リザ二十才 4

 軍都には普段の便よりも五日程間が空いての到着だったが、兵站本部では余り心配をしていない様子だったし、軍令本部では状況が伝わっている様子だった。

 購買課に二十万発の後装小銃用銃弾を納品し、次回納品期日を空欄無期にして納品休止にしてもらい、装備課に試験用の機関小銃と機関銃を持ち込み、銃身清掃具と云う名称の被筒付鋼芯弾と併せて試験してもらう手はずを整えた。

「で、この銃身清掃具、本当に綺麗になるの」

 ニヤニヤといじわるげな笑みを浮かべながら装備課長が尋ねた。

「弾が撃てるくらいの銃身ならかなりツルツルになります」

 自信有りげなマジンの言葉に装備課長は少し驚いた様子だったがニヤリとした。

「で、掃除したあとどんだけ飛ぶのさ」

 装備課長の表情を真似るようにマジンは薄笑いを浮かべた。

「うちじゃ二千キュビット先の樽を撃ちぬいてました。ま、銃身はたっぷり掃除した後だったんで、ガッツリ汚れている銃はどうなのかわからんのですが」

 装備課長は笑いを引っ込めた。

「よし。じゃ、うちはその辺をちょっとやらせてもらおう」

 装備課長が機嫌よくやる気になったのを確認して、出納課と会計課に挨拶をして購買課に一回戻り、予算状況や引き合いの確認をする。

 いま、銃身清掃具という名称で軍とロータル鉄工との間で交わしている後装銃弾の認証を迂回する手法について部隊の方では問題を感じるはずであるし、或いは被筒付鋼芯弾という名称で引き合いを受けられるだろうか、という質問をした。

 焦らないほうがいいだろう、と購買課長は言った。短期的な話題としては名称そのものは余り問題にならない。むしろ備蓄計画を一旦修正しているという意味合いから弾薬が切れているということが分かりやすく示されるのは、予算上都合が良い、と購買課長は説明した。

 軍令本部に顔を出すと兵站本部の一種長閑なムードとは一転大騒ぎだった。

 輜重課に顔を出すと、おおお疲れさんご苦労さん、と人々が慌ただしく出入りする様子だった。

 ハンコやペンの擦れる音がそこここからまるで工房のように聞こえる。

「すみません。師団に納品を頼まれたのですが、どちらに出向けばよいか教えていただけますでしょうか」

「どちらの師団でしょう」

 日頃、物資の調達で商会などの地方民、一般国民を相手にする機会が多い輜重課の士官は、忙しい中の不意の珍客の問いかけにも鷹揚に応対してみせる余裕があった。

「マルミス将軍の師団です」

「輜重課に報告はないですねぇ」

 輜重課員は手元にある幾つかの画板の書類を探すようにしてくれたが、目指す情報はなかった様子だった。

「困ったな。師団の方に連絡つきませんか。少しばかり納品の量が多いのでお届け出来ないとお互い困ったことになるかと」

 マジンの様子に肩をすくめながらも、応対してくれている士官は手を探してくれる気になったようだ。

「荷物は何ですか」

「小銃と銃弾です」

 ザワっと部屋の視線がこちらに向いた。余り好意的なだけではないようにも感じる。

「お名前をいただけますか」

「ローゼンヘン工業」

 やはりなにやら目の敵にされている様子であった。

「戦務参謀の大尉閣下にでも連絡をつけるのが、手っ取り早くよろしいんじゃありませんか」

 応対してくれた士官とは別の声がどこか肩越しから聞こえた。

 応対してくれていた士官も同僚から別の用件を振られ、そちらに動き出してしまった。

 どうやらリザがなにかしでかしたか、と先日の騒ぎでアタリがつく。が、ここにいても得るものはなさそうだった。



 仕方ない。本当に戦務参謀でも探してみるか。

 と一階の案内まで戻ろうとすると背中から肩を叩かれた。リザだった。

「どうしたの。こんなところで」

「マルミス師団に届け物があったんだが、輜重課で知らないって言われて追い返されたところだ」

 マジンは状況を要約していった。

「ああ。マルミス将軍のところはこっちに輜重残してないから」

 なんでもないことのようにリザは説明した。

「届け物があるんだが。ざっくり六グレノル半」

「ご苦労様。わかったわ。連絡はこっちで付けましょ。急いでいるだろうけど、少し付き合って」

 リザは実に当たり前にそう言った。

 どうやら隣りにいたリザよりも少し星の数や飾りの数が多い男性は面白そうな顔をしてリザとマジンの様子を眺めている。

「ボクはいいが、お前は仕事中だろう」

「バッカね。あなた。私の仕事は戦務参謀よ。教えてあげたじゃない。兵站と軍令に穴があかないように横槍入れて繋ぎ止めるのが私の仕事よ。あなたが持ってきた鉄砲と弾が迷子になるなんてことを私が許すわけないじゃない。……よろしいですね。ストレイク大佐殿」

