踏み込んだFuture

スイートルームと同じ階にあるレストランでモーニングを食べる六人。

テーブルには、昨夜のビッフェ並に豪勢な朝食が並んでいる。

サラダにサンドイッチ、クロワッサン、ホットケーキ、ホットドッグなど、スクランブルエッグや目玉焼きなど、食べ盛りの少年たちはまだ夢の世界かと目を疑う。

両親が朝作ってくれるのは、これの半分ぐらいだからだ。

「修学旅行みたいだね」

「まったくだな」

「うめー」

鋼、鎧、煉が話す。

「あらあら、十代はやはりそうでなくちゃ」

すると王子たちが、

「先生たち、ありがとうございます」

女帝たちに満面の笑みでお礼を言うと、

“ドッキュン!!!!”

杏子、美華、百合恵はそれぞれの好きな男子たちの笑顔に心を奪われた。お見合いや合コンで会ったお金持ちや重役に就いている同世代や年上男性とは違う純真無垢な王子たちの笑顔に心から惹かれた。

”あぁ、なんて素直な彼らなのかしら、前に十歳上の社長や店のオーナーと合コンした時は、私らにも店員さんにも横柄な態度を取っていたけど、鋼くん違うわ“

“同い年のデイトレーダーとお見合いした時に、食も映画も割り勘だったけど、お礼すらなかったわ”

学校や近所でも美しいが、気が強い、体育会系のゴリラ女やお高くとまっているなど、異性からも同性からも悪く見られていた…恋愛にも将来も…悲観していた。今もまでは、しかし、今こ十三歳下の三人の王子たちの笑顔に…

楽しい時間も終わり、六人は帰宅の準備をする。

せっかくの土曜日、このまま帰ったら、王子たちは習い事や友達と遊ぶ約束もない。

女帝たちも仕事もなく、プライベートな用事もない。

だから、中心街にある今流行りの映画を観に行くことにした。大人気の恋愛アニメで六人の仲良し家族が異世界で大冒険する話だ。

「うわ、観たい観たい」

「先生、行こうよ」

「嬉しい。ありがとうございます」

ハグされてお礼を言われて、女帝たちは母性をくすぐられてさらに紅潮した。

やがて、六人はフロントに降りてチェックアウトの手続きをし、エレベーターで地下駐車場に駐めてある愛車に向かった。

鋼たちは始終ドキドキとワクワクで今もアドレナリンが全開だった。

町のシンボルに、まだ、クラスメイトは誰一人泊まったことがない高級ホテルに泊まり、遊園地やゲームセンターや植物園とは違うアミューズメントパークのような夢の国を体験したからだ。

「達哉と竜次に自慢してやりたいな。アイツら目ん玉が飛び出るくらい驚くぞ」

鎧が仲の良い友人に自慢してやろうとにししと笑いながら言う。

「淑恵ちゃんや江梨子ちゃんたちに話したら、女子たちがお目目をキラキラさせて羨ましがるだろうか」

鋼も慕ってくれる女子たちに話そうと考える。

「ダメだよ。先生たちとここに一泊したなんて、言ったら、周りから不倫や不純異性交遊みたいに思われたら、先生たちに迷惑がかかるよ。パパやママたちも心配しちゃうよ!!!!好きな女性に迷惑かけるなんて、絶対にダメだよ!!!!!!」

煉が最後は強く言った。

鋼たちもそこは、反省した。

なぜなら、両親たちもいないからと、いつもお世話になっている担任の先生たちでも、教師と生徒、二十代の女性と十代の少年が高級ホテルとは言え、外泊したなんて知られたら、世間からどんな目で見られて言われるか、昨今の風潮なら煉たち、子供でもわかる。

「ごめん」

「そうだよな。美華さんたちに迷惑かけたくないもん。俺、口が裂けても言わない」

王子たちの心遣い、紳士な振る舞いに、杏子、美華、百合恵は少しだけ涙が出そうになった。

(わがまま王子かと思いきや、なんて優しいの)

(婚活で振った下衆男子らに、この子らの垢を煎じて飲ませたいわ)

そして、杏子は鋼、煉は美華、鎧と百合恵はそれぞれの左手と右手を強く握った。その後は、それぞれの車とオートバイに乗り込み、料金を払い、湾岸道路を通り、市内の中心街を目指した。

だが、ホテルを出た瞬間から、町の様子が激変した。

六人は、その別の美しさを見て一瞬、「え?」となった。

「何これ?」

「僕らの町じゃない」

「どこだよ。ここ?」

なんと、町がガラス張りの天空高くそびえる巨大な高層ビルになり、湾岸道路もアスファルトからモノレールが走る鉄の道路に変わり、ルーブル美術館のシンボルのピラミッドをさらに大きくし、エメラルドグリーンの色をした建物が、所謂、SF映画や漫画のような近未来の都市が現れたのだ。









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