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「すごいですね、この学校から絵画コンクールの受賞者が出るなんて」
「うちは文化部の活動も盛んだからな。だから僕たちのような新参者も受け入れてもらいやすい」
「
「基本的に人数と顧問さえ確保出来れば、申請は通るからな。それにしても“黒杜壱波”か…」
「この人がどうかしたんですか?」
「いや、どこかで見たことのある名前だと思ってな」
賢琉くんはそう言うと、顎に手を当てて新聞をじっと見つめる。私は邪魔にならないようにしながら、もう一度写真の絵を見た。
サイズが小さくて細部まではわからないが、素人目にも上手いのがわかる。カラーで見られないのが勿体ない。
でもきっと、コンクールで受賞した絵ともなれば、学校で展示される事もあるはず。そうなったら絶対見に行こうと考えていた所で、隣から「あっ」と呟く声が聞こえた。
「思い出した。小学生の時、読書感想画コンクールの表彰で見たんだ」
「読書感想画?文ではなくて、ですか」
「ああ。読書感想文があるだろう?あれと同じように、絵で感想を表すコンクールがあるんだ。夏休みの宿題が文か絵の選択制だったから、文章を考えるよりは良いかと思って僕は絵にしたんだ」
「賢琉くんが絵、ですか」
「なんだ、変か?」
「何だかキャンバスや画用紙よりも、机で参考書を広げている姿の方がしっくりくるなぁと思いまして」
まあ実際には参考書を広げながら勉強する事はなさそうだけれど。
表彰で見たということは、賢琉くんは絵画でも賞をもらったことがあるんだろうか。その器用さが羨ましい。
「読書感想文というと、私、毎年苦労していた思い出しかないので、絵だったからもっと楽しく取り組めたかもしれません」
「真実の絵心じゃなぁ」
「何ですか」
「ついこの間、描いた犬を熊に間違えられていたのを思い出してな」
「そっ、それはもう忘れてください!」
「いや、僕も熊だと思っていたから、犬だと言われた時の衝撃はなかなか」
「もう!だから忘れてくださいってば」
私たちがそんなやり取りをしていると、近くの教室から揃いのジャージを着た生徒が出てきて、私たちの側を通り過ぎた。
外からは風に乗って、ランニングの掛け声が聞こえてくる。
テスト期間が終わり、今日からまた部活動が再開されたのだ。
この規則的な掛け声は野球部かテニス部か、はたまたラクロス部か。
「そろそろ行くぞ、真実」
そう言って、私を待つ気配すら見せずに賢琉くんは歩き出してしまう。
テスト期間も明け、文研も活動再開という事だろう。だけど今日は。
「あの、部活なんですが、明日からでもいいですか?」
「それは別に構わないが、何か用事があったのか?」
「実はですね…」
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