「もちろんだ。……ところでそろそろ紹介してもらえるだろうか。彼がキミの……」

「そうです。彼が私の切り札。ゲリエ・マキシマジン。私の娘の父親です。――こちらはバッカノル・ストレイク大佐。私の上司。美人の奥さんとかっこいい息子さんのいる素敵なボス。息子さんは軍学校の六回生だって」

「よろしく」

 背の高いストレイク大佐は一歩敢えて踏み込み会釈をするようにマジンと握手をした。

 ストレイク大佐はそれだけで二人に背を向けて歩き出したのを、リザが追う。

「ついていっていいのか」

 如何にも忙しげな二人の背を追うようにマジンは声をかける。

「いいのよ。私も部屋の中には入らないですもの。私も大本営の中を歩くのは珍しいから大佐殿に教えていただいているところ。秘書の真似事ね。……で、ほかにもあるんでしょ。面倒事」

 リザは書類かばんを持った自分の手を軽くふって示してマジンに尋ね返した。

「顔にかいてあったか」

「教えて下さいって書いてある」

 リザが囁くように言った。

「教えて下さい」

「何かは言ってくれないとわからない」

 リザはまるでマジンの聞きたいことが睦言であるかのように囁いた。

「マルミス師団の注文は一便に乗るから先に届けようと思って揃えてきたんだが、アリオン将軍とミノア将軍からも注文を受けているんだ。けど、どっちを先にしたらいいんだ。どっちも結構大きい」

 リザはマジンの言葉に一瞬にして雰囲気を鋼のものに変えた。

「大佐殿」

「聞こえた。さすがキミの切り札だ。いいところにいいタイミングで現れてくれた」

 リザの鋭い呼びかけにストレイク大佐は振り返らず柔らか気な声で応えた。

「それで生産と輸送はどれくらい掛かりそう」

「生産も輸送もだいたいそれぞれひとつき量だ。二ヶ月半あれば軍都までは運べる。お前が変な風にうちのものを使わなければ、だけどな」

「例の、銃身清掃具は。上手くいってるの」

 リザはマジンの言葉を完全に無視して手元に書付をしながら尋ね返した。

「だいたい予定通りだ。最初の二百万は運んでもらった。帰ったら次の二百万を運んでもらうはずだ。さっき兵站本部の装備課に試験見本を納めてきた」

「さすがね。素敵」

「だけど、それもアレなんだが、レイザン少佐の一千万発は三ヶ月じゃどう考えても無理くさいぞ。四ヶ月でも穴が空くかもしれない。そこからで間に合うのか」

「で、新型小銃の方はどうなの」

 リザはマジンの言葉を再び無視して尋ねた。

「小銃の方はぼちぼちだな。日量百ちょい。月で三千弱ってところだろう。銃弾は月で四百万くらいって言っていいはずの所まで来た」

「凄いじゃない」

「だけど、こっから先は、設備投資と整備が必要になる。予算と買ってくれるアテがないと増やしようがない」

「銃身清掃具はどれくらい」

「月で二百五十万。一発が重たいから軍都まで運ぶってのは若い衆が使えるようになるまで無理だ」

「今の輸送量の見積もりってどれくらい」

「大雑把で良ければ新型銃弾百六十万発。機関小銃だと五千丁。銃身清掃具で六十五万発で往復十日ってところかな」

「少し増やしたのね」

「若い衆が使えるようになれば、また少し増えるよ。バールマンとレンゾが意外と使えている」

「よかった。――大佐殿。多少見積もりと違いはあるようですが、数の上では足りそうです」

 リザは聞きたいことだけをさっさと聞き出すと言葉を切って書付をストレイク大佐に差し出した。

 リザの聞きたいこととは別にマジンには危惧もあった。

 デカートはザブバル川で最も豊かな穀倉で、支流が束なり流れが緩やかであるという、山岳と平野を束ねる交通の要衝である。という事実を理解するに足るこの半年だったが、一方で工業と言えるに足るものは、せいぜい堅焼きビスケットと塩漬け肉などの隊商の食料基地としての産業や、造船や馬車荷車の製造だった。

 そういう中でほぼ丸一年かけて少しづつ普及の進んできたストーン商会製の蒸気圧機関はシリンダーが並列化された二号型や現場で小改造をされた三号型四号型をうけて、マジンに図面だけの五号型を二千万タレルで発注してきた。

 新しい産業を受けてデカートの風景は町を巡れば気がつくほどに一年で様変わりを始めた。

 だが、新しい産業そのものが立ち上がったばかりのデカートには、今のところ従来の製造に耐える先物分の備蓄しかなかった。

 デカートは豊かなヒトの多い文明啓けた土地ではあったが、共和国軍全体を支えるほどの巨大さは持っていない。この三ヶ月ほどでマジンが少しばかりの本気を出したところでデカートの物流はきしみを上げ始めていた。

