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テーブルに置いてあるメニューを手に取ると、フードメニューのページを飛ばしてデザートのページを開く。
夕食にはまだ早いが、おやつの時間にはちょうどいいかもしれない。
ショートケーキとフルーツタルトで迷っている私の隣、いつも何事も即決するタイプの賢琉くんがまだ最初の方のページを見ていた。
「珍しいですね、迷っているんですか?」
「いや、注文するものはもう決まった」
「そうなんですか」
「あまりこういう所に来ないから、他にどういうメニューがあるのかと思ってな」
「えっ、もしかしてこういうお店は初めてだったり…」
「いや、全く来た事がない訳じゃない。ただ久しぶりだからなんだかちょっと新鮮だ」
賢琉くんは時々不思議な所がある。思わずまじまじと見詰めてしまったが、淡野くんがメニューを閉じている事に気付き、慌てて意識を戻した。
…ショートケーキも捨てがたいけど、今回はフルーツタルトにしよう。
口にこそ出してはいなかったが、呼び出しボタンを押したそうにしていた賢琉くんに、ボタンと注文をお任せする。
ほどなくしてトレーにお皿を乗せ運んできてくれた店員さんに、誰の前に置こうか戸惑わせたチョコソースたっぷりのフルーツパフェは賢琉くん。
賢琉くんは案外甘党なのだが、あまり甘いものを食べなさそうに見えるので、一緒にお店に行くと度々こういう事が起こるのだ。
私は先程決めた通りのフルーツタルト。
それに対し、淡野くんはオレンジジュースのみのようだ。
「えっと、二人は加濃くんの伯父さんの話が聞きたいんだよね?」
「はい」
「僕も会った事はあるんだけど、そんなに詳しく話せる自信はないよ?」
全員のメニューが揃った所で、そう前置きしてから淡野くんは話し始めた。
「僕と加濃くんは中学の時に同じクラスになってからの友達でね、お互いの家で遊んだ事も何回かあるんだ。加濃くんの伯父さんとは、そういう時に会ったんだけど、従兄弟のお兄さんって感じで話しやすくて、初対面の僕にも良くしてくれたよ」
やはり加濃くんの伯父さんは話しやすい人だったらしい。
淡野くんも一緒に三人で遊んだり、泊まり掛けで出掛けた事まであるそうだ。
「その伯父さんの写真などはありませんか?」
「写真?ああ、そう言えば中学の卒業式の日に、加濃くんと卒業証書を見せに伯父さんの家へ行った時のがあるかも。ちょっと待ってね」
そう言ってカバンからスマホを取り出し、スクロールしていた淡野くんの指が少しして止まる。
「あったあった、これだよ。最初は二人で撮ってもらったんだけど、その後セルフタイマーにして三人で撮ったんだ。この真ん中に写ってるのが加濃くんの伯父さんだよ」
そこには二人の肩を抱いて嬉しそうに笑う男性の姿があった。
加濃くんのお母さんの兄だと言っていたけれど、実年齢より随分若く見える。
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