デカート 共和協定千四百三十七年夏至

 さきのことは先のことというものの、途中ですれ違い再びどこかで追い抜いたはずの奴隷商の一行が二三週間の距離にいることは間違いなかった。

 狼虎庵から八人ばかりひっぱり、五人を船頭に見習いにあてがい、三人を運転助手にして新たに荷物を託した間にも、物事は次第に加速するように動いていた。

 ひとつめは百四十五名の若者たちがひとつきのうちに脱落なく工事を続け、とりあえず彼ら自身の生活の場の建設が終わり、更に来る労働者のための建設をおこなう気概を残していたことである。

 若者たちは自分たちの労働が目に見えた成果になって、自分たちの生活の糧になっていることにわかりやすい充実感を得ていた。

 若者たちに亜人種を含む解放奴隷労働者を受け入れたことを告げたとき、当然に様々な反応があったが、意外にも彼らは労働待遇に不満をこぼすことはなかった。

 機械力の徹底や計画的な土地割で作られたゲリエ村の建設は、土木工事や大工仕事には素人同然の若者たちでもそれなりに形になるような作り方をエイザーが指導していたし、実際モイヤーの率いる雇われの人足達やベーンツの折々の細やかな目配りは百人余りの若者を立ち腐らせることなく、まんべんなく労働力として使うことに成功していた。

 資材の設計や加工などの工業的な量産体制というべき手配りが事前に機能していたことの他に、組織の手数や空気が全く定まらない中で、ローゼンヘン館に転がり込んだ男たちが大人として、世間知らずの子供を指導してみせたということだった。

 若者たちはローゼンヘン館の工房から運び出される資材を眺め驚いていたが、様々に不出来もありながら自らの形になった成果に、全く別世界にたどり着いた開拓者のような、奇妙な高揚感で一杯の様子だった。

 河口と館の工房をつなぐ鉄道をみて、これをヴィンゼを経由しデカートまでと話を聞いたとき、様々疑うかと思っていたが、むしろ彼等は喜びをもって労働に参加することを決めた。

 一年でヴィンゼどころかデカートまでいけるんじゃないかという楽観的な気分まで広がっていた。

 当然に困難もないわけではなかったが、モイヤーが男女の別なく目を配り陽気な雰囲気を醸していた。

 三人いた医者だったり医者の卵だったりは大きな仕事はまだなかったが打ち身だったり捻挫だったりは既に何件か出ていてそれなりに活躍していた。彼らは電灯の灯りとほぼ無制限の湯と過酸化水素水をつかって日夜鶏の解剖と再縫合という外科的な訓練に明け暮れていた。石炭酸から生成されたサリチル酸を使った軟膏は痛み止めに効果的のようだった。

 竈が整備され毎日パンを焼き始めると肉体労働に限界を感じていた初等部卒業生たちが調理係になった。当初は手際も見てくれも悪かったが、オーダルとライアが指導にあたってそれなりに食べられるものにしていた。ひとつきもすれば百五十人ほどの若者たちには一定の関係性が生まれ、それなりの雰囲気が出てきていた。

 一旦、若者たちが落ち着いた頃、ロータル鉄工から運ばれてきた亜人を多く含む奴隷たちがやって来た。



 バクリールの商隊が六百六十三人の年齢も風貌も様々な解放奴隷たちを連れて到着した。

 マジンはデカートで元老議員としての会合に出席していたが、バクリールがデカート近傍にいることを知ると予定通りに川沿いに進むことを確認し回りこむように先回りをして出迎えた。

 共和国の現実として亜人に対する態度は個々人それぞれだったが、幸いエイザーもモイヤーも立場をわきまえるくらいに分別があったので、亜人に不慣れな若者たちを奇妙に追い立てたり煽るような真似はしないままに、適度に上手く使ってみせた。