「うちの生産力はそろそろ頭打ちだ。他所の人足の手当までやってられないぞ」

「生産力の頭打ちって、材料の仕入れの話かしら。それともその後の輸送の話とか整理の人足の話」

「今は結局、知恵金と製造以外全部だ。材料の仕入れを頼んでいるストーン商会の在庫の余裕がそろそろ怪しい物が増えてきた。鉄鉱石の質の良いのが枯れ始めている。むこうも手広くやっているから切り替えてしのいでいるけど、値段が分かる程度に上がってきた。フラムじゃ鉄重石が出るし、うちなら使えるから値段そのものはなんとかなるが、鉄重石はまぁ重いし使いにくい。うちの船ならともかく小さい船じゃ油断すると底をつく。輸送の話で言えば、新しい船の手当をしているし水路の工事もしているが、手隙で三ヶ月、このままなら半年はかかる。人の手当も始めたところで夏頃には数が揃うはずだが、使い物になるかは秋になるまでは見えないはずだ」

「そっちも夏頃までは大変ってことね。鉄道ってやつはどうなりそうなの」

「そんなのは再来年の話だよ。今ヒトを募っているのは当然に軍からの予算を受けての設備の拡大を睨んでのことだけれど、ともかく鉄道建設にはまとまった人数とそれなりの目論見を建てる経験がいる。作っておしまいって種類のものじゃないし、出来たあとじゃないと説明しにくい話もある。規模が違うと話も変わるし、ともかくそれなりに色々あるよ」

「機関銃とかはどれくらい作れそう」

「寝言は寝て言え。ってところだろう。少なくとも年内は諦めろ。冬のうちには新しい工場をつくるつもりでいるけど、今は準備の準備中だ」

「で、どれくらい作れそうなのよ」

 リザはマジンの言葉を無視するように重ねて尋ねた。

「お前はボクの努力の全力を疑っているようだが、努力の全力のためには準備が必要だし、ボクが人手を募ってその人手に努力の全力を求めるためには更に準備が必要になる。

――ボクこそ知りたいんだが、軍はまともに予算を立てるくらいにボクを信用しているんだろうね。ボクは自分で言うのは何だが、キミが泣きべそかきながら転がり込んでくるまでは軍需産業に興味もなかったし、それどころか産業で立身するつもりもなかった、ただの田舎の小僧だよ。オマエがあちこちに横槍を入れるついでに、ボクの話を吹きまわるのは結構だが、実績のないところに信用はなく、まともな予算がつくとも思えないんだが、そのへんはどうなんだ。せいぜい景気の良いホラ吹きに思われているんじゃないのか」

 マジンがそう言うとリザは再び黙った。

「なるほど、彼は自分の置かれた立場や状況をよく把握している」

 ストレイク大佐は立ち止まって振り返るとそう言った。

「――私はこれからゲリエ氏の置かれている状況を含めた我々側の調整と確認を行うための会合に参加するところだ。アリオン師団とミノア師団の件はちょうど良かった。こちらでこれから話題にするつもりだった。マルミス師団の件はゴルデベルグ大尉。きみが手伝って差し上げろ。この件はしばらくきみに任せるつもりだ」

 ストレイク大佐の、我々側、というものが具体的にどこまでを含んでいるのかはわからなかったが、人当たりの良さそうな中に狷介さを押し包んだ表情の声でストレイク大佐はリザに命じ、書類かばんを受け取ると部屋の中に入っていった。

 リザは敬礼で大佐を見送ると廊下を歩き始めた。

「ついてきて」

 それだけ言って、先ほどとは違ってリザは黙って廊下を歩いていた。

 リザは建物を変え参謀本部の看板の出ていない一室に入ると、しばらくして出てきた。

 そして、大本営の一階の喫茶室の奥まった一席にマジンを連れて行った。

 リザは名刺と書付けを押し出した。

「それが今の私の配置」

 名前と階級しかない簡素な名刺に部屋番号と郵便宛先住所が書かれた書付けが渡された。

「名刺の意味が無いな」

「まぁね。建前の上では大本営、名前階級で郵便物は届くことになっているし。そんなん誰も信じてないし、そんな郵便物送ってきたら、郵便課の方で怒鳴りこみに来るわ。兵站本部の郵便課はわけのわからないナマモノとか送られてきたりとかかなりの激務よ」

