2
「はい、どちら様でしょう?」
扉を開けて迎えに出ると、眼鏡をかけた色白な男子生徒がそこに立っていた。
名札のラインの色からすると、三年生のようだ。
「…ここって文化研究部で合ってる?」
「はい、合ってますよ」
「よかった。俺はベタ部の部長をしている
「ベタ部」
何の部活かわからず繰り返すと、いつの間にか隣に立っていた賢琉くんが説明をしてくれた。
「ベタとは闘魚とも呼ばれる熱帯魚で、名前に“闘う”という字が付けられるだけあって、なかなかに気性が荒い。特にオス同士を同じ水槽に入れておくと喧嘩をしてしまうらしい。真実はベタを見た事はあるかい?」
「いえ、見た事ありません。熱帯魚と言ったらネオンテトラくらいしか…」
「あまり手間が掛からなくて初心者にも飼いやすい魚だね。ベタは美しい姿をしていて、観賞用にも人気なんだ」
熱帯魚と聞いて真っ先に思い浮かんだネオンテトラは、近所の病院の待合室で見た事があった。
小さい頃、風邪を引いて病院に行く度に水槽の前に立ち、母に呼ばれるまでずっと泳ぐ姿を見詰めていた。
「そのベタ部の部長さんが、うちにどのようなご用事ですか?」
「もし違っていたら申し訳ないんだけど、ここに相談すれば何でも解決してくれるって噂を聞いて。それで、事件って程ではないんだけど、うちの部で起きた話を聞いてほしいんだ」
そう。私たちだけでやっている文化研究部は、いつの間にかお悩み相談室として扱われるようになっていた。
きっかけは同じクラスの女子の些細な相談。
少しアドバイスをしたところ、賢琉くんの影響か、部の出来方が出来方だったからか、それともその両方なのかは不明だが、女子を中心に噂が広がり、創設して間もないにも関わらず、度々依頼人よろしく他の生徒が訪れるようになったのだ。
「…相談室を開設したつもりはないんですけど、私たちでよければお話聞かせてください」
「ありがとう。うちの部活は実際にベタの飼育も行っているんだけど、今日部室に行ったら」
「いなくなってたんですか」
「いや。増えていたんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます