元の世界?

巨大なビルの中を調べたが、やはり、何も有力な情報はなかった。

日記帳やカレンダー、電話帳、名簿、地図、この未来都市の名前、今の時間や時代、誰が作ったのか、とにかく情報らしいものを手探りで探した。

「だめだわ。この階もハズレね」

「美華さん、奥の部屋も何もなかったよ。でも、埃臭さもないし、カビやダニがいるわけでもなく、部屋はずっと掃除や整理整頓しているのか、綺麗だよ」

煉と美華は、三階の客室らしき部屋を調べた。

ベッドメイクされ、テレビや冷蔵庫、バスルームやトイレも今宿泊出来るような状態だが、やはり、人の気配はない。いや、客室と言うよりも以前美華たちは都内の高級タワマンに住んでいる友人宅に遊びに行ったことがあるが、この部屋はその造りと似ていた。

「タワマンみたいに、人が居住する場所ね。でも、こんなにご立派な所ならお家賃は一ヶ月で片手は…いいえ、もっと必要かもしれないわね」

百合恵は、部屋から海が見えたり、街の中心が見える条件から推測した。

「片手?」

鎧は頭にはてなが出た。

「鎧くん、これはいくつかな」

百合恵が、左手の掌をお釈迦様が孫悟空に広げるように見せた。

「五でしょう」

「そお、五十万円って言う意味。君も目標にしているお店するなら、テナント料や税金、保険も計算しないといけなくなるから、苦手な算数や中高、大学生になったら習う数学はしっかり身に着けるのよ」

だけど、鎧はすでに圧倒されていた。なぜなら、お小遣いが月五千円の彼にしたら、その百倍と思ったら凄すぎって両目が飛び出しそうだった。

「マジで」

「マジよ」

と返す百合恵。鎧は、将来に向けてお小遣いを少しづつ、いや、年玉も全部貯金をしようと決心した。

「百合恵さん、おれ、高校生になったら、ケーキ屋さんかパン屋さんでバイトする」

「頑張りなさい」

彼女は大志を抱く鎧を優しく抱きしめた。

すると、目の前に誰もいないテラス席のあるカフェかレストランがあった。

「鎧くん、調理だけでなく、接客も勉強するならカフェやレストランとかも視野に入れておくことも大事よ」

百合恵は、席に付くためにかけようとしたら…

「はい、お姉様」

鎧は優しく椅子を引き、座りやすくし、彼女の前にナプキンがしかれ、フォークとナイフ、スプーン、お箸が置かれ、グラスが置かれた。

「フフフ、合格よ」

鎧に百合恵は優しくキスを贈る。

これより五年後、晴海市の有数のデートスポットである海沿いの公園にある巨大な摩天楼の夜景と夜風が自慢のドイツ料理のレストランでウェイター兼コックのアルバイトをする。彼はその腕を磨き、ミュンヘンに修行しに行く、その時、彼の隣にはずっと教えてくれて、支えてくれている年上の美女と行く。

その相手は…

最上階にエレベーターで上がる杏子と鋼はあるものを見つけた。

「屋内プール」

「ウソ、こんなものがあるなんて、やはり、ここはタワマンみたいな所?それとも、ホテルか何か?謎が深まるわ…」

その時、鋼と杏子の視界が、テレビやパソコンの液晶にバグが出た時みたく、ノイズみたいな音とともにボヤケた。

二人は目を擦る…

すると、眼前に広がったのは…

「あ、白田様。どうかされましたか?」

なんと、そこはメーアスブルクのロビーだった。

コンシェルジュが気付いて、二人に声をかけるが、鋼と杏子はさっきまで誰もいない町にいたのに、ロビーには人だかりが出来ていた。

コンシェルジュに伺うと、六人が出た時間から未来都市にいた時間とあっている。先ほどは中央のビルにあった屋上プールにいたのに…なぜ?

「杏子!!」

「鋼!!」

美華、百合恵、鎧、煉もここに戻って来ていたのだ。

未来都市はどうなったのか?なぜ、元の世界に戻れたのか?

とりあえずは、六人はコンシェルジュに伺った。

すると、時間は間違いなくチェックアウトしてから二時間は経っていた。時間は間違いなく進んでいる。

 




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