「で、どうすりゃいいんだ。その部屋番号に押しかければいいのか」

「郵便課に行って部屋番号と私の名前で書付け渡して。軍令本部の通用口に近いところにあるから、そこで書付渡してくれるのが一番確実」

「で、この待機はどういう意味合いなんだ。まさか連れ込みに行く前の時間調整とか云うんじゃないだろうな」

「やめて。本気でそんな気分になるから。単に呼び出したむこうの士官待ちよ。軍都にいたから小一時間ってところだと思う。それよりアンタのところの人たち大丈夫かな」

「大丈夫だと思う。車留で待機させているから、面倒になっていることはないだろう」

「あたしたちもソッチのほうが良かったかな。あの大きな奴、流石にあちこちで話題になってる。あんなのが二三百も欲しいって話になってるわ」

「まぁ。そりゃそうだろう。欲しいって話ならウチでもそれくらい欲しい」

「そっちの方が良かったかなぁって思うのよね。最近。小銃なんかより、あの大きいやつ二千両とか」

「おまえ、そんなにボクのところに嫁に来るのがいやか」

 机の下でマジンはリザを小突くように蹴る。

「うん?ああ、いや、いえ、そういう意味じゃなくて。戦争していると右から左にバッカみたいな量のものがすっ飛ぶように動いて消えちゃうんだなぁって。こないだ運んでもらったファラが危なく谷底に消えるようなアレが、三日でなくなっちゃって、もう。アレよ。早く戦争終わってって気分よ。輜重課の連中なんか言ってたでしょ」

 腰掛けてぼんやりしているうちにリザは気が抜けたようになっていた。

「お前を探したほうが早いんじゃないかとか、そんなこと言ってたな」

 マジンは思い出して要約する。

「まぁ、そうなんだけどね。軍都の辺りから東側は馬匹の類いがすっからかんで輜重課の連中になんか言っても開店休業中よ。乳牛まで借り出しているって。連日あちこちに出かけて手当しているはずだけど、そんなのは去年のうちにやっとけって話」

 風景を想像するにウンザリする流れだ。

「それを、輜重課でぶちまけたのか」

 マジンが机の下でまたリザの足を揺らす。

「ええ。まぁ」

 たっぷり一呼吸思い出してリザは短く言った。

「ひょっとしてレイザン少佐がやっていることもそういうことか」

「ええ。まぁ。そう。少佐は事実上の軍団輜重を編成しようとしているみたいだけど。あなたがいいところに土地を持っていて好きに使っていいって言ってくれたことにあちこちから大絶賛、感動と感謝の声が上がっているわよ。デカートは大議会じゃ戦争なんて関係ないって態度だったけど、馬も行李も普通に売ってくれるし保存の効く食料もかなりあるしで、デカート出張所の兵站連中はなにやってんだぁって話になっている」

「そんなで戦争大丈夫なのか」

「年内は大丈夫。たぶん。来年も手当がつくみたい。数字の上では。やる気と段取り次第っていう話をストレイク大佐が今頃しているはず。ただロータル鉄工をあなたがぶっ潰した件でやる気をなくしたヒトが色んな所に幾人かいてちょっと揉めてる」

「ロータル鉄工の件で憲兵隊に引っ張られたよ。なんか愚聯隊みたいな二人組に絡まれてマイズ大佐に会うことになった」

「この忙しいのにやめてよねぇ。そういうの。あなたが半月もいなくいなったら、冗談じゃなくて戦争負けちゃうわ。軍令本部長と兵站本部長から憲兵総監に文句言ってもらう」

 リザがだらしなく肘をつきながら親になにかをねだるような気軽さで言った。

「大尉閣下ってのはそういう態度からじゃないのか」

「私はストレイク大佐に言上申し上げるだけよ。戦務参謀ってのは戦局に必要な要素について様々な方々に提案ご説明申し上げる職掌よ。私が命令するってなったら、文句を言うなんて半端なことはしないで、もうちょっとちゃんと手当してやるわよ」

 机の下でリザの足を揺らすとリザはだらしなく机に崩れるようになりながら言った。

「――エリスに会いたい」

「まさか、養育院に預けっぱなしか」

「一昨日は一緒にお風呂に入った」

 そう言ってリザは机に崩れ伏せた。

「そんなに忙しいのか」

「休みがないわけじゃないのよ。四日にいっぺんは一日全休もらえるし。明後日は全休だし。でも、その三日がちょっとね。なんか、課題を貯めこんで年次の終わりに始末しようって学生はこんな感じかなって。デカートがぼんやりしているって軍の中ではあちこちから愚痴が出てたけど、ここしばらくの動きを見ていると軍の連中が金になんなさそうなデカートになんて興味がなくて、船で動けるセンヌとか帝国に近いダッカやドーソンに興味が向いてて西側ってせいぜいトーンとかメルヒリョルくらいまでしか興味がなかったんじゃないかと思う。別におかしいってわけじゃなくて、西部域が各師団裁量の統帥権と事前配置の軍需品倉庫整備でケリが付くなら、帝国軍に向き合うのが本筋だって考えれば、せいぜいエルベ藩王国を含めた戦線の意識があればよくて、って頭があったと思う。それなのにいま、笑っちゃうのは部隊再編にあたって士官用の懐中時計をアペルディラに大量発注する必要があるって誰かが思い出した様に気がついたのよ。バッカじゃないのって思ったけど、リザールで埋まった軍団砲兵の定数を思い出して、時計は砲兵の基本だって思い出して、ようやく去年の春先の出来事に目を向ける気になったのね。何だったのよっていいたいけど、小手先でもそれくらいできるくらいにはギゼンヌの備えはあったってことよね。そう考えると、昔の軍の人々の大方針自体はそこそこ間違いじゃなくて、問題はリザールの陣地を一気に突き崩した帝国軍の思い切りの良さと着眼点で、そのまま勢いでギゼンヌを陥落させることなく、ついうっかり共和国軍を上手く支えられちゃった不肖ゴルデベルグ中尉閣下の作戦指揮にあるんだなぁと。最近、ようやく帝国の去年の初夏攻勢の実態の全貌が見えてきて、本当になんで私が対応できたのかって客観的な物語が見えてくるんだけれど、もう一回同じことやれって言われたら、正気を疑うようなことやっているわ。ああ。もう。なに言ってるんだろう。わたし」

