭巾に、2人が飛び掛って口を押さえつけた。

「ふっざけんなこの頭巾、本当に貴様は度し難いわ!!」

「空気を読め空気を!!」

「お2人が見て見ぬ振りをしているのが不思議でならなかったのですよ。居るでしょ、そこに巨」

「黙れぇ―――!!!」

「分かるだろ!?完全に分かってやってるんだろ!?本っ当、性格最悪だな卿は!!」

「もし、そこの巨」

「殴るぞこらぁ―――!!!」


――あーもう面倒臭いな。俺は席を立ち、台所に向かう。…俺もな、お人よしだよな。これすらもあの白頭巾の策略の一部なのだろうな、と薄々感づきつつ。


 戸棚に仕舞ってあったルマンドを開封しようとして、俺はあるものを見つけた。

ほほう、そう云えばこんなのも送られて来ていたな。

俺は『それ』を3本取り出すと、同時に開封した。そして少しだけ皿に出して夜食っぽくすると、余りを袋ごとこたつの上に放った。…考えてみれば、白頭巾の思惑通りに動くのも少し癪だし。


「……やや!?」

3人の小さいおじさん達が目を見張る。豪勢が細長い袋に駆け寄り、中の菓子を一枚取り出した。思った通り、奴らにとっては大判ソース煎餅くらいのサイズだ。

「なんだこの…ジャストサイズな感じは?」

「卿、載ってなかったか?スマホ、とやらに」

白頭巾は重々しく頷き、神託を告げるような声で叫んだ。

「…ブルボン・プチである!!」

豪勢と端正が雷に打たれたかのような表情で立ち尽くす。そんなにびっくりして頂いて巨人冥利に尽きるな。

「24種類の菓子を一口で食せる大きさに仕上げ、筒状の袋に収めた逸品…ここにあるのは『薄焼き・焼きエビ風味』『チョコラングドシャ』『黒糖きなこウェハース』です」

端正が肩を震わせた。

「…素晴らしい、これなら一つの菓子を3人で割って無駄な粉を散らかさずに済むというもの…!」

そこまでストレスだったのか、粉が。管理職やってて粉一つでやいのやいの云っていたのなら、早死にもするわな。

「これで今日の茶菓子は決定だな!余はこの、チョコラングドシャに決定!貴様らも好きなのを選べ!」

「では俺は、このウエハースを試してみよう」

端正は恐る恐る、ウエハースを袋から引き出した。

「…散らかりそうだなぁ」

「私はこの煎餅に致しますか。…しかし惜しむらくは話が長引き過ぎて、湯が冷めてしまったことですな。もし、そこの巨」「わー!!」「わわぁわぁ――!!」

白頭巾を押さえつけて叫びつつ、2人が交互にちらりとこちらを見る。…俺はそっと立ち上がると、薬缶をコンロにかけた。…俺はあくまで、居ないことにし続けるが利用はするらしい。


奴らの性格や好みはイヤというほど知らされたが、結局、こいつらは何者で、どういう理由でこの部屋にたむろしているのかは分からず仕舞いのままだ。

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