 連れてこられた亜人の方も次はどんな煉獄で引き回されるのかと思っていたら、全く想像と違う境遇で目を丸くしていた。

 四百五人の大人と四十七人の老人と百九十八人の子供。妊婦が十二人。道中生まれた赤子が一人。大人のうちには三十三人のタダビトの奴隷もいた。

 バクリールは全く過不足なく、積荷を傷めず壊さぬように運んでみせた。

 住宅は揃って完成しているという状態ではなかったが、もともと力仕事や人に使われることに慣れた亜人奴隷たちは先住の若者たちよりも遥かに手に技術があって、仕事の進みが早かった。

 細かな感情の衝突行違いは多かったが、デカートの元老のいくつかの家では亜人を公民権保護の停止された被保護下の自由民つまりデカート州外住民として扱っていたし、デカート市内の商家でもそういう風に扱うところは多かった。

 亜人はいくつかの分野でタダビトにはない特殊な能力がある血族もいたし、亜人の多くはヒトとの交配が可能で混血の例が珍しいというほどでもない。逆にそのあたりの特徴の微妙さが感情的な行き違いを生みやすい原因でもある。

 しかしロクでなしや犯罪者はタダビトの中にも多いし、市井で出会う悪人の数はタダビトのほうが当然に多い。高利貸しのほうが亜人よりも怖い、というのは客商売ことに小売の商いをしていればよく言うことで、様々な形で公民権を持ったタダビトに苦しめられる経験は、タダビトである学志館を卒業した若者たちも身近に感じている。実際に両親や親戚が奴隷競売にかけられるという事件やその者たちの身分を買い戻すことをローゼンヘン工業就職の主たる目的としているを経ている者たちもいた。

 一方で亜人に単なる偏見といえないわだかまりがある者もいたが、社主がどういう意図で亜人を自分の土地においているか、などということはデカート州における亜人の立ち位置を考えることのできる常識を身に着けていれば想像に固くなかった。一言で言えば、使える、あるいは信用がおける便利な連中であるということだ。さらに言えば有力者のその意識がタダビトと亜人の感情の上の圧力として摩擦衝突を助長してもいた。

 だが、始まったばかりの事業構想を十日ばかりの短期的な事業構想の全体説明と、その後の詳細な短期的な目標の説明を進捗に合わせてほぼ五日に一回の座学や輪講の形で数十人ほどの規模の班が作られていった。その中に解放奴隷たちが幾割か組み込まれていった。解放奴隷の作業班への組み込みと彼らの住居を始めとするゲリエ村の開発拠点としての整備は緩やかに加速しながら継続していた。



 解放奴隷が到着した段階で住居の建設予定地はとりあえずの地ならしはすみ、火の便、水の便、厠の便、風呂の便の縄張りの粗方は進んでいた。もちろんただの開拓村の出だしとしてはかなりの上等の部類になっている。だがこのあと、とりあえずデカート市までのおよそ百リーグの道のりを鉄道整備するためには全く足りなかった。

 もともと二百人に足りない人々の力だけでは、いかに材料が最初からかなり計算されたものであったとしても、彼らの住居を過不足なく作るという程度が関の山で、これからの最低数百リーグの事業を睨んだ拠点機能はまだまだ不足していた。

 食事の世話を彼ら自身がおこなう、という状態で事業に集中するというのは難しい。分担すべき仕事はいくらでもある。

 妊婦には繕い物を中心に。座学輪講を含む事業班に組み込まれた大人たちはかなり困惑していて読み書きには苦労したようだが、学舎を出たての若者たちよりはよほど手作業力仕事には慣れていた。

 老人たちの多くは膝が萎え歩くには苦労しているものがほとんどだったが、鍛冶仕事ならできるというものたちが多く、痛み始めた道具の手入れを任せることにした。

 子供たちは仕事が思いつかなかったが、初等部と高等部卒業生から幾人かづつ教師をやってみたいものを募り、読み書き算盤くらいまでをさせることにした。どのみち十年で事業が完成したとしてその維持や発展は百年二百年の事業になる。