 机の上に突っ伏せるようにしながら、リザは滾る頭のなかから吹き零れる言葉をそのまま流すようにして言った。

 気の毒なほどにつかれているように見えるリザに言葉もない。

 なんとなくリザの頭をなでてやるくらいしか思いつかなかった。

「――ああ。もう。ほんと。一日中あなたに頭を撫でていてもらいたい。休みのたびにそう思っている」

「戦争に勝ったら結婚しよう」

「この間、マリカムで叩かれたあと」

「うん」

「頭なでてくれなかった。それどころかファラとやってたでしょ」

「聞こえてたか。割と声は抑えてたけど、その前の徴発騒ぎでも腹立ててたからな」

「戦争に勝つためよ」

「それはわかっている。だが、あそこでウチの貨物車を奪われると乳牛を潰しているのと変わらない。中央総軍兵站本部輜重監査室スバラ・カシーノ少佐とかってのはどうなった」

「ああ。暗算と将棋の得意な自称天才型の事務屋ね。病弱で前線に出してもらえないのが悔しくて、それでも戦争に貢献したい熱狂的な愛国者様よ。どうなったのかしら。用もないし知りたくもないわ」

 珍しいほどの嫌いように少しばかり驚いた。

「お前がそこまで云うのは珍しいな」

「個人的な見栄のために瑣末な書類上の不始末を評って戦況を左右する兵站を止めようって輩よ。あれであなたが荷物を運んでくれなかったら、冗談じゃなくて反攻はおこなえなくなって、アタンズは落ちていたのよ。いま輜重課が開店休業状態なのは、アタンズが弾薬庫だけじゃなくて食料庫もかなりやられていて、家畜のたぐいがほぼ全滅していたから。町長が本当に上手くギリギリまでさばいてくれていて餓死者は殆ど出なかったけど、このひとつきはアタンズの人を殺さないだけで手一杯だったわ。ヌモゥズの町長にもだいぶ無理を言った。道中無事かどうかわからないってのに船を仕立ててもらって食料を出してもらったり、頭がさがるわ」

「あの丘はこの後、陣地になるのか」

「多分なるわ。こっち側の道を少し広げないと、って話が出るくらいには。あのへんにないと川沿いにヌモゥズ側が抜かれる可能性があるって話になった。ヌモゥズ自体は策源に足りないけど、川の輸送力はバカにならないってアタンズの救援を見て思った」

「そんなことまでしていたのか」

「二日だけ。口を挟みに行っただけだけどね。戦務参謀って身軽な割に予算は使えるから横槍入れるのは得意なのよ。軍票だけどさ」

「ヌモゥズには銀行あったか」

「商業組合はいくつかあるけど専門の銀行はないわね」

「軍票は換金できないだろ」

「まぁね。町長に換金してもらったわ。額面で言えば、町の家全部建て替えるかってくらいの額だったけど、当然そこまでは現金じゃ町長も持ってないから、現物の口利きで町長が借りる形にしてもらって。お金の話は形の上では決着してるけど、戦争中につい半月前に戦闘が決着したところにまともな武装もなく船と荷車を仕立ててくれた町の人には感謝しかないわ。たとえ、それがお金目当てだったとしてもね。大隊規模の兵隊がいればそれで皆殺しになる。それでも軍の行李が足りないって聞いてやってくれたわ。今も多分やってくれてる」

 しみじみと思い出すようにリザは言った。

「――ところで、話は変わるんだけど、お屋敷で使っている電話って大変なものなの?無線電話のほうが大変そうなのは知っているわ、機械も大きいし。そうじゃなくてお屋敷で使っている電線の付いている電話のほう。なんか、ランタンみたいな気軽さで寝室の脇においてあるし、番号回すと勝手に呼び出しできるでしょ。あっちの」

