プラネタリウムの海で
そこは、部屋の壁と床はレッドカーペットやバラの花弁のような赤い色が敷き詰められていた。
「ワインが呑みたくなるわ」
お酒が大好きな杏子が呟く。
すかさず、美華と百合恵が子供たちの前だから控えなさいと突っ込む。
その時、王子たちが上を見上げて叫んだ。
「宇宙だ!!!」
「天井にも天の川だ。星の海だ!!!」
「月面世界だ。百合恵先生、凄いよ」
鋼、煉、鎧は特大のプラネタリウムを見て大はしゃぎだ。
“連れて来て大正解だったわね”三人の美女はフフと笑う。 鋼たちも微笑む。
なぜなら、そこにはいつも生徒や保護者や先生たちからも恐れられている女帝たちの姿はなかったからだ。
「さあ、花の金曜日を楽しみましょう」
「やったー」
「わーい」
奥には、ガラス張りで一面の星空と大都会の夜景を独り占めにした贅沢なプライベートプールがあった。鋼はアクアブルー、煉はカーキグリーン、鎧はダークブラックの海パンに着替えて体操をし、プールサイドで女帝たちを待った。
「イチ、二、サン、シー」
腕や足を伸ばす。首を回すなど体操をしていると、
「先生たち、どんな水着かな。倉庫にあったパパのエッチな本の際どい水着だったら、どうする?」
鎧が少しだけニヤリとする。倉庫の掃除をしていた時に父が若い頃に読んでいたと思われるグラビアアイドルの写真集や雑誌を発見したので、こっそり、部屋の奥に隠してあるのだ。
鋼も大好きなやつなので、こっそりと読んでいる。
この前、体育の授業では美華は赤、百合恵は青、杏子は緑のハイレグ型の競泳水着だったのは記憶に新しい。
「まさか、クラスの女子たちみたくネーム付きのスク水じゃ」
鋼は彼女たちが生真面目なので、プライベートもスク水みたいなのだろうかと想像し、一瞬、紺色の旧型スク水やセパレート型のスク水で、胸に(きょうこ、みか、ゆりえ)のひらがなで名前が書かれ、白い水泳帽とゴーグルをした三人が、「こうくん」「れんくん」「がいくん」ってクラスの美少女たちみたく駆け寄ってくるシーンを思い浮かべた。
「同じクラスの田中育美ちゃんや六年の上田香菜先輩、一学年の草加美和ちゃんみたいなスクール水着で先生たちが来たらどうしよう?」
「鋼も鎧もハレンチな妄想はやめなよ。美華先生たちに失礼だろう」
煉が叱る。
「そうだな」
「ごめん」
反省して、体操を済ます。
すると、
「おまたせ~」
カーテンが開き、女帝三姉妹が出てきた。
「先生…」
「どう、似合うかしら?」
「プールを楽しみましょう」
杏子は紫陽花やアサガオのように濃い紫のビキニ、美華は深海に眠る宝石のようなアクアマリンのビキニ、百合恵は魅惑の緑の光を放つエメラルドグリーンのビキニで三人ともモデルのように佇んでいた。
少年たちは、いっせいに鼻血が滝のように飛び出した(笑)
「あら、興奮しちゃった?」
「エッチね」
「この世で今、もっともゴージャスな時間にいるのに、そんなじゃ、ダメよ」
三姉妹の台詞に、少年たちは気持ちを落ち着かせて意中の彼女にそれぞれ抱きついた。
「それじゃ、プラネタリウムの海に入りましょう」
杏子が鋼、鎧は百合恵、煉は美華と手を繋いでプールに入水した。
プラネタリウムと言っていたのは、天井に答えがあった。水の底から上を覗くと、そこには天井に描かれた十二星座と天の川、太陽や月、火星や木星などの天体が、大宇宙があった。
文字通りのプラネタリウムだ。
六人は宇宙の海を泳いでいるような気持ちで、戯れた。
「杏子先生、すごいよ。こんな世界に来られるなんて、嬉しいよ」
「俺、みんなに自慢したいよ」
煌びやかな星の海に浸る王子たちに、美女たちはこう言った。
「ここでは、先生じゃなく、名前で呼んで」
「煉くん、美華でいいわよ」
「私も百合恵と呼んでね。鎧」
「じゃあ、鋼くんいいかしら?」
少年たちは、“はい”と水の中で頷いた。
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