 更に半月ほどしたところで、好きにしろと駅馬車の切符だけ渡した解放奴隷共がぞろぞろと百人あまりやって来た。途中で生き別れていた家族や親戚を連れてきたものもいて百三十五人いた。

 三百ばかりいた中の百人がやって来たということで、多いのか少ないのかそれぞれの内心にも思うところは多いわけだが、ともかくも自由意志でそれぞれの判断でわざわざ何もない土地に労働をするためにやって来たという事実は、単純に人手として価値がある。

 そういうふうにしてゲリエ村は大雑把に千人ほどの人口になった。

 彼等の当面の仕事は、住宅と上下水道の整備建設だった。



 ゲリエ村の家にはどこの家にも鏡がある。

 朝鏡を見て自分におはよう。

 夕方鏡を見ておかえりなさい。

 お風呂に入っておやすみなさい。

 そう言えと、給料をもらうたびに訓示を受け復唱させられる。

 運ばれてきて、行くところがあるなら好きに行けと金貨を渡された初日にも、その後の給料日にも言われた。

 錫や鉄を磨いた曇り歪んだ安いやつではなく、冬の水面に張った氷のようななめらかなガラスの鏡だ。

 連れてこられた奴隷上がりの移民も学志館で就職に応募した者たちも町の日雇いも、雇い主の言いつけで毎日朝夕鏡を見ることを習慣づけられていた。

 意外なことにそれだけで、病気や怪我が減っていた。

 子供たちは鏡の前で色々な表情を作ってみせた。

 学校で流行っている遊びかと思えば、一日一回変な顔をして見せる時間があるという。

 男たち老人たちは今更自分のマズい顔を眺めても、とバカにしていたが、五日十日の休息日のたびに光画なる絵姿を撮られ、それが食堂に飾られ幾人かの姿勢やら表情やらが若くなれば、少しばかり鏡の効果に頼るためにまじめに鏡の顔を拝み、顔を洗ってみたり身形を整えたりし始めた。

 一日まじめに働けば汚れもする疲れもするのを笑って眺め、風呂に入って鏡を眺め、朝起きて鏡を眺めとしているうちに自分たちの姿というものが感じられるようになってきた。

 糞まみれの狭い囲いから植木を移すように連れてこられたこの土地で、やはり一日中泥にまみれて土を盛り杭を打ち石を撒き土を均す。

 話に聞けばこの作業を八百リーグもさせられるらしい。そんなに歩けるものかよという距離だ。だが不思議と奴隷として生きていたこれまでよりもだいぶマシな自分であるようなそんな錯覚に感じている大人たちは多かった。

 クソにまみれていない食い物を食って、クソにまみれていない服を着られれば、そりゃ多少は元気もでる。そう云う理屈が出るくらいに、やる気が出てきた野郎どもも多い。

 今なら鉄砲玉の百万二百万作ってやるぜ、と息巻く連中もいたが、お屋敷の工房を見て開いた口がふさがらないまま戻ってきた連中が笑っていいんだか怒っていいんだかという表情になった。

 ともかく、ここは別天地で金を出す。飯を出す。家と風呂もつける。働け。となれば、働くしかなかった。ここにも威張り屋はいて殴られたり怒鳴られたりはあったが、鞭や棒はなかった。

 足の萎えた年寄りたちに膝と腰と胸で支えるような椅子に車輪をつけたものを与え、とりあえず工房内を動けるようにしてやると、彼らは初等部卒業生にとっては割と良い師匠になった。目に余る乱暴な者からは徒弟を取り上げるとしばらくおとなしくなった。

 老人たちの知識や技能そのものは工房の生産力の向上には小さな影響しかなかったが、彼らが自由に動くためには動線の整理が必要で動線の整理が行われると物資の搬送が楽になるという、そういう理由で老人たちの存在は工房の配置の最適化に役立っていた。