「ん、ああ」

 マジンはなんと言ったものか言葉を探す。

「――まぁそれほど難しくはない。小銃とどっちが簡単だって言われると微妙な感じの機械だが、ここのところ、無線やら紡績機やらで似たような技術を使えることがわかってかなり性能も良くなってきている。自動呼び出しをしないつもりならひどく簡単だと云ってもいい。電源はまぁ、なんかしら準備する必要があるが、まぁつまりは機関車なりの機関だけあればつかえる」

「例えば、大本営で使えるようにできるかしら」

「そりゃ、手間と金の問題だけだな」

 リザは突っ伏すように腕に顔を埋めた。

「相手の都合があるのはわかるけど、こうしている間にもどれだけ文書に目を通せるかと思うと少しイライラしてきた」

「無線と違って線のつながっているところまでしか話せないぞ」

「それはわかってる。でもほら、玄関とかで誰それ某ご在室でありますかとか、確認できるわけでしょ。会議室から出席者の部屋に確認したり、会議するまでもない用件をちょっと確認したりさ。そういうのに兵隊をつかうのもさ、数が多すぎるとだるいし、時間が掛かり過ぎるのよね。それに扱っている内容が軍機に掠めるものだと面倒くさいし」

 リザは足だけ伸びをするように突っ張る。

「――戦争終わったら大本営に電灯と電話入れて。予算は私が頑張るから。あと事務で便利そうなのない?光画機とかいいわね」

「タイプライターかな。要は活版印刷とステンシルを組み合わせたような機械なんだがね」

「面白そうね。その場で活字の手紙が作れるって感じなのかしら」

「まぁだいたいそんな感じだ」

「命令書とか偶に文字の怪しいのがあるのよね。綴り字の間違いくらいならいいけど、数字が読めないのはヤバい。十日もひとつきもかけてそういうのが届くって辺りがアレだけど、そういう話をしているとあなたのところの貨物車欲しくなる理由わかるでしょ」

 リザが上目遣いで言った。

「アレは百年誇れる一品だと自負しているよ。このあとアレに手を入れるとして、無線機と車輪周りを改善して荷物の上げ下ろしに仕掛けをつけるくらいだろう。単純に大きくするって話もあるけど、この間の山道を考えると必ずしも大きくするのがいいというわけでもない。二十グレノル積みとかも考えたけどキンカイザから向こうは山や林が多いから無闇に大きくてもダメそうだな。話に聞くとデカートも南西側は川に絡んで街道が複雑みたいだ」

 そう話していると、ドアがノックされ従兵が来客を告げた。

 ミルマ曹長だった。バラホルム少佐は調達品の交渉で手が放せないので、彼が引き渡しを受けるという。

 軍都内の川沿いの倉庫で荷物の引き渡しがおこなわれた。

 マルミス師団は軍都の南東、ジューム藩王国の北東部を抑えるようにシノリスの街を拠点にしていた。

 軍都からシノリスまでは百五十リーグほどで、普段であれば伝令の騎兵中隊のほかに輜重の往来が頻繁にあるのだが、このひとつきのうちに軍都の輜重が出払うという事態が発生し、師団輜重を取り上げられるのを恐れて引き上げてしまった。

 マルミス師団も例外でなく員数外の輜重を取り上げられることを怖れ、軍都からやや離れたところに宿営地を設定して、川を下り丘陵を抜けた演習地で収容するという運びになっている。

 ともかくも長いことの待機の末に、長くなり始めた初夏の日が落ちる前に弾薬を積んだ二十枚のパレットと小銃を積んだパレット三枚をおろして、引き渡しは終わった。ともすれば日を跨ぐことになるかと恐れていたミルマ曹長の分隊は広く屋根をつけただけの船着にすのこの上に透明の膜のような帯でくくり束ねられるようにして留められた銃弾の山が、戸棚と台車を組み合わせたような機械で次々と運びだされ並べられてゆくのを少しばかり驚いた様子で見ていた。

 やがて壁のように積まれた銃弾の入った長櫃の膜をマジンが一つ払いおとし、てっぺんの四箱をマキンズの操作につまませ下におろして踏み台にした。

 夕日が落ちる前にすべてが終わり、ローゼンヘン工業の一行はリザを連れ黄昏の街をキトゥス・ホテルを目指した。

 リザは軍服の下の薄鋼のコルセットを自慢した。

 小さな刃物や拳銃弾くらいは食い止めてくれそうだったが、小銃弾は怪しく、そもそも肩から上は守ってくれないものだった。

 それでもこれぐらいには用心しているのだというリザの主張にマジンは頭をなでてやるくらいしかできなかった。

 リザは頭を撫でてやると、子供扱いをする、と拗ねるように恥ずかしがったが、嬉しそうにしていた。

 リザがキトゥス・ホテルで夜を過ごしたことはマジンにとっては嬉しい成り行きだったが、不思議に思って尋ねると今後のローゼンヘン工業の生産計画の方針は軍の勝利にとって欠かすことの出来ない情報だからきちんと聞き取る必要がある、という建前で退営報告をしているということだった。

