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* * *
「ご馳走さまでした。長居してしまってすみません」
「こちらこそ、片付け手伝ってくれてありがとう。いろいろお話出来て楽しかったわ。またいらっしゃいね」
「はい!ありがとうございました」
ドアが閉まる。すっかり暗くなってしまった道を駅に向かって歩きながら、先程の加濃くんの様子を思い出していた。
「ご飯中、何も話してくれませんでしたね。大人しい方なのでしょうか」
「食事中に話をしない人間は別に珍しくもないだろう。今日見た限りでも、彼はあまり進んで話すタイプには見えなかった。それより真実は加濃母と随分盛り上がっていたじゃないか」
「話しやすい方だったのでつい…。もしかしたら加濃くんの伯父さんもそんな人だったのかもしれませんね」
「そうだな。その伯父さんという人の事をもっと聞きたいな」
「伯父さんのお話、ですか?でも本人から聞くのは難しそうですね」
「となると―」
* * *
翌日。
放課後、私たちは1-Cのクラスに来ていた。
同じ学年とは言え、他のクラスの教室に入るのは少々躊躇いがある私とは対照的に、賢琉くんは自分たちの教室と同じような振る舞いで入っていく。
「淡野くん、こんにちは」
「あ、昨日の。どうしたの、またベタでも見たくなった?」
「いや。今日は君に話を聞きたくて来たんだ」
「僕に?」
「はい。淡野くんは加濃くんと仲が良いとお聞きしました。それで、つかぬ事をお伺いしますが、加濃くんの伯父さんをご存知ですか?」
「加濃くんの?うん、知ってるよ。僕も何度か会った事があるし。でもそれなら本人に聞いた方が…、って今日はもう帰っちゃったみたいだけど」
淡野くんは一度窓際の席へ視線を向けた。
加濃くんの席はそちらにあるらしい。
窓際の列はどの席もカバンがなくなっていた。
「実は昨日、加濃くんのお家にお邪魔したんです。その時に伯父さんのお話も少しお聞きしました」
「じゃあもしかして伯父さんの事…」
「はい。その伯父さんがどんな方だったのか知りたいのですが、加濃くんには話して頂けなさそうなので…」
「そっか。そういう事なら別に話すのは構わないけど、場所を変えてもいいかな?」
その後、部室に顔だけ出して行くという淡野くんと一緒にベタ部へ寄って挨拶をして、私たちは駅近くのファミレスへ来た。
店内には同じく学校帰りだろう、制服や部活のジャージ姿の人もちらほらといて、お店のBGMと話し声でざわざわとしている。
店員さんに人数を伝えると、少し奥まったテーブル席に案内され、一番手前の席に座った私の隣に賢琉くん、その向かい側に淡野くんが座った。
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