 老人たちにとっては機械工具は全く見たことのないものであったが、帝国の巨獣を動力に使った工作の話は漏れ聞いて羨ましく脳裏に描いていて、回転鍛造での弾丸整形や平面研削盤や高圧プレスが小銃の主要部品を吐き出すように作り出してゆくのに子供のように目を輝かせていた。

 彼らが苦労していた薬莢が厚手の硬貨のような真鍮の円盤を機械で押しつぶし形の大枠を作り穴を通して空気を吹き込み引き出しと、あくびをする間に完成させていると知ったときには大笑いをするものが出る有様だった。

 ともかく弾薬づくりからは御役御免だということを見せてやると職人たちはそれぞれに複雑な顔をしたが、意外とサバサバした様子で今はまだ人手による仕上げの必要な銃身の加工や部品の検査や組み付けという新たな作業に移っていった。

 労働から解放された老人たちは当然に退屈を持て余し、奇妙な世界となっているこの集落の意味について様々に質問をしていった。

 マジンも当初は老人たちを侮っていたが、見かけほどに耄碌しているわけでないことがわかると、彼らは工作機械の整備組立や部品管理の良い労働力になった。

 それどころか、彼らの中には機械旋盤を使いこなしてみせだし、部品製造からウェッソンとリチャーズの手を離してよくなった。

 日産百で頭打ちだった小銃生産が二百に達した。

 実際、リチャーズが生まれる前からロータル鉄工の工場で働いているような者が生きてあれば、全く使えないということは奴隷の身分ではなかなか許されることではない。

 もちろんそんな長期労働は奴隷であっても共和国協定で許されない違法である。

 だが亜人奴隷というものの立場はそういうものでもある。

 各旬の五日十日には休みがあることに彼らは少し驚いていたが、休みと言っても一日では遠くに出るわけでもなく、食事の支度をしないわけにはゆかず、主の命令で朝晩に鏡を覗き自分の顔を眺め、風呂にはいる。

 連れてこられた亜人奴隷たちはそう云う生活になじみはじめていた。



 マジンはそういう変化の中でウェッソンとリチャーズに手伝わせて完成間近のマエストラーレを手放したくない衝動に駆られたが、そうもいかなかった。

 ふたつ目の状況の変化は、デカートの元老院で今回の義勇兵に関する動議と軍備の調達に関する動議が発起し軍備の整備に関する動議が通過したことだった。

 義勇兵の徴募に関しては三ヶ月の訓練準備を経て出立をおこなうということになった。

 域外局戦争課から千人と検事局六課から三百名が参加し、八千人の義勇兵を指揮する。

 騎兵八百銃兵八千五百に輜重千二百両を加える、大部隊を送ることが決定した。

 指揮官はアレサンダル・バルケイル域外執務官。軍監にマイルズ・エカイン元老議員の軍令の元、一万二千人の出征が準備されることになった。

 動議の結果としてマジンは一万二千丁の機関小銃と三千万発の銃弾を準備する事になった。

 これは全く少ない量ではないが、様々な議員の説得の過程でスティンク議員の主導で試射をおこなうことになり、一日接待をするといつの間にか一丁当り千発を撃っていることから、スティンク議員が最低数として希望した。

 銃弾の生産量はローゼンヘン館の工房の実力を鑑み超過していたために、分割して納入することになったが、ともかく採択決議された。

 デカートは戦争に無知であることを自覚した上で手抜きをしないだけの覚悟を決めていた。

 マジンは義勇兵参戦の動議提出者として一千万タレルと議員戦争税として二百万タレルと合計千二百万タレルを請求された。

 金額そのものは五十七人の元老院議員にとっては大した衝撃ではなかったが、三十九人の議員が結局賛成に回ったことは賛成反対両派に取って、意外な出来事でもあった。

 ソイルのポルカム議員が義勇兵動員動議提出に参加したことを、裏切りであるとさえ叫んだ議員もいた。

 裏切りかどうかは微妙なところだったが、マジンはポルカム議員のためにひとつきでグレカーレの姉妹船マエストラーレを建てることになった。

 ポルカム議員はソイルの流れを挟んだ対岸側での開拓を始めていて、頻繁な船の移動を必要としていた。代わりに手狭になった港にほど近い川沿いの土地を倉庫付きでマジンに売ってくれた。そういうことだった。