「そういえば、アシュレイ少尉に危うく計画を破壊されるところだった」

 リザの腹筋とまだ戻りきっていない皮のたるみを探り撫でるようにしながら、マジンは思い出すように言った。

「なにがあったの」

「うちに移送中の人足たちを徴用されるところだった。面倒臭がって奴隷商を使ったこっちが用心が足りないってことなんだろうがね」

 リザはマジンの筋肉の硬さ柔らかさを確かめるようにしながらマジンの体を指で突くように撫でていた。

「ああ。ありそう。なんか勘違いとかその場の流れでやっちゃった、ッて感じなんでしょうね。私達、士官は令状なしの臨検の権限があるから、奴隷商みたいな叩けば乾いた畑みたいに埃の出てくる連中は美味しい獲物なのよね。鎧戸の落ちた格子とか見つけたら臨検して、その場で徴募して希望者がいたら兵隊に。大抵の奴隷商は色々な理由で書類を揃えるのを怠っているから、違法取引を騒ぎ立てる代わりに、協力いただいて手打ちにすると。海だともっと乱暴な方法がまかり通ってて、海原で櫓や帆柱の折れた船を助けるってことで、商船まるごと拾ったりすることもあるらしいわ。流石に野蛮すぎてドン引きだけど、部隊に百人かそこらづつぐらいはそういう成り行きで徴募された兵隊がいる」

「軍はついこの間まで寝ていたような人間をそういう徴募任務に単独任務に出すほど人が足りてないのか。腕が立つのはよくわかったが、あの気性じゃ部下か上官がいないと危ないだろう」

「ん。ああ、マリールはたぶん別だと思うけど」

「里帰りかなんかか」

「彼女の実家というか領国はギゼンヌの更に先、北東の山のなかよ。今も悪魔やら竜やら巨人やらと戦うために戦士たちが研鑽しているはず」

 そう言うとリザは慣れた様子でマジンに跨がり繋がった。

「お前のその言い方は嫌な予感しかしないな」

「悪魔と対決するためにローゼンヘン館に赴いたって説にあの大きな貨物車と引っ張ってる台車を三千両賭けるわ」

「流石にそんな賭けには乗れないな。年内にヴィンゼまで鉄道を通すってので手一杯だ。ウチになにしに来るつもりなんだ」

「婚約もなくなっちゃったし、お嫁に行くつもりじゃないの。良かったじゃない。奥さんできるわよ。あの娘、美人でしょ。あの娘の里、超男尊女卑で小さい時から女は家のことをみっちり仕込まれて、あの娘も五百からいる家人の繕い物やら刺繍やらをさせられて、厨房に蝿一匹蟻一匹入り込むと食事抜きの折檻を受けるような生活だったらしいわ。軍学校の生活が天国みたいに感じたそうよ。野営とかで狩りでネズミとか見つけて捕まえると、ちょっと手を加えて一品作ってくれたわ。私もちょっと大したものだって自信があるけど、あの娘はまた大したものよ」

 リザはマジンの腹の上に手をつき、激しく貪るように腰を揺すりながら言った。

「いきなりじゃじゃ馬ぶりを見せつけられなければ、美人の来訪の予感に素直に喜んだかもしらんがね」

「上官殴って二度も昇格機会を潰して前線送りになった一等魔導猟兵なんて彼女くらいよ。きっと」

「おまえなぁ。このクソ忙しいときにそういう問題児を紹介するのはよしにしてくれないか」

 マジンの言葉にそう返すとリザは考えこんだように腰をうごめかすのもやめた。

「――どうした」

 いきなり繋がったまま睦み事を中断したリザにマジンが腰を突き上げ尋ねる。

「うん。いや。マリールが一人旅ってのが引っかかってね。あの娘、一等連絡猟兵の資格を持っている士官だからね。普通、休暇って言っても警護がつくはずなのよ。最低一人、たいてい二人。場合によっては屋根付きの馬車がついて。それがいないってのがちょっとね」

「だが、一人だったぞ。ってか、一人で百人相手に臨検ってのはないだろう」

 そう言ってマジンが腰を突き上げるとリザはそれに身を任せるようにした。

「あなたスジの通らないことは嫌いだから、マリールとはすぐ仲良くなるわ。あの娘美人だし、気性はアレだけど物事の折り目は正しいわ」

「気性や美人かどうかはともかく、肝を冷やしたよ」

「それにしても一人ってのは気になるわ。どういうことなのかしらね」

「不正規除隊とかやったら軍から睨まれるだろう。魔導で探知されるんじゃないのか」

「どうだろう。状況がわからないからなんとも言えないけど、療養期間中なのは間違いないし、軍籍はあるけど軍務は割り当てられていないはずだから、どういう流れだったのかと、この後どうするかによるわね。居場所の探知はあの娘が魔導を使わなかったら感知できないんじゃないかな。軍も割当のない連絡参謀を追えるほど数に余裕があるわけじゃないし、見合いをした番の隻を追うのは簡単だけど見合いをしてない相手を探すのは難しいって教わった」

