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* * *


「まずはここだな」

「ペットショップ、ですか」


賢琉くんとやって来たのは、学校からそう遠くない場所にあるペットショップ・いちじく。

ペットショップなのに“無花果いちじく”とは、ちょっと不思議なネーミングだ。


お店は三階建てで、一階が犬と猫、二階がうさぎやハムスター、リスなどの小動物と鳥類、そして三階は熱帯魚と爬虫類が主となっているようだ。


「ベタが増えたのは今朝の事。もし最近誰か買いに来た人がいるなら、お店の人が覚えているんじゃないか?」

「確かにそうですね」


扉を潜った途端、動物特有の匂いにむわっと包まれる。

店員さんが一人いたが、どうやらお客さんの応対中のようだ。


真っ直ぐに三階へ行くのかと思ったら、賢琉くんは店の奥、キャットタワーで寛ぐ猫たちの元へ歩いて行き、そのうちの一匹をおもむろに抱き上げると、そのままお腹に顔を埋めた。


抱かれた猫の方も嫌がる素振りは見せず、大人しくされるがままになっている。


「あの…、賢琉くん?」

「猫って」

「はい」

「いい匂いするよな」

「はい…?」


わかるようなわからないような…、やっぱりよくわからない。

賢琉くんはお腹から顔を離すと、抱き方を変えて、今度は首の周りや耳の後ろを優しく撫でていく。

猫も満更でもないのか、気持ち良さそうに目を細めて、ゴロゴロと喉まで鳴らしている。


「なんだか猫の扱いに慣れていますね」

「まぁ、好きだからな。真実も抱いてみるか?」


そう言うと私の腕の中へそっと猫を移動させてくれた。

元々穏やかな性格なのか、私の方へ移っても大人しく抱っこされている。


「…ふわふわで温かいです」


こんなにちゃんと猫を抱き上げたのはとても久しぶりだった。

小さい頃に、公園で見付けた捨て猫のお世話をしていた時以来だ。


しかもその時はまだ生まれたばかりのほんとに小さな子猫だったから、大人になった猫を抱くのは初めてかもしれない。


やがて腕の中の猫が身動いだのを感じて、キャットタワーに戻してあげると、お別れを言ってから三階へ向かった。

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