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「最近は全然会ってなかったけど、高校入ってすぐくらいかな。偶然外で会った事があるんだ。せっかくだからってお茶に誘ってくれて、学校での加濃くんの様子とか、部活は何にするのかとか、授業や先生はどんな感じかとか、いろいろお話したなあ」
「聞き上手な方だったんですね」
「そうそう。何でも真剣に聞いてくれるから、伯父さんと話すのはいつも楽しくて。友達といるみたいに話しやすかったんだ」
今までの事を思い出しているのだろう。淡野くんの表情からも楽しそうな様子が伝わってくる。
「僕がベタ部に入ろうか迷ってるって言った時なんか、そのまま一緒にペットショップにまで行って、お店の人か!ってくらい詳しくあれこれ教えてくれた事もあるんだよ」
「ベタの事をですか?そんなに詳しく知っていたのなら、ベタを飼っていた事があるのでしょうか」
「うーん…ちゃんと聞いた事なかったからそこまではわからないな」
その後も時々脱線しながら淡野くんの話を聞いていたのだが、ふと時計を見るといつの間にか三時間近く経っている。
そろそろお店が混んでくる時間帯なのか、周りや出入りの人の動きも多くなってきたので、私たちもお開きとする事にした。
「今日はお話をたくさん聞かせてくださってありがとうございました」
「僕も久しぶりに伯父さんの事いろいろ思い出せて楽しかったよ」
お店の前で別れると、手を振り歩いていく淡野くんの背中を見送る。
「思っていたよりもたくさんお話を聞けましたね」
「ああ。それに加濃くんの伯父さんがベタを飼っていた可能性がある事もわかった」
「今回の事と、何か繋がりがあるんでしょうか?」
「それはまだわからないな。ところで真実」
「はい」
「この後どうする?」
「どうするって…」
「一緒に来るか?」
「え?」
* * *
「ここって…」
「加濃家だな」
淡野くんを見送った後、どこかへ行くという賢琉くんに付いて行った先は、昨日来たばかりの加濃くんの家だった。
「賢琉くん、何考えてるんですか。そして昨日も言いましたけど、今何時だと思ってるんですか!二日連続で、しかもご飯時に訪問するなんて」
「僕は気になった事をいつまでも放置しておけない性分なんだ。それに、連日手ぶらというのはどうかと思ったから、今日はこうして手土産を準備して来たんじゃないか」
そう言いながら目線の高さに掲げた手には白いビニール袋。
「手土産ってそれ、さっきコンビニに寄って買ったぷるりんプリンじゃないですか」
「高校生の手土産ならこんなものだろう。それにリビングにあったプリューゲルンのぬいぐるみ。あれは以前、ぷるりんプリンに付いている応募券を40枚集めてもらえる限定品だったはずだ。だからこれはきっと喜ばれる」
プリューゲルンというのは、金管楽器の一種であるフリューゲルホルンを持ったうさぎに似たオリジナルキャラクターで、垂れ気味の目と柔らかそうな体型はゆるキャラとしても人気がある。
「…賢琉くんのそういう謎の自信と躊躇なく踏み込める所、時々すごいと思います」
「ありがとう」
「褒めてないです…」
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