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「違う種類だったり、メス同士なら大丈夫とか言われたりもしてるけど、個体差、それぞれの性格にもよるし、やっぱり基本的にはNGだね。
ここでも挑戦していたように、繁殖目的でオスとメスを一緒にしたりもするけど、メスが一方的にいじめられてしまう場合もあるから注意が必要なんだ」
「メスにも攻撃してしまうんですか」
「うん。ベタの繁殖行動は情熱的って言われていてね。僕も動画でなら見た事あるけど、メスが死んじゃわないかってヒヤヒヤしたよ」
さすが普段からお世話をしているだけあって、私たちと同じ一年生ながら、ベタに詳しい。
頷きながら話を聞く私の後ろで、賢琉くんは聞いているのかいないのか、どこか遠くを見詰めるような眼差しで腕を組んでベタの水槽を眺めていた。
* * *
あの後、他の部員にも一通り話を聞いて、私たちは再び文化研究部の部室へと戻ってきた。
棚から自分の分のカップを取り出すと、結局出しっぱなしになっていた賢琉くんのティーセットで、今度は2人分の紅茶を淹れる。
「情報を整理します。事件…と言うと少し大袈裟かもしれませんが、それに気付いたのは今日の朝。ベタ部では毎日朝に様子を見ながら餌やりをしていて、今日の当番だった部長の張永さんが部室に入った時にはもうベタが増えていた」
「鍵は二個あるんだったな」
「はい。一つは職員室に。もう一つは部室脇に取り付けられた特製ポストの中に」
「つまり、知っていれば誰でも簡単に鍵を開けられる状態だった」
「昨日最後に部室を出たのは、張永さん含め四人。その全員が、ベタの数と施錠、鍵をポストに戻した事を確認しています」
そこで一度紅茶を飲む。時々、変な所で拘りを見せる賢琉くんセレクトの今日の紅茶はダージリンだ。
ストレート向きで香り高く、淹れる時に温度にも気を遣っただけあって、カップを持ち上げただけで芳醇な香りが漂ってくる。
「二匹が四匹に増えるなんて、細胞分裂しただけ、とかだったら面白いけどな」
「そうやってすぐ脱線しないでください。入っていたのはオスとメス、増えていたのは二匹ともオスです。それよりも、何か解決へ繋がる手懸かりは掴めたんですか?」
「どうだろうな」
「その反応は何かわかったって事ですよね。また、聞いても教えてはくれないんですか」
「自分で考えた方が楽しいだろう?」
「そう言うと思ってました…」
「まだ何か言える段階じゃないんだよ。まずはもっと情報を集めに行こうか」
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