PART 3 - 依頼

 路地裏の質の悪い酒場だった。

 下卑た喧騒が充満する中、男は彼にとっての救い主の到着を待ち、奥まった卓の席で苦々しい液体で唇を湿していた。

 不意に入り口の方の騒ぎに違う色が混じる。


「おぉい、大丈夫かよオメぇ!?」

「キヒ……ヒ、すいやせェん、ちっと足をすべらしまして……!!」


 床に黒いものがへたばっていた。それがのそりと身を起こすと、鍔広の帽子を被る。


「おいおい!! 女じゃねえか!!」


 どっと湧き起こる歓声。


「どうだよ姉ちゃん!! こっちの席こねえか!? いいことしてやるぜェ!!」

「ところがわちきは」


 女が帽子の鍔を、くい、と持ち上げるだけで応える。


「こういうもんでしてェ・・・・・・!!」


 うげえ、と余計に下卑た呻き声が上がった。


「ちくしょう!! 騙されたぜ!!」


 しっしっ、と背中を手で煽られながら、蹌踉よろめく女がこちらへ近寄ってくる。

 男の眼の前の席に、どかり、と腰を落とし、言った。


「お待たせしやした・・・・・・さぁ、お話を伺いやしょうか、お主さまェ?」


 女の顔には薄汚い包帯がぐるぐると巻き付き、瞳だけが爛々と光っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る