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* * *
「…賢琉くんまで来ることなかったんですけど」
「いいじゃないか、僕も一度食べてみたかったんだ」
部活の再開を一日延ばす事に決めて、校門を後にした現在。
学校の最寄り駅から四駅先にあるパンケーキ屋さんに二人揃って訪れていた。
明るく爽やかな外観に、豊富な種類のメニュー。それに加えて、店員さんの制服も可愛らしいと女子の間で専ら話題の人気パンケーキ店。
先日、ここでバイトをしている同じクラスの
元々は一人で来るつもりだったけれど、部活を休む理由を説明した所、「僕も食べてみたい」と付いてきた賢琉くん。
こういうお店は女性のお客さんが多く、どちらかと言うと男性は入りにくいのではないかと思って誘わなかったのだが、目の前で楽しそうにメニューを広げる賢琉くんを見ていたら、一緒に来てよかったかなと思えた。
「よし、決めた」
「何にするんですか?」
「この“たっぷりフルーツと特製クリームエベレスト盛り~パティシエの気まぐれ~”にする」
賢琉くんが指差したメニューの写真には、お皿一杯の生クリーム。フルーツやパンケーキはその下に埋まっているのだろうが、どう考えても初心者向きではない。
「これ、ですか……。今までパンケーキ食べたことないんですよね?最初からこんなすごそうなのに挑戦しちゃって大丈夫ですか?」
「問題ない。僕一人で食べる訳じゃないからな」
「え?」
「真実も食べるだろう?」
「いや、私はこのお店オススメのメニューにしようかと思ってたんですけど」
「そうか」
にっこり笑った賢琉くんは、軽く手を挙げそのまま店員さんを呼んだ。
「すみません、注文お願いします」
「はーい!お伺いしますよっ」
「千紗希ちゃん」
元気よく現れた店員さんは、件の同級生、
「いらっしゃい!よかった、やっぱり二人で来たね」
「やっぱりって何ですか。それより、制服似合ってますね。可愛いです」
「ありがと。バイト始めたキッカケが、これに一目惚れしたからなんだよね」
そう言って笑う千紗希ちゃんの胸のネームプレートには初心者マークのシールが貼ってあった。どうやらここのバイトは最近始めたばかりらしい。
「水瀬、注文いいか?」
「あ、はいはーい!何にする?」
「私はこの「たっぷりフルーツと特製クリームエベレスト盛り一つで。取り分ける皿も頼む」
「おー、チャレンジャーだねー!あ、一応ご注文繰り返させて頂きます。たっぷりフルーツと特製クリームエベレスト盛り~シェフの気まぐれ~をお一つですね。少々お待ちを」
「え、ちょっと待ってください!」
キッチンへ向かおうとする千紗希ちゃんを引き留めると、賢琉くんをキッと睨む。
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