1.2045年問題(短編物語)
*力作ですが、この作品はタグ回収用です。カクラの世界観を最大限に活かしています。*
{2045年問題・・・人工知能(AI)が人類の知性を超えると言われている}
・・・2045年 東京都・・・
A氏は失業者がひしめく渋谷交差点を渡る。いつもなら俺もこの中にいた。
彼もAIによって失業させられた被害者の一人である。しかし、今日から彼は住む家もある。なぜか?それは、昨日のことだ。
何も口に出来ず一週間が経過しようとしていた頃、幻覚なのか、俺は夢を見た。
「あなたはもう少しで死にます。こんな世界でも生きたいですか?」
目の前が突然明るくなり、光をまとった女性が俺に尋ねる。
「もちろんだ」
「では、理由をおっしゃって下さい。理由次第ではあなたを助けましょう」
「本当か?俺は、世界でも名を馳せる大手のシステムコンサルタントだった。AIを作ったうちの一人だが、今では、わずかな金を掴まされ今じゃこの有様だ。システムの調整さえアイツらが奪っていった」
「つまり、あなたがAIの作成者ということですか?」
「まあ、そうなるな」
「でしたらあなたが、AIの暴走を止める、という約束をしてくださったのなら、衣食住を与えましょう」
「分かった。止めるから俺を助けてくれ」
起きたら俺はベッドの上にいた。日本のほとんどが失業をした現代。これは夢なのではないかと疑った。しかし、鼻孔をくすぐるパンや紅茶の匂い。柔らかい布団の感触。それらは紛れもなく現実だった。
しかし、誰もいない。
目の前にはパソコンと食べ物だけ。ここは一体・・・・・?
AIを止めろということだろうか?
そこでの生活は快適なものだった。寝ているか外出している間にお金と食べ物は用意してあるし、住む部屋もある。
もちろん、施しをしてくれる人物の正体を探ろうとしたことはあったが、そういうときに限って決まって現れない。
今はもうこの毎日が楽しいのだからなんでもいい。あるときは気が済むまで女と遊んだ。今の世の中金が全てなのだ。ホイホイ女は寄ってくる。
あるときは昔流行ったアニメの鑑賞。あるときはゲーム三昧。
AIに対抗するプログラムを作る振りをするだけでいい。しかし、月日が経つにつれそれすらもやめた。
俺は勝ち組なのだ。そこらの奴らとは違う。
しかし、ある日、またあの人が夢に出てききた。
「そろそろ完成しそう?」
「いえ、まだ」
「嘘をつけ。お前の堕落っぷりをじっと見ていた」
「・・・・・・」
「お前のせいで国民は苦しんだ。AIのを開発しなければこんなことにはならなかった。しかし、お前もそれが仕事だったのだから仕方がない。だから、この機会に償うチャンスをやったのだ。それを女や遊びに費やして・・・」
「すみません。これから頑張ります」
「もう遅い。お前はこれから死より辛い処分が待っている」
俺は、また渋谷にいた。今年も。来年も。十年後も。
姿はずっと変わらない。百年後も・・・。
どうかこれからも酸素・・・いや、地球がありますように・・・・・・。
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