 見合いをした番の隻という言葉の意味はわからなかったが、話の流れから魔導連絡の話だろうと云うことはマジンにもわかった。

「なんか、お前は目立ってたらしいけどな。あと探すのが得意な人もいるんだろう」

「それは多分、あのときは私一人がやたらとやる気だったからだと思うんだ。間違いなくあの瞬間、私にはすべての神と精霊の加護が宿っていたと思う。敵味方の位置が分かる感じがしたもの。

――マリールは魔導士としちゃ本物よ。死ぬ気になれば野山を焼いたり凍らせたりできる種類の本物の魔導士の一族。だからたかだか人口十万かそこらの国ひとつかき集めても二万かそこらの兵隊を帝国は何千年も攻めあぐねたし、共和国も同盟相手として手を結び、軍は非公式に教えを請うている。魔導の本質にして奥義は呼吸のごとく魔素を蓄え魔導を及ぼすってことらしいわ。私には全然わからなかったけど、魔導ってのは鼻歌を歌うようなものなんですって。大抵の人は鼻の穴がふさがっているけど、魔導士ってのは魔素の色や香り温度を感じることができるから、その感覚で魔導士がどの辺でなにをやっているのかが何となく分かるらしいわ。知った匂いとか好みの匂いとかで街角の夕餉のおかずがなにかわかるような感じね。そういうのを信号にして、共和国軍は中隊の状況をなんとなく感知しているの。そんなのじゃ情報としては曖昧なんだけど、位置情報としてそういう色付きの状況があれば部隊の移動と緊迫感でどれくらい本気なのかは、魔導士の消耗なしに読み取れるから軍としてはそれで十分だったの。だけどね。マリールの一族デゥラォッヘの人達に言わせると、そんなのは全然魔導じゃなくて、もっと鼻息で紙を吹き飛ばしたり鼻をかんでいる紙を破るくらいの勢いを目指しているわけよ。そう云う中じゃ感情や考えを狼煙のように漏らしているようじゃ全然ダメで、ピッと留めてピッと吹き出す、みたいなことが出来ないとダメなの。ちゃんと留めないと周りのか自分のかもわからなくなっちゃうし、魔導士同士の戦闘になったらいい的だってことね。

――一等魔導猟兵ってのは最低限その自分の好きなときに好きなように、魔素を留めたり出したりできる人たちのことなのよ」

 リザの言葉は思いつくままに出てきたもので支離滅裂と紙一重のものであったが、つまりはマリールの素性の紹介のようでもあった。

「彼女が有能だろうってのはいいんだがさ。もし彼女がウチに一人で転がり込んできたらどうしたらいいんだ」

「軍から回状が来るまで預かっておいて。気に入ったら孕ませてもいいけど、怪我させたりはやめてね。一等魔導士は軍の持つ資産の中でも一等高価なものなの。とくにマリールは、使える、ってことがわかっているから復帰で喜んだ人達も多いわ」

 そう言ったリザはポロポロと涙をこぼし始めた。

「どうした」

「よくわかんない。マリールが無事だって聞いて多分嬉しいんだと思う。けど、あなたの子供とニコニコ機嫌よくしているのがなんか想像できて悲しくなった」

「いきなり想像で嫉妬して泣くなよ。エリスもいるのにさ」

「うん。でも、共和国軍としてはマリールの子供が早く欲しいのも事実なのよ。できればタダビトとの間で。魔導が血縁で才能を受け継ぐってのは、統計上有意な可能性があるの。彼女の一族は古くはタダビトが混ざっていたらしいから、生臭く交配を期待する声もあったわ。流石に気の毒だってんで、婚約者の方が盾になってくださったけど、今回の戦傷でお父上のほうが婚約者を気の毒に思って、婚約者の方はめでたく婚姻。障害っていうか義理はなくなったわ。もともと一夫多妻の土地だから、婚約がどうなっているかはよくわからないけど」

「お前、支離滅裂だぞ」

「マリールがあなたを気に入らない道理は何一つないのよ。この間の蘇生騒ぎだってそうだったし。……ああ。もう。あなたがうんと忙しくなって、のんびりしっぽりなんて雰囲気が出なくなればいいわ。せいぜい便所とか昼食の途中でせわしなく繋がるようなら、バカバカしくてしょうがないって気もするけど。……ああもう。いや」

 自分で口にして風景が具体的に想像できたのか、顔を真赤にして首にしがみつくようにしながらリザは腰を弾ませるように激しく蠢かせた。

「今度帰ってきたらお前が想像した通りのことをやってやるから楽しみにしてていいぞ」

 マジンが頭を撫でてやるとリザは嬉しそうに絶頂して、マジンの精を絞りとった。

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