 更に鉄道建設中の食料調達のためにポルカム議員に五グレノル積みの曳船を渡して、食料を定期的に納品してもらうように頼んだ。

 ポルカム議員は畜産を手堅く進めていて、ここに来て豚千五百頭とジャガイモでソイルの対岸を一気に切り開くつもりでいた。

 だが、豊かなザブバルの流れは橋を架けるに早く深く手軽に大きく渡るという訳にはいかないというのが、ポルカム議員の長年の懸案だった。

 デカートで見かけたグレカーレをどういう流れかセレール商会が手に入れたと知ったときに歯噛みをしていたという。

 ソイルの町長テンソがマジンが土地を探しているという話をした流れで戦争動議に賛成なぞしてたまるかと言ったときに、ポルカムの脳裏に動力船を手に入れる絶好の筋書きが浮かんだ。

 戦争動議の提出には一千万タレルという拠出金がかかることは軍費の底を支える意味と無意味な出兵を防ぐ意味とがある。

 だが、相応に事業を営む元老議員であっても安い金額ではない。

 それに動議の拠出金をかけても動議が通らなければ拠出金は国庫の予備費に消える。

 二重の意味で勝ち目がなければ戦争動議の提出は難しい。

 ポルカムはスティンクが探しあぐねていた戦争動議提出の六人目の連名者に署名をした。

 ポルカム卿は動力船を一隻譲り受け、ゲリエ卿に土地を売る。

 そう約束を交わした。

 港にほど近い良い土地だったが、周りも囲まれ飛び地となりポルカムにとっては鶏肋という風情で、半ば遊ばせるように他人に貸していた土地だった。

 その後フラムのミツバリー議員とヴァルタのオキシマル議員が相次いで署名をした。

 二人共土地となにやらを交換していたようだった。

 さらにアルアシバリー議員とトトリーゼ議員が署名に同意をした。

 ポルカムにとっては悪く無いタイミングだったと言える。

 その後、スティンク議員の結盟会の席で見せられた機関小銃は、ポルカムにとっては戦争の勝利を告げるラッパのように感じられた。

 マジンは土地の売買のほかにオキシマル議員には旅客車をミツバリー議員には発電機と電灯一万個と有線電話、それと濡れても使える新型爆薬と雷管の提供を約束していた。

 どちらが速いか遅いかは馬が速度の上限である共和国では難しいところだったが、ともかく八人を超えて十人の連名を得て、義勇兵動員と域外派遣活動の動議、通称戦争動議が提出され可決された。

 三つ目は元老議員として活動しているマジンの土地の買取が進んだことがある。

 元老院議員就任によってマジンは土地の買い入れに対して大きな自由度を手に入れた。デカート域内も水の便の悪い峻険地は多く、そういう土地をマジンは帯状に手に入れる権限を得た。

 実際の取得は立ち入りと測量を実績とする必要があったので、今日明日というわけにはゆかなかったが、ともかく事実上の自由を手に入れた。

 それによってヴィンゼ港にしようと考えていたザブバル川屈曲部から、ヴィンゼ東部を経由してデカートの北部の街道を跨ぐ丘陵地帯までを一気に取得した。

 幾人かの議員との交渉を経てマジンはデカートの天蓋に踏み込まない形でゆるやかにデカートの主要部をめぐる鉄道建設の用地を獲得する権限を得たといえる。

 夏至の頃までには線路と呼ばれる鉄の梯子は港口から村の端を超えていた。この後、線路は一日千キュビットづつ伸び、デカートの北に達し、やがてデカートの外苑をめぐり更には軍都に達するという。

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